日本経営管理教育協会が見る中国 第430回−−三好康司

 子供の頃、親に連れられて銭湯によく通ったものである。銭湯に行くと、顔見知りの人々に会い、「最近元気にしているか?」などの会話が飛び交っていた。銭湯は、いわばコミュニティー・サロンの側面を持っている。しかし、現在では家庭風呂が普及したため、銭湯の軒数は大幅に減少している。一方、外国人観光客の間では、銭湯人気が出て来ていると聞く。今回は、銭湯の話を書いてみたいと思う。

1.銭湯の歴史と現状
 不特定多数の他人同士が裸で同時に入浴する「銭湯」は、世界でも例が少ないわが国の文化である。銭湯の起源は、6世紀の中頃にさかのぼる。仏教が伝来した際、僧侶たちが身を清めるために寺院に「浴堂」が設置された。入浴は健康にも良いため、鎌倉時代に一般人に開放されるようになり、荘園制度が崩壊した後、入浴料を徴収するようになり、これが「銭湯」の始まりであるそうだ。

 銭湯の現状をみてみると、平成12年には、わが国で8000軒を超える銭湯があったが、平成26年では4293軒、大幅に銭湯数は減少している。家庭風呂の普及による利用者の減少より、銭湯の廃業に歯止めがかかっていない。

2.インバウンド需要の取り込み
 一方で、「銭湯に入ってみたい」と考える外国人観光客は増えてきているそうだ。羽田空港に近い東京都大田区では、インバウンド需要の取り込みを狙った動きを進めている。

 大田区のホームページによると、同区には東京都内最多の45軒の銭湯が残っている。大田浴場連合会のホームページをのぞいてみると、日本語のほかに、英語、中国語、韓国語でのサイトが準備されている。「外国人のための銭湯への入り方」という漫画も掲載されており、外国人観光客への期待感がうかがえる。また、大田区ホームページにも「食・グルメや商店街、銭湯や文化と組み合わせることにより、『オール大田』の魅力を創出する」と書かれており、区を上げた取り組みであることが分かる。

3.インバウンド対応の課題
 一方で、タトゥー(入れ墨)をしている人の入浴を認めるかどうかについて、議論が分かれている。ファッションのほか宗教的、文化的な理由で、タトゥーをしている外国人観光客が増えているためである。外国人観光客誘致に積極的な銭湯では、タトゥーを隠すことができるシールを販売し、それをつけてタトゥーを隠すことを条件に入浴を認めている。しかし、タトゥーについては反社会的な印象を抱く人が少なくないのも実情であり、原則として入浴を認めない銭湯も多い。

 2020年の東京オリンピックに向け、外国人観光客は更に増えていくことが予想される。銭湯は世界でも例の少ないわが国の文化であり、地域コミュニティーの中心でもある。さらに、衛生の観点からもこれ以上の軒数減少は望ましくない。そのため、インバウンド需要(外国人観光客)の積極的な取り込みは、銭湯経営安定のために不可欠と思うが、いかがであろうか?(執筆者:日本経営管理教育協会・三好康司 編集担当:サーチナ編集部)(イメージ写真提供:123RF)(写真は日本経営管理教育協会提供)