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「新入社員の反応が薄く、何を考えているのか分からない」「上司に有給申請をしたら理由を聞かれた。非常識では?」「知り合いだから安くして、という発注者にうんざり」などなど…こうした仕事上でのコミュニケーションに関する話題は尽きることがありません。

しかし、こうした気持ちの行き違いは誤ったコミュニケーションや、コミュニケーションへの苦手意識から生まれているのではないでしょうか? コミュニケーション研究家である藤田尚弓さんは、特にビジネスシーンにおいて「自分が欲しい情報を得るために、コミュニケーションを設計する」という意味での「コミュニケーションデザイン」を提唱しています。

結果を得るためのデザインコミュニケーションとは

「コミュニケーションの重要性は分かっていても、その定義をはき違えている人が多いのではと感じます。特にビジネスの場におけるコミュニケーションとは、相手に何かを伝えることでも、楽しくおしゃべりすることでもありません。『自分が期待する反応が相手から帰ってくる』ところまでがコミュニケーションです。

例えば、後輩社員に態度を改めてもらう、あるいはコンペティションで勝つなど、『欲しい結果を得るためのプローチを考え実行していくこと』が、コミュニケーションデザインだと考えます」

そこで結果にアプローチするコミュニケーションの基本的なコツ、そして苦手意識を持っている「コミュ障」な人へのコミュニケーション術を聞きました!

ビジネスコミュニケーションの基本的な3つのノウハウ
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基本1:大前提は「結論が先」

ビジネスシーンでは「結論が先」が大前提。背景や詳細はひとまず置いておき、まず結論を話したあとに、詳細を説明するという順番がベストです。いわゆる「仕事ができない」と言われる人は、時系列で話しがち。すると非常に話が分かりにくくなってしまい、相手の時間を奪うことになるため、ビジネスシーンではNGです。

ただし、悪い話を伝えるときは例外。 極端な話ですが「来月にクビ」という話を伝えるとき、最初に「君はクビだ」という結論を伝えてしまうと、冷静に話を聞いてもらえない可能性があります。結論に至った背景や詳細をきちんと説明していくと相手も心の準備ができ、話を受け入れてくれるでしょう。

基本2:「事実」と「感想」「推測」はまぜるなキケン!

話すときに「事実」「感想」「推測」の要素をゴチャゴチャにしてしまうと、話の方向があちこちに飛んでしまうため、聞いている側も混乱してきます。
そのため「話が分かりにくい」と思われるだけではなく、「仕事ができない人」「才能がない人」という印象になり、評価が下がってしまう恐れも。

例えば何かを報告するときには「何を報告するのか(事実)」「報告についての意見(感想)」「今後予想されること(推測)」を分けて伝えると、報告された側も話のポイントが押さえやすくなります。

基本3:快い気分で相手に動いてもらう

ビジネスの場では職務上の責任があり、それに伴い結果を出さなくてはいけません。そこでのコミュニケーションは「相手の不快感を減らし、目標を達成する」という形がベスト。相手への指示や依頼をする際にも、気持ちよく動いてもらう方法を考えるひと手間が大切です。

そこで、いくつか具体的な例を教えていただきました。

・企画などを修正してほしいとき

×否定のみ
「これじゃダメだよ。直して」

○相手の提案を受け入れ、改善点を明確に伝える
「企画ありがとうございました。二点だけ修正をお願いしたいのですが」

・説明の時間が長い人に改善してもらいたい場合

×否定から入り、改善を要望
「○○さんはお客さんに対する説明が長いよね。もっと手短にして」

○理由を伝えたうえで、改善を要望
「来期から業務の効率化をはかることになったので、お客様への 説明時間を短縮してみてもらえるかな」

・会議で的外れなアイディアを出されたとき

×否定のみ
「え?全く論点が違います」

○一度相手の意見を受け入れ、話題を変える
「斬新ですね。ところで・・・」

こうした手法は、管理職やリーダーシップが要される立場の人はもちろん、フォロワーシップが要される立場の人も同様です。
仕事を円滑にすすめるため、そして仕事上で達成すべき「結果」を得るために一度意識して取り入れてみてはいかがでしょうか。

