天皇、皇后両陛下と皇族方のお歌、入選者らの歌は以下の通り(仮名遣い、ルビは原文のまま)。

 天皇陛下

 邯鄲(かんたん)の鳴く音(ね)聞かむと那須の野に集(つど)ひし夜(よる)をなつかしみ思ふ

 皇后陛下

 土筆(つくし)摘み野蒜(のびる)を引きてさながらに野にあるごとくここに住み来(こ)し

 皇太子さま

 岩かげにしたたり落つる山の水大河となりて野を流れゆく

 皇太子妃雅子さま

 那須の野を親子三人(みたり)で歩みつつ吾子(あこ)に教(をし)ふる秋の花の名

 秋篠宮さま

 山腹(さんぷく)の野に放たれし野鶏(やけい)らは新たな暮らしを求め飛び行く

 秋篠宮妃紀子さま

 霧の立つ野辺山(のべやま)のあさ高原の野菜畑に人ら勤(いそ)しむ

 秋篠宮家長女眞子さま

 野間馬(のまうま)の小さき姿愛らしく蜜柑(みかん)運びし歴史を思ふ

 秋篠宮家次女佳子さま

 春の野にしろつめ草を摘みながら友と作りし花の冠

 常陸宮妃華子さま

 野を越えて山道のぼり見はるかす那須野ヶ原に霞たなびく

 【召人】

 久保田淳さん

 葦茂る野に咲きのぼる沢(さは)桔梗(ぎきやう)冴えたる碧(あを)に今年も逢へり

 【選者】

 篠弘さん

 書くためにすべての資料揃ふるが慣ひとなりしきまじめ野郎

 三枝昂之さん

 さざなみの関東平野よみがへり水張田(みはりだ)を風わたりゆくなり

 永田和宏さん

 野に折りて挿されし花よ吾亦紅(われもかう)あの頃われの待たれてありき

 今野寿美さん

 月夜野(つきよの)の工房に立ちひとの吹くびーどろはいま炎(ひ)にほかならず

 内藤明さん

 放たれて朝(あした)遥けき野を駆けるふるさと持たぬわが内の馬

 【入選者】(年齢順)

 岐阜県 政井繁之さん(81)

 如月(きさらぎ)の日はかげりつつ吹雪く野に山中(さんちゆう)和紙の楮(かうぞ)をさらす

 東京都 上田国博さん(81)

 歩みゆく秋日(あきひ)ゆたけき武蔵野に浅黄斑蝶(あさぎまだら)の旅を見送る

 長野県 小松美佐子さん(80)

 宇宙より帰る人待つ広野には引力といふ地球のちから

 千葉県 斎藤和子さん(71)

 筆先に小さな春をひそませてふつくら画(ゑが)く里の野山を

 東京都 平田恭信さん(68)

 手術野(しゆじゆつや)をおほふ布地は碧(あを)み帯び無菌操作の舞台整ふ

 東京都 西出和代さん(64)

 父が十野菜の名前言へるまで医師はカルテを書く手とめたり

 宮城県 角田正雄さん(62)

 積み上げし瓦礫の丘に草むして一雨ごとに野に還りゆく

 新潟県 山本英吏子さん(42)

 友の手をとりてマニキュア塗る時に越後平野に降る雪静か

 東京都 鴨下彩さん(17)

 野原ならまつすぐ走つてゆけるのに満員電車で見つけた背中

 新潟県 杉本陽香里さん(17)

 夏野菜今しか出せない色がある僕には出せない茄子の紫