「先が見えない中でも毎日、コツコツ続けることが何より大切。すると、ふわっと遠くに来られている自分に後から気づくんです」

 世界的バレエダンサー、吉田都(51)が50代を迎え、これまでの歩みを振り返る初エッセー『バレリーナ 踊り続ける理由』(河出書房新社)を上梓(じょうし)した。バレエファン向けの著作はあったが、英バーミンガム・ロイヤル・バレエ団と英ロイヤル・バレエ団で、22年にわたってプリンシパル(最高位ダンサー)を務めたプリマだからこそ語れる経験や苦楽を、一般の人向けにつづった。

 「私にも下積み時代がありました。ご自分の経験に照らし、ヒントになればうれしい。複数の方から『泣いてしまった』とのご感想をいただきました」

 海外で活躍する日本人ダンサーが珍しかった1980年代、単身英国に渡り、不自由だった言葉や容姿への劣等感に苦しみ、不遇の時期も含め、秘めてきた思いもさらけ出した。そこで支えになったのも「大好きなバレエ」。コンプレックスをバネに努力し続け、頂点に立った者だけが得る“美”の輝きは健在だ。

 今も踊り続けながら後進育成に力を入れる。最近、フィギュアスケートの宮原知子(さとこ)選手から助言を求められ直接指導。驚くほど演技の表現力が増し、昨年末の全日本選手権で3連覇を達成したのは記憶に新しい。

 「本当にうれしい。気持ちを入れれば体も動くし、ちょっとした呼吸や手の出し方で変われるんです」。変化する自身の体とも対話しながら「私自身も体は今も変われる、表現しやすくなったと実感しています」。(飯塚友子)