(セ・リーグ、広島1−4阪神、25回戦、広島18勝7敗、22日、マツダ)遅すぎるのは分かっている。27個目のアウトを取った感覚のまま、もう来季へ向かいたい。生まれ変わった藤浪が、ようやく広島に雪辱星だ。打者を押し込み18・44メートルを制する姿を取り戻した。

 「バランスよく、フォームをいじったり、投げ方を変えたりして投げました。いい感覚を最後につかめたなと、今後につながるピッチングができたかなと思います」

 最速は153キロ。だが自己最速160キロをマークした前回14日の広島戦(甲子園)でつかみかけた感覚を、結果に変えた。2−0の七回二死一、三塁。新井を代打に迎えても自信があった。

 「自分の中でもすごく指にかかっている感覚があったので」と148キロ直球で力ない三邪飛に打ち取り、危機を脱した。八回を132球で終えたが、金本監督に「行かせてください」と志願。鈴木に中越えソロは許したが、9回5安打1失点で締めくくった。6月2日の楽天戦(コボスタ宮城)での1安打完封以来、今季2度目の完投。今季6戦0勝4敗だった広島を、ねじ伏せた。

 指揮官も「直球も結構空振りがとれていた。投手のことは素人なんだけど、やっぱり上体がブレていないような気がした。テークバックからトップの位置まで」とうなずく。藤浪自身も「しっかり立ってバッターとの距離を詰めるというところをやれば、自然に安定してきた」と振り返る。

 秋季キャンプではキャッチボールが中心の基礎メニューからやり直す方針だが、模索してシーズン終盤にたどり着いた力みがなくバランスのいいフォーム、そしてキレのある球に、手応えをにじませた。

 「本当はもっとシーズン序盤とか中盤でこういうふうになってくればよかったですけど。いろいろ試行錯誤して、遠回りしながらというか、やってきたことがひとつ出たかなと思います」

 今後のチーム状況次第となるが、このマウンドが今季最終登板となる可能性がある。7勝目を挙げたが11敗した2016年の最後に、もう二度と忘れてはいけない感覚を手にした。 (長友孝輔)

★死球きっかけ

 藤浪が苦しみはじめたのは、4月19日のヤクルト戦(甲子園)で死球を当て、谷内に全治3カ月の骨折を負わせてしまったころからだった。日本代表でも面識のあった山田に「谷内さんの番号を教えてください」と頼み込んだ。直後に電話で謝罪したが、8月下旬のヤクルト戦(甲子園)の練習後には三塁側ベンチ前へ直行。面と向かって深く深く頭を下げた。

 谷内も「個人的には悔しかったけど野球ではあること。よけられなくてゴメンと、言ってあげたい」とスッキリした表情だった。内角への球は、右打者に踏み込ませない武器でもある。未熟さを詫びながらも、もっとたくましくなるため、藤浪は投げ続ける。

藤浪について阪神・香田投手コーチ「本人も前回の途中から、いい感覚があったと思う。いいところで三振がとれていた。(次回登板は)ゼロじゃない。ある程度順位が決まってしまえばいろんな可能性がある人(若手)を投げさせるのも出てくるし、そうじゃなければ晋太郎の力を借りるかもしれない」

データBOX

 ◎…藤浪の完投は6月2日の楽天戦(コボスタ)で完封して以来、今季2度目。通算では11度目。昨年は自身最多の7度の完投を記録していた。今季阪神の投手で完投を記録しているのは他に岩貞と能見が2度、メッセンジャーが1度記録している。