【モスクワ=黒川信雄】ウクライナ東部紛争の解決に向けた和平合意の履行をめぐり、ウクライナと欧州の立場の間に溝が生まれつつある。和平の実現が見通せないなか、欧州がロシアに優位ともいえる形での決着を模索し始めたためだ。米国は欧州に対露圧力を弱めないよう求めているが、ウクライナ側の努力の欠如も批判している。

 ドイツとフランスの両外相は今月中旬、共にウクライナを訪問。露紙コメルサントによるとエロー仏外相はその際、昨年2月に合意され履行が進まない和平プロセスを再び軌道に乗せるため、ウクライナ東部の親ロシア派武装勢力の支配地域に「特別な地位」を与える新法制定や、同地域での選挙実施を優先させ、その後に東部国境のウクライナ政府による管理を回復すべきだと提案した。国境ではロシアからの武器や人員の流入が強く疑われている。

 これに対しウクライナ側は猛反発した。民族派政党「急進党」のリャシコ党首は独仏外相を「ウクライナを売り渡そうとしている」と激しく批判。与党「ポロシェンコ・ブロック」の議員も「露政府の声を代弁している」と不快感をあらわにした。

 国境管理の回復抜きで選挙を実施すれば、勝利が確実視される親露派に合法との“お墨付き”を与え、同勢力を通じてロシアがウクライナの内政・外交に影響力を行使できるという、ロシアが望む構図が生まれかねないためだ。ウクライナの政治学者フェセンコ氏は、エロー氏の提案の背景には「独仏で来年選挙が予定されており、政治的成果が欲しい両国の思惑がある」との見方を示す。

 欧州側にはロシアとの対立が続くことへの“疲れ”も見える。ドイツのガブリエル副首相は21日、ロシアを訪問し「対露制裁を徐々に解除できるよう、可能な限りの努力をしている」と言明した。ロシアと関係が深いドイツ経済界では、対露制裁解除を求める声が根強いとされる。

 一方、米国のバイデン副大統領は21日の講演で独仏とイタリアに「対露制裁の継続を求めた」と明らかにするなど、欧州の対露姿勢の変化に警戒感を示した。ただバイデン氏はウクライナに対しても、国際支援の条件である政治・経済の改革を怠れば欧州が制裁解除に傾く口実を与えかねないと警告し、汚職対策などで依然成果が乏しい同国に強い不満をにじませた。