東京地区で初乗り運賃を引き下げた大手タクシー会社3社で、2キロまでの短距離利用が前年に比べて増えていることが各社への取材で分かった。国土交通省の調査でも同様の傾向が出ており、狙い通りに“ちょい乗り”需要が喚起されたといえるが、同時に実施した中長距離利用時の値上げや運転手の接客態度に関する苦情もゼロではないようだ。(池田証志)

順調な滑り出し

 東京23区と武蔵野市、三鷹市で1月30日に導入された新運賃制度では、2キロまで730円だった初乗り運賃を、約1キロまで410円に引き下げるなどした。約1・7キロまでは旧運賃より割安だが、加算ペースが上がるため6・5キロ以上は割高になる。その間の距離では割安になることも割高になることもある。

 大和自動車交通では1月30日〜2月28日の約1カ月間、2キロまでの利用が前年同期間に比べ約15%多い約15万8千回を記録。6・5キロ以上の利用も約5万9千回で約3%増加した。全体では約7%増となった。

 日本交通も同期間の2キロまでの利用回数が約19%、6・5キロ以上が約11%、全体が約14%と全て増加。同様に国際自動車は2キロまでが約21%、6・5キロ以上が約6%増え、全体でも約12%増えた。3社とも集客面では順調な滑り出しとなった。

 国交省の別の調査によると、東京のタクシー会社による平成26年度の輸送人員は19年度のほぼ4分の3に減少。右肩下がりの需要を食い止めるのが、新運賃制度導入の狙いだった。

 JR新宿駅西口のタクシー乗り場では、病院職員の女性(64)から「荷物が多いときなどに乗りやすくなる」との声を聞いた。英国から仕事で来日した会社員の男性(43)は「1日2、3回使っているけど、ロンドンより安い気がするね」とご機嫌だ。

「何もしないよりいい」

 では、収入面ではどうか。国交省は1月30日から2週間、新運賃を導入した19社の計1193台について、1日1台当たりの運送実績を調査。この結果、2キロ以下の利用回数は前年比で約17%増えたものの、収入は昨年の5582円から5132円へと約8%減少していた。6・5キロ以上では回数は変わらず、収入が2万2329円から2万3146円へと約4%増加。全体では回数が約6%、収入が4万6858円から4万7943円へと、1千円ちょっと(約2%)増えた。

 短距離の減収分を中長距離で取り返し、「やや増収」につなげた格好だ。東京ハイヤー・タクシー協会によると、全体的に同様の傾向が見られるという。

 また、導入前には「短距離利用時に運転手の接客態度が悪くなるのではないか」と懸念する声もあった。実際、公益財団法人「東京タクシーセンター」には「運転手に『410円じゃなくてよかった』といわれ、不愉快になった」などの苦情が1月30日〜3月12日に計27件あったが、苦情は減少傾向という。

 主に23区で営業する60代の男性運転手は「短距離のお客さまは確かに増えている。何もしないでいるより、乗せる回数が増えるのは精神的にありがたい」と語る。関東運輸局は「運転手の教育や新制度の周知などを指導しており、当面、さらなる対策は考えていない」としている。

 値上げとなった中長距離料金への苦情も、同センターには寄せられているという。主に武蔵野市内で営業する男性運転手は「長く使ってもらえる人ほど割り引いてあげるべきなのに、逆ですよね」とつぶやく。

 政府の消費者委員会は昨年12月、新運賃について「方向性としては理解できるが、中長距離運賃の値上げの必要性は必ずしも明白ではない」として事後検証を求めた。国交省は「今後、検証を重ね、タイミングをとらえて報告したい」としている。

東京地区の新タクシー運賃制度

東京地区(東京23区と武蔵野市、三鷹市)で1月30日に導入。従来は初乗りが2キロまで730円、以降280メートルごとに90円加算していたが、新運賃は初乗りが1・052キロまで410円、以降は237メートルごとに80円加算することになった。低速時(時速10キロ以下)の時間加算料は、105秒ごとに90円だったのが、90秒ごとに80円になった。