〈秋は来(き)ぬ/秋は来ぬ〉。島崎藤村は歌う。〈青き葡萄(ぶどう)は紫の/自然の酒とかはりけり〉。ブドウが収穫の季節を迎えている。岡山県北の新見市では、ワイン用に育てた品種が雨露に磨かれて輝く▼水はけのよい石灰岩土壌が広がる新見地区は寒暖差も大きい。フランスのブルゴーニュなど名だたるワイン産地と環境が似ており、ワイン用ブドウの栽培が盛んになってきた▼今月、市内に待望のワイナリー(醸造施設)が完成した。既に今秋収穫したブドウの仕込み作業が始まっている。これまでは県外施設に醸造を委託していたが、地元業者による生粋の新見産ワインが来春にも市場デビューする▼市内にはほかに県外から移住してきた新規就農者3世帯がワイン生産に取り組んでいる。市は国から小規模醸造が可能になる「ワイン特区」に認定されており、今後は自家醸造にも乗り出すという▼ブドウの生産が全国4位のフルーツ王国・岡山県。実はワイン出荷量も同4位を占める。これは大手企業のワイナリーが県内にあるためで、ワイン用県産ブドウの使用割合は3割程度にとどまっている▼栽培から醸造、販売まで地元で一貫できれば、ブランド力は一層高まるだろう。秋の深まりとともに熟成していく「わがまちのワイン」。生産者は「ワインで地域を盛り上げたい」と口をそろえる。(2016年09月23日08時00分更新)