「誰もがコミュ障」だから、苦手意識を克服する必要なし

また雑談や会議、プレゼンなど、言葉でのやりとりが苦手ないわゆる「コミュ障」。相手にきちんと伝えなきゃ!と思っているのに、とっさに言葉がうまくでてこない、考えていることを上手に伝えられない…と悩む方も多いかもしれません。
ですが「コミュ障」とは、口数が少なくおしゃべりが苦手なタイプだけではなく、喋りすぎてしまうタイプも含まれていると藤田さんは言います。

「私の意見としては『コミュ障の人はいない。むしろ、誰もがコミュ障』なので、コミュニケーションに苦手意識を持っていても心配いりません。特に自分がコミュ障だと感じる人は、無理にうまく話そうとしなくてOK。
それよりも、相手へ与える印象をコントロールする『印象管理」と、立ち振る舞いや普段の態度などの『非言語コミュニケーション』にエネルギーを注ぎましょう」

信頼を得るカギは「目線」にあり
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例えば「私はうまく話せないし、口下手」とネガティブに捉えている人は、同時に「奥ゆかしくて、誠実」という“良い印象”も含んでいることを、まずは自覚してみましょう。

また、いつもおどおどした態度で、相手と目を合わせないのはNG。話す時には常に相手と目線を合わせる、上手に話せなくても良いのでコツコツと誠実に仕事をこなす姿を見せる。これが相手へ良い印象を与えるための「非言語コミュニケーション」です。
会話や議論が苦手でも、こうした普段の行動を見直すことであなたの印象も「話が苦手な人」から「真面目で誠実な人」へと変わってくるはず。

一方で「喋りすぎてしまうタイプ」は、押し付けがましくなく、快活に見えるような非言語コミュニケーションが重要とのこと。例えばいつも笑顔でいる、相手の話を聞く時間を意識して増やす、という点に注意するだけでも、周囲とのバランスがとれてくるのです。

コミュニケーションは質より量!何気ない挨拶が実は大切

また、相手に対して「もしかしてコミュニケーションが苦手なのかな」と思った場合でも、まずは声をかけて見守ってあげることが重要です。

「期待した返事がこなくても、気にする必要はありません。実は、職場におけるコミュニケーションで重要なのは質や長さではなく回数なのです! ビジネスシーンでは互いに協力し合うことが欠かせませんが、職場でのコミュニケーションの回数が多いほど、互いに助け合える環境が作れているという統計があります。

ですから『できるかぎり質のよいコミュニケーションを取ろう』『長い時間をかけて話し合える場を設けよう』という必要は無く、社員同士がコミュニケーションを取る回数を増やせば良いのです。ですから毎日の何気ない挨拶が、実はとても大切なんですよ」

どうしてもうまくいかない相手には、セルフコミュニケーションを

ときには「どんなに自分が努力しても、うまくコミュニケーションができない相手」もいるはず。そんなときは「深く悩みすぎない」という選択肢もあります。
藤田さんは「どうしても相性が悪く、コミュニケーションが難しい相手の場合は、コミュニケーションに体力を割くよりも、自身のストレスコーピング(ストレス対処法)を重視しましょう」とアドバイス。

「例えば、セルフコミュニケーションという手法がオススメです。誰かを怒らせてしまったら『私って本当にダメだ』と思うのではなく、『今日は相手の機嫌が悪いのかな』と自分自身を責めないように考えたほうが、気持ちの切り替えも早くできますよ」

最後に、コミュニケーションの重要性は誰もが理解しているにも関わらず、ビジネスの場では意外と軽視されがちだと藤田さんは言います。

重要なのは、欲しい結果を得るための「コミュニケーションデザイン」を意識し、相手への印象に気を配りつつ、たとえうまくいかなくても良いのでコミュニケーションを積極的に取ること。まるでコツコツと経験値を貯めていくゲームのようでもありますね。
なによりも、「コミュニケーションへの苦手意識は克服しなくていいんだ」と考えるだけで、気持ちが楽になってくるのではないでしょうか?

<識者プロフィール>

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藤田尚弓

コミュニケーションデザインを研究する、株式会社 アップウェブ代表取締役。アクセス解析データを元にした、WEB媒体でのコミュニケーションデザイン を研究する他、テレビ出演・監修、雑誌などへのコンテンツ提供、コラム執筆などを行っている。


<WRITING>伊藤七ゑ