名所「オペラハウス」に臨む高台にある豪首相公邸の庭。共同記者発表に臨んだ安倍晋三首相とターンブル豪首相は、双方を「マルコム」「シンゾウ」とファーストネームで呼び合い、緊密な関係をアピールした。

 安倍首相の今回の訪豪の主眼は、中国寄りとされるターンブル氏との個人的な関係の強化にあった。豪州には経済面での対中傾斜の懸念もつきまとう。一方、中国が軍拡を進める東シナ海や南シナ海を含めたアジア太平洋地域の安全保障のためには、日本と豪州との普遍的な関係強化が欠かせない。この認識を両首脳間で共有することがテーマだった。

 豪政府は、政権が不安定な傾向にあるが、安倍首相はアボット前首相とは「ウマ」があい、強固な関係を構築した。3年前の訪豪時には豪政府専用機に一緒に乗り込んで鉱山を視察したほどだ。

 だが、ターンブル氏との関係がそこまで深まっているとは言い難い。2015年9月のターンブル氏就任と時を同じくし、翌月に豪北部準州は中国企業「嵐橋集団」にダーウィン港の商業用港湾施設を約5億豪ドル(約430億円)で99年間貸し出す契約を結んだ。ダーウィンは南シナ海を警戒する米海兵隊が駐留する要衝でもある。

 昨年4月には日本、ドイツ、フランスが受注を争っていた豪州の次期潜水艦について、共同開発相手をフランス企業に決定。日本は海上自衛隊の「そうりゅう型」を売り込んだが、苦杯をなめた。

 日本の安全保障やシーレーン確保のために豪州との強固な関係は欠かせない。豪州にとっても、西太平洋にまで空母「遼寧」を進出させた中国の脅威はひとごとではない。経済分野も含め日豪の利害はますます一致すると踏む安倍首相は14日朝にターンブル氏と2人で散策し、個人的な信頼関係の構築に腐心した。

 これにターンブル氏も応じた。会談後の共同記者発表で、安倍首相の祖父・岸信介氏が首相だった昭和32年に日豪通商協定を締結してから今年で60年を迎えることに言及。「シンゾウとご家族は日豪関係を拡大し、深めていく上で重要不可欠の役割を果たした」と持ち上げた上で、こう強調した。

 「日豪はいかなるときでも友好国だ。本当に頼れる信頼できるパートナーだ」

 最大限の賛辞を受けた安倍首相も「個人的な信頼関係がさらに深まった。日本にとって豪州は積極的平和主義をともに進める重要なパートナーだ」と胸を張った。豪州との普遍的な関係強化に一定の手応えを感じたようだ。(シドニー 酒井充)