東松山市の河川敷で、井上翼さん(16)=吉見町=の遺体が見つかった事件から23日で1カ月。傷害致死の疑いで家裁送致された中学生3人を含む14〜17歳の少年5人は、井上さんを集団で暴行したとみられている。大人との関係が希薄化する中で、非行に走る少年たち。家庭、学校、地域、社会はどう向き合えばよいのか。専門家は事件の特徴として、社会での居場所を喪失した少年の行動特性を挙げる。問題行動を起こす少年たちを周囲の大人たちが理解し、支援していく必要性を指摘している。 ■不安定な少年期
 元家庭裁判所調査官で埼玉県立大学の市村彰英教授(非行臨床)は事件の背景を「仕事や学校、家にも居場所がない彼らは非常に不安定で、いらいらをぶつける場所もなかった。集団の中で暴力の歯止めが効かなくなってしまったのでは」と分析する。その上で、「思春期で未熟な少年たちは、弱い自分を見透かされないように突っ張るところがある。しかし、周囲の大人は諦めずに関わり、『いつも見ているよ』というサインを出し続けることが大切」と話した。
 事件を受けて、東松山市教育委員会は独自に検証委員会を立ち上げるなど、再発防止に向けて動き出している。23日には県教委などの合同検証委の第1回会合が開かれる。
 教育評論家で法政大学教授の尾木直樹さんは「個別の学校や関係者の力だけでは解決に向けた展望はなかなか見えない」と強調する。
 逮捕された少年5人の一部は「カラーギャング」と言われる地元の非行グループに所属。SNSなどを通じて、同世代でメンバーを増やしていた。尾木さんは「不良グループに対し、学校や地域、専門機関、警察が具体的に対応を考えなければ、同じ事件が起こりかねない。ただグループを解散させるのではなく、彼らが輝ける場所、出番を社会の中で持てるよう支援していくことが必要」と指摘した。 ■大人が学ぶ必要
 少年5人のうち16歳と17歳の少年は高校を中退、中学生の3人は学校を休みがちだった。地元の仲間とつるみ、夜間徘徊(はいかい)やバイクの暴走などを繰り返していたという。「非行と向き合う親たちの会」(東京都新宿区)代表の春野すみれさんは「学校という場から外れた子どもたちは、自分が所属する場所を求めて仲間をつくっていく。その過程は特殊なことではない。彼らには自分の存在を認め合う場がそこにしか見いだせなかったのでは」と話す。
 同会には、非行傾向にある子どもの保護者からの相談が全国から年間約300件に上る。「暴力的になった」「夜遊びが始まった」などの悩みが多く、家裁送致された少年5人の非行行動と重なる。それだけに、春野さんは「事件に至るまでにどうにか止められなかったのか」との思いを強く抱く。
 「これまで関わってきた大人たちが子どもたちの行動背景を理解する努力をし、成長をサポートしてあげることが大切。自分を思ってくれる人が身近にいれば、取り返しのつかない事態になる前に踏ん張れる子は多い。簡単なことではないが、大人側が今回の事件から学び始めなければいけない」