持ちネタは700!

 「ちょっとイラっとくる女」といった女性の特徴をまね、巧みな声色やしぐさで視聴者の笑いを誘う。コンビが多くを占めるお笑い界で、1人で演じる「ピン芸人」として存在感を見せる新潟県糸魚川市出身の女性お笑い芸人、横澤夏子さん(26)。7年前のデビュー以来、平成28年は最も忙しい1年となった。今年も多くの人を楽しませてくれるだけでなく、県の「婚活応援大使」や同市の「観光営業主任」としての活躍も期待されている。

 「今までなかったコメンテーターの仕事やドラマへの出演、小さい頃から見ていたテレビ番組にも出させていただき『こういう仕事もあるんだ』と全部が刺激的だった」

 こう振り返るように28年1〜11月の番組出演数は261本にのぼり、前年同期より198本も急増。前年に出演した番組数との差を比べる「ブレイクタレントランキング」(ニホンモニター調べ)で全体の4位、女性芸人の分野では1位となった。

 テレビ局の女性スタッフやゲスト出演のモデルなど初めて出会うような人と接したおかげで「ネタは尽きない」と、ケラケラと笑う。しぐさだけで表現する「耳をかく女」も含め、持ちネタは「ざっと700」。

「新潟の仕事、全部取っていくなあ」

 手応えを最近感じたネタは、うれしいのかうれしくないのか分からない女性をまねた「やだーっ、すごい、やだーっ!」。「言葉は否定的なのに、うれしいときに『やだーっ』が自分の口癖になった。でも、いろんな人が言っていて結構分かってくれる」

 昨年、婚活応援大使と観光営業主任に任命された。「東京の芸人の先輩から『新潟県の仕事、全部取っていくなあ』とか、いろいろ言われる」とうれしそうに語る。新潟での仕事は「おばあちゃんがすごく喜んでくれる」ので、もっと増やしたいという。

 さらに、一人話芸の日本一を争う「R−1ぐらんぷり」で初めて決勝に進んだ。「やっとスタートラインに立てた」と自信が芽生え、「今年こそ優勝」と意気込む。

 中学生のとき、お笑いコンビの「タカアンドトシ」がテレビ番組でネタを披露し、1万人の観客を沸かせているのを見て「お笑い芸人ってすごい」と衝撃を受け、高校卒業後に吉本興業の養成所に入った。

 コンビを志していたが、ネタ作りは1人の方が楽といった理由などから、22年にピン芸人でデビュー。歌い方や指示の出し方が面白い「音楽の先生」や、イラっとくる女のものまねで人気に火が付いた。

故郷の大火…「実家は大丈夫でした」

 昨年12月に故郷で起きた大火に心を痛めている。当日の自身のツイッターに「実家は大丈夫でしたが、ずっと住んでいた地元の皆さんが、大変なことになってしまって、とっても悲しい」とつづった。大好きだったケーキ店をはじめ、思い出の場所が焼失し、ニュースを見ては泣いた。番組出演やイベントへの参加に追われ、大火後は故郷に戻れていない。

 発生から3週間たった今も「本当に切ない。帰ったら帰ったで、またショックを受けるだろうな。何かできたらとは思っています」と、やきもきしている。

 丸1日の休みはないものの、ゲスト出演しているNSTの情報番組「八千代コースター」のロケで、パンケーキを食べに行ったりするのが息抜きにもなっている。「好きなことをしゃべって、好きなことをさせてもらっている。新潟の仕事が私の休みだと思っています」と笑う。

 県内での活動を担当する「よしもと新潟事務所」の民井準也さん(34)は「愛情を受けて育ち、人への配慮ができる。よしもとにいなかったタイプで、今の時代に合っている。将来は山田邦子さんや清水ミチコさんのようになってもらいたい」と話す。

 本人の夢は明確だ。「新潟の番組を持てたらうれしい。新潟を代表するような芸人になりたい」(新潟支局 市川雄二)

■横澤夏子(よこさわ・なつこ)

 糸魚川市出身。高校卒業後の平成21年、吉本興業の養成所「NSC東京校」に第15期生として入学。22年にお笑い芸人としてデビュー。24年に初の単独ライブ。「R−1ぐらんぷり」で23、27年に準決勝、28年に決勝進出。今月14日にはNSTの「八千代コースター」(午前10時25分〜)にゲスト出演する。