【シンガポール=吉村英輝】国際海事局(IMB)の海賊報告センター(マレーシア)は、昨年1年間に身代金目的の誘拐被害にあった船舶の乗組員数が、過去10年間で最悪の62人となったと発表した。特に、フィリピン南部海域でイスラム過激派による誘拐事件が急増しており、IMBは同海域の航行を避けて迂回するよう呼びかけている。

 IMBによると、2016年の海賊事件総数は191件で、15年の246件から減少した。インドネシア近海で続いていた積み荷の略奪事件の取り締まりが効果を上げたとみられる。

 ただ、16年の誘拐被害は15件で被害者数は62人と、14年の9人、15年の19人から大幅に増加した。昨年の被害の約半数は、マレーシアやインドネシアなどに近い比南部のスールー海付近で発生。IMBは被害が「著しく拡大している」と警告した。

 スールー海では、イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)との連携が指摘されるフィリピンのイスラム過激派「アブサヤフ」が身代金目的で外国人を誘拐し、昨年4月には船旅中だったカナダ人男性の頭部を切り落として映像を公開するなどしている。

 フィリピンのロレンザーナ国防相は、山岳地帯などに身を隠して抵抗を続けるアブサヤフの掃討を国軍に指示。だが、9日夜にはスールー海でフィリピン漁民15人が襲われて8人が死亡するなど、アブサヤフの関与が疑われる海賊行為が相次いでいる。