JR山手線の原宿駅(東京都渋谷区)には、普段は降り立つことのできないホームがある。開放されるのは大みそかの深夜から年明けの数日間。西に隣接する明治神宮の初詣客のためだけのホームで、今年も3日まで使われた▼駅舎は、明治神宮の創建を受けて1924(大正13)年に完成した。都内最古の木造駅舎とされる。外観のデザインに木材やれんがを用い、豪壮な山荘を思わせる洋風建築である▼表参道など人気のスポットも近いため、平均乗客数は1日7万人を超える。混雑時には入場制限されるほどだ。JR東日本は昨年、さらなる利用増が見込まれる2020年の東京五輪に向けた改修計画を発表した▼現在の駅舎はどうなるのか。地元や建築の専門家からは保存を求める声が早速上がっている。空襲でも奇跡的に焼け残っただけに、「五輪のためなら」と簡単には割り切れまい▼東京はいま「五輪景気」の再来に期待が高まる。その一方で、千代田区では道路改良に伴い樹齢70年超のイチョウ並木を伐採する計画があったのを、住民らが反対して中断させた。地域の景観を守ろうとする動きも広がっている▼これから誕生する新たな競技場は未来へのレガシー(遺産)だが、歴史が刻まれ、人々の思いが染み込んだ駅舎も代えがたいレガシーである。ともに生かす道を探りたい。(2017年01月14日08時09分更新)