マンハッタンで海外特派員が米大統領選取材の情報交換会を開いた。「バイアスをかけすぎたのではないのか?」という自己批判の会合である。

 話題になったのが、「共和党候補のドナルド・トランプ氏に偏重した選挙報道」(英紙特派員)。「トランプ氏が見出しになると、ウェブサイトへの訪問者が増える」(同)。

 例えば、仏フィガロ紙。過去1年間で同サイトに掲載されたクリントン氏関連の記事数が約800本なのに対して、トランプ氏は約1200本だった。

 米国務省傘下にある海外報道センターでは、春から特派員向けに有識者を招待して大統領選に関する会見を開いている。会見後に回覧される質疑記録を確認すると、質疑の半分以上がトランプ氏関連だ。

 芸能テレビに出演していたトランプ氏はメディア界の人気者。米国勢も罪は同じだ。「泡沫(ほうまつ)候補だったトランプ氏が勝ち進んだのは、米メディアが照明を当てすぎたから」(米ボストン・グローブ編集者のウォルター・ロビンソン氏)。

 「オバマ米大統領の出生地に関連して発表します」。16日、トランプ氏陣営が米メディアにこう告知すると大勢の記者が集まった。トランプ氏はオバマ大統領の米国籍に疑義を呈してきた経緯がある。

 だが、いざ会見が始まると、トランプ氏は「大統領は米国生まれ。以上」。残り時間の大半をクリントン氏批判に割き、その模様が延々と生放送された。

 「宣伝機会を与えただけだが、米メディアはそれでいい。視聴率が取れるから」(デラウェア大学都市・公共政策プログラムのダニロ・ヤニッチ部長)。

 ハーバード大の調査書によると、共和党予備選でトランプ氏が報道された割合は全体の34%とトップだ。

 21日、マンハッタン。会場には、ジョン・レノンの名曲「イマジン」が流れていた。

 クリントン氏夫妻運営の慈善団体であるクリントン財団の年次総会、クリントン・グローバル・イニシアチブ(CGI)で、夫であるビル・クリントン元大統領が1時間も演説。過去の慈善活動を自己擁護した。

 財団と国務長官時代のクリントン氏との利益相反が最近問題となり、クリントン氏が当選した暁にはクリントン元大統領は財団理事から降板する予定だ。

 2005年に立ち上がったCGIは、クリントン氏が国務長官だった時期に得た外国政府からの献金が問題視されていた。

 だが、米メディアに注目されたのは大統領選が終盤にさしかかったこの夏だ。昨年から、米国人記者が追いかけていたら、民主党の予備選も違った結果になっていたかもしれない。

 特派員の情報交換会でも、「財団との利益相反や健康の不安などクリントン氏の問題点を掘り下げなかった」という反省の声が聞かれたが、理由を聞くと「本国では受けないから」。「大統領選が(素人参加型の)リアリティー番組化した」(ヤニッチ氏)証拠である。