[ワシントン/東京 9日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は8日、米ワシントンで講演と質疑を行い、必要な場合は追加緩和をちゅうちょしないと述べる一方、現時点で一段の利下げが必要とは考えていない、と語った。

また、金融政策の軸足を「量」から「金利」に転換した新たな枠組みのもとでは、イールドカーブ・コントロール(YCC)が達成されている限り、将来的に国債買い入れ額が「かなり」減少する可能性があるとの見解を示した。

総裁は講演で、長短金利の操作を金融市場調節方針とした「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」と消費者物価上昇率の実績値が安定的に物価2%目標を超えるまでマネタリーベースを拡大する「オーバーシュート型コミットメント」で構成する新たな枠組みについて説明した。

新たな枠組みのもとでの今後の金融政策運営について総裁は、日本経済がネガティブなショックに直面すれば追加緩和が必要となるとし、物価2%目標の実現に必要な場合は追加の利下げや資産買い入れの拡大にちゅうちょしない、と述べた。

ただ、現時点では「一段の(金利)引き下げが必要とは考えていない」との見解を示した。

YCCについては、多額の国債買い入れによって長期金利操作ができているとし、「新たな枠組みへのシフトによって、日銀のバランスシートの拡大がこれまでと大きく異なるものとなってしまうことはない」と説明。当面は国債保有額を年間80兆円増加させるペースで買い入れる考えに変化はない、との見解を示した。

一方でYCCが達成されている限り、将来的に買い入れ額を「かなり」減らすかもしれない、と指摘。長期金利(10年債利回り)がターゲットを下回れば買い入れペースを縮小する可能性があるとし、「資産買い入れ額が減少しても増加しても、イールドカーブ・コントロールを適切に維持していれば問題はない」と語った。

また、新たなコミットメントのもとでは、実際の物価上昇率がゆっくりと高まっていく「通常のケース」において「条件を満たすまで、マネタリーベースの拡大と低いイールドカーブが続く」と指摘。急激な物価上昇が起こるケースでも「長短金利の操作で対応可能」と語った。

総裁は、円が質への逃避の通貨とみられていることは問題かとの質問に対し、「深刻な問題ではないが、過度の(円)上昇や市場の混乱につながることから時には問題となる」との認識を示した。

(木原麗花、伊藤純夫、翻訳:村山圭一郎)