もうすぐ90歳になる女性を初めて診察したときに驚いたことがありました。1日に13種類、合計24剤の薬を飲んでいたのです。女性は「薬を飲むだけでおなかがいっぱいになってしまうのよ」と苦笑いしていました。薬は、高血圧や若いころに患った腸の病気など複数の病気に対するもので、それぞれ別の病院で処方されたものをそのまま飲んでいたとのことです。薬が多いと感じていたものの、これまで医師に相談したことはなく、今の体調が良いのは薬を飲んでいるためと思っていたそうです。

 投薬は、病気や症状に対して必要性がある、または効果があるだろうと考えて開始されますが、続けることが必要です。もちろん、問題のない薬もたくさんありますが、病気や体の状況はずっと同じというわけではありません。

 高齢になると複数の持病がある人が増え、病気の数だけ処方される薬も多くなります。厚生労働省が平成26年に1人の患者が1カ月に1つの薬局で受け取る薬の数を調べたところ、75歳以上では4人に1人が7つ以上の薬を受け取っていました。

 1つだけ飲んでいるときには問題のない薬でも、複数の薬を同時に飲むことで、効き目が強くなり過ぎて副作用が出やすくなったり、逆に効き目が悪くなり病気が治りにくくなったりする「相互作用」が起きることがあります。相互作用が起きる頻度は、4剤までなら1割程度ですが、15剤以上だと8割に上ることが報告されており、薬の数が増えるほど起きやすいことが分かっています。

 また、高齢者では処方される薬が6つ以上になると副作用を起こす人が増えるという報告もあります。多い副作用は、ふらつきや転倒、物忘れで、転倒による骨折をきっかけに寝たきりとなることもあるだけに注意が必要です。

 冒頭の女性には、年齢や体の状況を考え、薬を減らしていくことを提案しました。女性の現在の状態から、治療効果が不明瞭なものがあったので、まずその薬を中止しました。また、かつては病気を抑えるために効果を発揮していたとみられる薬ですが、病気の再燃がないことを確認しながら少しずつ減らしていきました。その結果、今では6剤の薬で体調の悪化もなく元気に過ごしています。

 処方される薬が多いと思っても、自己判断で中断するのは危険です。必ずかかりつけの医師に相談してください。薬や病状を見直す良いきっかけになるはずです。(しもじま内科クリニック院長 下島和弥)