著作のヒットで全国にファン

事業が急拡大したときに問題となるのが人材の確保である。ましてや手がけているのが遺品整理。死後から時間が経過して発見された孤立死の場合、ウジムシやハエの駆除や死臭の脱臭、血液や体液が付着している室内の清掃や消毒などもしなければならない過酷な現場だ。そうした業務を難なくこなせる優秀なスタッフの確保が事業を継続できるかを決める試金石ともいえるが、吉田社長はそのハードルも乗り越えた。『遺品整理屋は見た!』(2006年、扶桑社)をはじめ、自らの経験を綴った著作を立て続けに出版したことで「遺品整理業」という仕事の知名度が上がり、「キーパーズで働きたい」という若者が全国に出現するようになったのだ。いまでは社員募集に応募する人のほとんどが吉田社長のファンだという。キーパーズが行っている事業そのものに心打たれた社会貢献意識の高い人材が手を挙げて集まってくるわけだから、入り口の時点ですでに雇用のミスマッチを防いでいる。入社後に理想と現実の落差に戸惑う新人もいそうだが、そうした心配も不要だ。

「遺品整理業は、現場がひどければひどいほどお客さまから『ありがとう』と感謝される仕事ですが、若い人はこんなに喜ばれる経験をほとんどしていません。ですから依頼者からの心のこもった感謝の言葉がどんどんやる気につながり、人間性の成長にもつながるのではないでしょうか。現場がつらいから辞めたという社員はこれまで一人もいません」

吉田社長は今後、これまで以上に社員教育に力を入れていくつもりだという。言葉づかいや接客の水準を引き上げ、さらに質の高いサービスを提供することで、「価格は高くてもやっぱりキーパーズにお願いしたい」という顧客が集まる圧倒的なブランド力を形成するためである。

「おひとりさま」でも大丈夫

よりよいサービス提供を追求する経営者としての手腕を発揮しつつ、最近は社会問題となっている孤立死について公の場で積極的に発言する機会も増えてきた。社会福祉協議会や教育機関、自治体、企業などからの講演依頼が後を絶たないという。

「高度成長のバラ色の人生を生きてきた高齢者の方が過去を振り返ったとき、見落としてしまっていたものに気付くでしょう。彼らは努力によって自由と便利を獲得しました。それは立派なことですが、一番煩わしい人間関係の重要性を忘れてしまった。講演に来ている人たちには、『10代や20代など若い世代のためにももっとお金を使って交流してみてはどうですか』『世話になってもらえるよう周囲と人間関係を構築したほうがいいと思いますよ』などと呼びかけています」

吉田社長は、孤立死を避け遺族に迷惑をかけないで死を迎えるために必要なことをコンパクトにまとめた冊子『おひとりさまでもだいじょうぶノート。』を無償で配布する活動もはじめた。遺品整理業のプロならではの実践的なアドバイスが評判を呼び、配布部数は10万部を超えたという。

COMPANY DATA
設 立 2002年10月
所在地 東京都大田区大森本町2-4-22
売上高 約4億円
URL  http://www.keepers.jp/