[ワシントン/ニューヨーク 10日 ロイター] - ドナルド・トランプ氏は、女性について自身がわいせつな発言をしているビデオテープが公開されたことについて、「ロッカールームでの話」と一蹴したが、エスター・ロッサーさん(71)のむかつきを和らげるためには、ほとんど役に立たなかった。

「彼(トランプ氏)は謝罪したし、謝ることしかできないのは分かっているが、もっと何か言うことがあっただろう」と、バージニア州在住で孫のいるロッサーさんは話す。

ロッサーさんは生涯、共和党に票を投じてきたが、米大統領選の共和党候補トランプ氏のライバルである民主党のヒラリー・クリントン候補を支持することをこの週末に決めたという。

「彼は私たち女性を見下した」

ロッサーさんが抱く懸念は、ロイターがインタビューした20人以上の女性有権者が示した感情の多くに同調するものだ。こうした女性たちは9月時点で、11月8日の投票日にどちらの候補に票を入れるか決めていなかった。

米大統領選候補による討論会の翌日10日に電話で実施したこの非公式調査では、多くの女性がトランプ氏のわいせつ発言に愕然(がくぜん)としたと語った。2005年に撮影されたビデオのなかでトランプ氏は、同意なく女性にキスしたり触れたりできると自慢していた。同ビデオは7日、ワシントン・ポスト紙がウェブサイトで公開した。

ロイターが取材した女性有権者の何人かはまた、自身の行いを擁護するため、もしくは注意をそらすために、クリントン氏の夫であるビル・クリントン元大統領の不貞行為を強調するトランプ氏の戦略が嫌だと答えた。

「夫がしたことについてヒラリーを攻撃していたのは好感が持てなかった」と、ミズーリ州在住のコニー・サッソさん(66)は語る。「間違っている。とにかく間違っている」

<打ちのめされた>

ミズーリ州セントルイスで9日行われた2回目の討論会で、トランプ氏は自身の発言について恥ずかしいと思うが、「ロッカールームでの話」だと一蹴。また、クリントン元大統領から性的行為を受けたとする女性たちを攻撃しているとして、ヒラリー氏を非難した。

クリントン元大統領の不貞行為に対するトランプ氏の批判は、ペンシルベニア州で10日開いた集会に集まった同氏の支持者からは拍手喝采を受けた。だが、主な支持者が圧倒的に男性である同氏は、女性票獲得に苦戦している。2012年の大統領選では、女性は有権者全体の53%を占めていた。

もしトランプ氏が男女格差を縮めることができなければ、各世論調査におけるクリントン氏のリードを覆すことは不可能だろう。

「あのような考え方をする人が大統領になるために一票を入れるなんて良心が許さない」と語るのは、フロリダ州レイクランド出身の看護学生であるリーアン・チェースさん(27)だ。

チェースさんは女性として、トランプ氏の発言に「打ちのめされた」とし、他の人たちが同氏の発言を正当化しようとしていることに嫌気がさしたという。共和党員として登録しているチェースさんだが、現在はクリントン氏を支持していると語った。

アーカンソー州ノース・リトルロック在住のパツィー・ベネワイズさん(58)は、ビル・クリントン氏が10年近く同州知事を務めていた間、同氏に票を入れたことは一度もなかった。だが11月8日の大統領選投票日には、ヒラリー氏に入れるという。

ベネワイズさんはトランプ氏について、「大統領選をままごとにしてしまった」と話した。

<中立派も>

一方、ロイターが取材した、まだどちらの候補に投票するか決めていない女性有権者の全員が、トランプ氏に反感を抱いていたわけではない。

ミズーリ州カンザスシティーでチューターをしているエイミー・フリゼルカさん(37)は、トランプ氏の発言は「ひどい」が、同氏の私生活が大統領としての統治の仕方に影響するとは思わないと語る。クリントン氏は欺瞞(ぎまん)に満ちているので、トランプ氏の方に傾いているという。

「どちらの候補にも投票したくない」とフリゼルカさんは話す。

ミシガン州スターリングハイツに住むジェーン・シモンズさん(78)も、クリントン氏、トランプ氏のどちらにも投票しない方がいいと話す。トランプ氏のわいせつ発言が明らかとなる数時間前に、シモンズさんは郵送票を受け取った。同氏の発言を受け、クリントン氏を支持することを考えているという。

「10年前のことではあるが、このことはこの男がどんな人間かを表している。とても変わったとは思えない」とシモンズさん。「良心があるとは思えない」

冒頭に登場したバージニア州在住のロッサーさんがクリントン氏に投票することを決断したのは、14歳の孫娘からトランプ氏がなぜあのようなことを言ったのかと聞かれたときだった。

「子どもにとって良い手本ではない」と、ロッサーさんは語った。

(Ginger Gibson記者、Grant Smith記者 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)