千金堂
家の本体価格1000万円均一」を前面に打ち出し、業績を躍進させている住宅会社がある。その名もズバリ「千金堂」。“値千金”と“1000万円均一”を合わせた意味がある。元々は「フォレストワーク家づくりの会」という住宅会社や工務店11社による勉強会で、毎月2回、家づくりに関するさきざまなテーマで勉強会を開催し、共同仕入れや社内の業務フロー、素材や技術向上のための研究や検証を重ねてきた。

その成果が「1000万円均一住宅」に結実し、2008年11月、11社13店舗で千金堂をスタートさせた。だから、役員のほとんどは現役の工務店経営者。自分の工務店を運営する一方、千金堂の経営も手掛けるというユニークな住宅会社だ。全国でFC(フランチャイズ・チェーン)展開し、千金堂はその本部を運営している。なぜ、1000万円均一の住宅なのか。坂田克巳代表取締役CEOが語る。

「住宅業界は、家を建てたいというお客さまとやり取りしながら価格を決めていく積み上げ式が一般的です。じつは、これは極めてわかりにくく、 不透明なやり方です。これに対して、あらかじめ本体価格を固定して明確化すれば、家づくりにかかる費用に透明性を持たせることができます。積み上げ式とは逆のやり方ですが、これならお客さまにとっても、売る側にとってもシンプルでわかりやすい。そうして始めたのが1000万円均一の注文住宅です」

同社の1000万円均一住宅とは、本体工事価格が税込み1050万円で、工事施工面積28〜35坪、最大4LDKが標準。カーテンや照明器具まで含まれるフル装備住宅で、その標準仕様・標準設備のグレードは高い。外構工事などは含まれないが、積み上げ式ではないから家づくりにかかる費用に透明性があるのは確か。構造から設備、内外装まで1000万円に含まれる標準仕様・設備は、同社のウェブシステムから顧客が自由に選ぶこともできる。

600ものソリッドモジュール

「人生最大の買い物」ともいわれる家の本体が1000万円でできるとはとても思えない、というのが一般的な見方だろう。「そんなに安く施工できるのは不思議。それで利益は出せるのか」といった疑問が湧くのも当然なのかも知れない。だが、同社は不透明で不明瞭ともいわれる業界常識にあえて挑戦した。その試みを具現化するのが千金堂であり、まさに「家づくりの常識を変える」ことを使命にした企業なのである。

とはいえ、自らに課した本体価格1000万円均一は、「ハードルがかなり高く、大変むずかしい金額の設定でした」と坂田代表は振り返る。そこで同社は、千金堂ルールともいえる家づくりの基準を設けた。そのひとつが、最高等級の耐震基準だ。耐力壁と柱の位置をあらかじめ検証した独自の建物外形規格「ソリッドモジュール」を採用し、耐震等級「3相当」と柱・耐力壁の直下率70%以上という二つの耐震基準を満たす設計を行うことで、長期耐震性を実現させている。

独自開発したソリッドモジュールの種類は約600。これをベースに家族構成やライフスタイル、土地の形状に合わせて間取りなどをセミオーダーで設計を行う。顧客の自由な発想を設計に生かしつつ、「間くずれ」などの心配のない家づくりが実現できるという。また、構造を支える木材にもこだわり、例えば柱の場合、厳しい基準を設けて全数検査をクリアした構造材のみを使用することで耐久性を高めている。

「安い材料を仕入れて1000万円の住宅を売ろうということではありません。素材や職人の質を落とすことなく耐震性と耐久性を確保し、安全で安心な家ができる最低限の価格が1000万円ということです。それを実現するために、いくつもの基準を設けて高いハードルを越えてきました」と坂田代表は胸を張る。 

3000万〜4000万円の価格で販売する住宅会社との違いが歴然としたのが、被災地の住宅展示場でのモデルハウス建築だった。宮城県岩沼市に14社の展示場が開設され、同社も参画。被災地ということもあり、そこでは本体価格(施工面積70坪)が2000万円以内で建設することが求められた。大手の住宅会社が品質や性能の低下を余儀なくされる中で、1000万円均一住宅を柱とする同社は逆にバージョンアップさせることができた。家づくりに対する基本的な考え方の違いを如実に示す好例といえるだろう。