15人が死亡した長野県軽井沢町のスキーバス転落事故から15日で1年。法政大教授で教育評論家の尾木直樹さん(70)のゼミでは、半数にあたる10人が事故を起こしたバスに乗車し、4人が命を落とした。心と体に傷を負った学生と向き合ってきた尾木さんが、学生たちの今の様子や事故の教訓を語った。

 −−事故後1年が過ぎた

 「当事者には時間軸が2本ある。日常生活のリアルな時間軸と、去年1月15日で止まったままの時間軸。年が明けても、まだ手術を受けなければいけない学生がいる。当事者にとって事故はいまだに進行形。みんな、全力で立ち向かおうとしている」

 −−復帰した被害者は

 「自分だけ早く復帰できていいのかと苦しんでいる人もいる。うれしいと思えば思うほど、楽しければ楽しいほど、やりがいがあればあるほど自分を苦しめる。でも、全員が必死に働こうとしていて、それが手術やリハビリとの戦いのエネルギー源になっている。一方、元気そうに見えても今になって心理的な重症になっている学生もいる。(事故から)半年後くらいが危ないと警戒していたのだが…」

 −−事故に遭遇しなかったゼミ生もいる

 「昨年末になって初めて事故について話し合えた学生たちがいる。しっかりしていた子が心の傷が深かった。気がつかずに申し訳なかったと思っている。みんなをまとめたり頼られたりしているうちに事実と向き合えず、自分のケアが遅れたのかもしれない。(亡くなった学生の)写真を見ることもできず、一周忌も苦しいと。僕もいつも写真を持ち歩いているけど、見た途端に涙があふれることがある。『15日が来るのが怖い。どこで何をしていればいいのか』という学生が何人もいる」

 −−改めて今回の事故を受けて訴えたいことは

 「規制緩和は業界が活性化してすばらしいことだが、命の安全だけは徹底して考えなければいけない。国の監査態勢がこんなにずさんだったのが信じられない。15人の命を犠牲にして学ばなければいけないほどのことだったのか。『格安』は命を売っているんだと気づかされた。誰もそこまでは求めていない。適正な利潤をあげ、安全態勢を整えられる値段を出してほしい。“軽井沢の悲劇”で終わらせるのでなく、日本全体がしっかりと学び取らなければいけない」

(池田証志)