貿易立国・韓国が窮地に立たされている。トランプ次期米大統領が掲げる保護主義的な政策が韓国の輸出を直撃する懸念が強まっているほか、米軍の迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の韓国配備をめぐり中国が経済的な報復を始めているからだ。にもかかわらず、韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領の友人、崔順実(チェ・スンシル)被告の国政介入事件の影響で、民間の経済外交は機能不全の状態というから、韓国民も穏やかではいられないだろう。

 「韓国のように輸出への依存度が高い国には致命的な結果を招く」

 朝鮮日報によると、韓国経済研究院が8日、米シカゴの韓国総領事館で開いた会議で、ノースウエスタン大のマーティン・アイヘンバウム教授はこう警告した。

 トランプ氏が米国への産業回帰による雇用増を狙って、輸入関税を引き上げ、既存の自由貿易協定(FTA)の見直しに動けば、関係各国も対抗措置をとることになり、世界的な通商戦争に陥るとの危惧が背景にある。そうなれば、韓国の輸出も大きな壁に阻まれるのは確実。韓国の国内総生産(GDP)で輸出が占める比率は40%超と、日本の10%超などと比べ依存度は高いだけに、経済へのダメージは甚大だ。

 世界経済の停滞もあって、韓国は既に保護主義の荒波にもまれ始めている。

 韓国貿易協会によると、昨年、韓国産製品に対し反ダンピング(不当廉売)関税などの輸入規制をかけるために調査に入ったのは世界で40件に上る。アジア通貨危機で通商摩擦が激しかった1999年(50件)以来17年ぶりの水準で、2015年に比べ48.1%も増えた。韓国経済新聞が報じた。

 韓国では、中国がTHAADの報復として韓流スターや韓国製品を中国から締め出す「禁韓令」を出しているとの反発も高まっている。

 朝鮮日報によると、中国の国家質量監督検験検疫総局(質検総局)は3日、昨年11月の不合格化粧品リストを発表。28品目の輸入が不許可となったが、うち19品目が愛敬産業、イアソ、CJライオンなど韓国メーカーの化粧品だったという。

 さらに昨年、韓国・釜山の日本総領事館前に慰安婦像が設置された問題についても、韓国経済に悪影響を及ぼす懸念が指摘されている。

 日韓通貨交換(スワップ)協定再開の協議中断といった日本政府の対抗措置に加え、「韓日間の外交葛藤が輸出に及ぼす悪影響を綿密にチェックしている」という韓国の大企業関係者の警戒感を韓国経済新聞は伝えている。

 朝鮮日報によると、大韓商工会議所は9日、韓国の製造業約2400社を対象に調べた1〜3月期の景況感指数が昨年10〜12月期を18ポイント下回る68まで悪化したと発表した。景気判断の分かれ目となる基準値の100を大きく下回り、通貨危機当時並みの悲観的な景気認識を示しているという。

 苦境の打開には、民間の経済外交が期待されるところだが、現状は絶望的だ。ソフトバンクグループの孫正義社長が昨年12月にトランプ氏と会い、4年で5.7兆円の投資を表明するなど、日本や中国でトランプ新政権の発足を見据えた外交戦も活発化しているが、韓国はカヤの外に置かれている。

 聯合ニュースによると、国政介入事件を捜査している特別検察官(特検)のターゲットとなっている大手財閥のオーナーらは17〜20日にスイス東部のダボスで開かれる世界経済フォーラム(WEF)年次総会(ダボス会議)をこぞって欠席する見通しだ。

 崔被告側への巨額出資をめぐる贈賄などの疑いで、特検の事情聴取を受けたサムスングループの経営トップである李在鎔(イ・ジェヨン)サムスン電子副会長をはじめ、SKグループの崔泰源(チェ・テウォン)会長やロッテグループの辛東彬(シン・ドンビン、日本名:重光昭夫)会長らも出国が禁じられているためだ。

 今年の会議は中国の習近平国家主席が初出席する予定で、米国のトランプ氏の側近も出席の意向を示しているだけに、韓国経済界の出遅れ感は強まるばかり。折から、韓国では昨年の失業者数が100万人を超え、若年層の失業率も過去最悪の9.8%を記録するなど「雇用氷河期」の到来が指摘されており、こうした事態を招いた朴政権への国民の恨み節も当然だ。(経済本部 本田誠)