Jan Harvey

[ロンドン 5日 ロイター] - 日産自動車<7201.T>の「リーフ」など、電気自動車(EV)の見た目は普通乗用車と変わらないかもしれない。だが、その内部に採用されている新素材は、自動車産業で使われる金属材料の市場を一変させ、コモディティ投資家にとって新たな戦場を生み出す可能性がある。

「需要の転換点を迎えている分野として電気自動車を捉えている」と語るのは、ベアリング・グローバル・リソーシズ・ファンドでポートフォリオマネジャーを務めるダンカン・グッドウィン氏。

同ファンドの運用資産3億7820万ドル(約390億円)のうち、約12%がEVで使われている素材に投資されている。同ファンドは、EV用バッテリーの主要素材であるリチウムを製造しているニューヨーク上場のアルベマール<ALB.N>とオーストラリアのオロコブル<ORE.AX>に投資。両社の株価は今年に入り急騰している。

二酸化炭素排出量の削減目標を達成するためにEVの成長を熱心に推進している各国政府は、補助金や無料駐車場、減税などの優遇措置で普及を図ろうとしている。EV市場の成長は、現在2350億ドル規模と推定されるコモディティ投資のチャンスを生み出す。

だが、それは単に一方的な賭けとはならない。

長期的なEV需要に対応するために、どの金属素材がどの程度必要になるかを予測することは難しく、バッテリー技術の進歩によって素材の構成が変わってしまう可能性もある。

ドライバーにEVを選択させることも、依然容易ではない。充電にかかる時間とその頻度のせいで、購入を考える人も躊躇(ちゅうちょ)してしまうのだ。

それでも、ディーゼル車が生み出す汚染に対する懸念から、先週パリで開催されたモーターショーを席巻したのはEVの試作モデルだった。

国際エネルギー機関によれば、世界で実際に走っているEVとハイブリッド車の台数は昨年100万台を超えた。

さまざまな予測があるが、2010年にわずか1万4000台強だったEVは、2020年までに390万台に達し、世界の小型自動車の4%近くを占めるとIHSオートモーティブは予想する。

ではEVのボンネットの下には、何が使われているのだろうか。

大半のEV用バッテリーは、リチウム・ニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)を正極に、グラファイト(黒鉛)を負極に使っている。主として中国で採掘されるジスプロシウム、ネオジム、テルビウムといった「レアメタル」が使われているのは、モーターの一部の電子部品である。

ドイツの自動車コンセプト研究所のホルスト・フリードリッヒ所長は、「現在の観点からは、EVでリチウムイオン電池が使われることは明らかだ」と語る。「リチウム、そしてコバルト、リン酸鉄、レアアースの金属などだ」

<リチウム・トライアングル>

世界のリチウムの大半は、南米のチリ、アルゼンチン、ボリビアにある「リチウム・トライアングル(三角地帯)」と呼ばれる地域で産出される。リチウム採掘はますます収益性の高いビジネスとなっている。

世界最大のリチウムイオンバッテリー生産国である中国では、バッテリー向けリチウム価格が今夏、需要の伸びに伴い、1年前に比べ3倍近く上昇し1トンあたり2万ドル以上となった。

「リチウム産業は、炭酸リチウム換算で現在の16万トンから、2020年には少なくとも26万トンまで拡大するだろう」とベンチマーク・ミネラル・インテリジェンスでマネージングディレクターを務めるサイモン・ムーアズ氏は語る。

アルベマールは、予想される需要成長の半分を供給するため、バッテリー向けリチウム塩の増産に向けた投資を行っている、と同社リチウム事業子会社のジョン・ミッチェル社長は語った。

南米では、チリのSQM<SQM.N>は今月、水酸化リチウムの生産能力を7500トン増強するために3000万ドルの投資を進めていると発表した。

自動車市場におけるEVの浸透は、リチウム需要に大きな影響を与えるだろう」と同社は述べている。

<投資家は注意を>

リチウムがいずれ不足するという予測に対する反論として、地殻の成分にはリチウムが豊富に含まれているという指摘がある。また、バッテリー向けの高品質リチウムを生産しない可能性のある小規模な企業に慌てて投資しないよう注意を呼びかける向きもある。

「投資家は大いに気をつけるべきだ。動きの激しい市場で、相当ひどい無知も見られる」とフィンテックのアナリスト、マーティン・ポッツ氏は指摘し、投資家にとっては、グラファイトの方が面白いかもしれないと述べた。

負極に使われるグラファイト部門を支配しているのは中国である。ベンチマーク・ミネラル・インテリジェンスでは、負極向けグラファイトに対する需要は、2020年までに15万─17万トン増加すると予想している。これは11億2500万─12億7500万ドルに相当する。

カナダのイーグル・グラファイト<EGA.V>は、EVが同社の事業に与える影響はまだ感じられないが、世界全体のEV生産台数が年間100万台に達すれば、グラファイト供給のけん引力は高まると予想する。

「より先を見越したメーカーは、長期的な供給に対して正しい懸念を抱きはじめている」と同社のジェイミー・ディートCEOは語る。「十分な量のグラファイトが生産されるかという疑問だけでなく、天然グラファイトの負極については、中国が現在その100%を握っているという事実も新たな懸念を生んでいる」

「バッテリー業界は調達元を多角化しなければならない」

一方、コバルト価格は今年に入って16%上昇しており、2020年までにさらに45%上がると予想されている。米国防兵站局がコバルトの備蓄に着手したことが、この鉱物の重要性を浮き彫りにした。

コバルト生産最大手の1つ、シェリット・インターナショナル<S.TO>は、マダガスカルに保有するアンバトビー鉱山において、ニッケルの増産に合わせてコバルトも増産することを明らかにした。

コバルトはもっぱらニッケルや銅など他の金属の副産物として採掘されるため、生産者としても、需要の伸びに応じて増産することが難しいと同社は言う。供給弾力性に欠けているため、価格が上昇する可能性がある。

<良いドライブ>

長期的なEV需要に対応するためにどの金属がどれだけ必要になるかを予測することは困難であり、バッテリー技術の進歩により、必要とされる量が変わってくる可能性がある。

ニッケル、コバルト、マンガンなどの金属は、英オクシス・エナジーが開発するリチウム硫黄バッテリーなどでは不要になるかもしれない。

さらに、グリーン自動車テクノロジーも控えている。特に注目されるのは、バッテリーのライバル候補として話題になっている水素燃料電池だ。だが、実用化レベルまで新技術を育て上げるには時間がかかる。

日産ロンドンウェスト支店のショールームの周囲で、静かな最高ランクの「リーフ」を誘導しながら、営業マンのKeith Almansuryさんは、EVセグメントの成長を推進する鍵は「教育」だと話す。

「人々が電気自動車を気に入らないとすれば、それは皆が電気自動車をよく知らないからだ」と彼は述べ、環境への優しさ、燃料費や修理コストの節約、駐車無料制度なといったEVのメリットを数え上げる。「だが何よりも、良いドライブができることだ」

(翻訳:エァクレーレン)