香港で12日に開会した立法会(議会)で「異常事態」が発生した。4日の改選後、初の立法会であり、同日には議員による宣誓式が行われた。その宣誓式で、「香港は支那の一部でない」などと発言し、垂れ幕を掲げる新任議員が出た。

宣誓などで「問題あり」とされた議員は3人。宣誓式では、香港のあり方を定めた香港基本法を指示することや、中国と香港に忠誠を尽くすことが盛り込まれた定型文を読み上げることになっている。

しかし、「本土派(香港にとって香港こそが『本土』であり、香港は中国の一部ではないとの主張)」の政党に所属する梁頌恒、游●禎(●は草かんむりに「恵」)の両議員は、英語で読み上げた宣誓文に、定型文にはない「香港民族の利益を誠実に守る」などの文言を挿入した。

さらに、英語の「China」の部分を、広東語の「支那」の発音にした。さらに、宣誓中に「香港は中国でない」とする垂れ幕を示した。結果として、「問題あり」とされた3議員は、「宣誓を終えたとは認められない」ということになった。このまま、議員としての活動が認められない可能性も高い。

中国の猛反発は、想定内だった。中国中央政府の香港での出先機関である香港特別行政区聯絡弁公室は、「宣誓中に国家と民族を侮辱する言葉を使い、国家の尊厳に挑戦し、香港同胞を含む全国人民と海外華人の感情を著しく傷つけた」として、強烈に非難した。

興味深いのは、中国大陸側の報道が、香港においても、「宣誓式」での本土派議員の言動に、香港で強烈な批判が起きたと強調していることだ。

新華社は15日、同事態を紹介する記事を発表したが、大陸側関係者による「われわれは、新任議員の卑劣な言動が、(香港)社会の義憤を強く引き起こしたことに注目している」などと紹介した。その他の記事も、「本土派議員の言動に、香港の広範な人々が強く反発している」との論調に終始している。

実際には、香港で中国大陸の対香港政策に反発する人は増えている。例えば、10月1日の国慶節(中国の建国記念日)では、香港の10カ所以上の大学で、構内に「香港独立」と書かれた大きな垂れ幕が掲示された。香港で、中国大陸の圧力増大に懸念や不信を感じ、「はっきりとした分離」を願う人が増えていることは、間違いない。

ならば、大陸メディアはなぜ、香港における大陸当局への反発を「一部の人」と主張しつづけるのか。考えてみれば、大陸外にいる人にとっては、大陸メディアの報道が、「事実を歪曲している」あるいは「一部を誇張している」と、容易に気づくはずだ。

考えられるのは、ただ1つだ。中国当局が同問題について最も懸念しているのは、国内世論だ。中国共産党は、自らの政権を正統とする最大の論拠を「清朝末期以来、反植民地状態だった状況に終止符を打ち、独立自主の中国を成り立たせた」ことに置いている。1997年の香港返還を実現させたことは、「英国の植民地だった香港を取り戻した」という共産党にとって極めて大きな「イベント」だった。

だから今さら、香港で中国離れが本格化しているとは言えない。だから、本土派の存在は認めざるを得ないとしても「ごく一部の、特殊な主張」と言わざるをえない。

香港の今後については、予断が許されない部分が極めて大きい。ただ、中国における対外問題に関連する主張や報道全般について、当局やメディアの「現状認識の本音」とは別に、「国内向けに、どう論じるか」との側面が極めて強いということに、つねに注意しておく必要がある。

■筆者プロフィール:如月隼人
日本では数学とその他の科学分野を勉強したが、何を考えたか北京に留学して民族音楽理論を専攻。日本に戻ってからは食べるために編集記者を稼業とするようになり、ついのめりこむ。「中国の空気」を読者の皆様に感じていただきたいとの想いで、「爆発」、「それっ」などのシリーズ記事を執筆。