独自の与信管理の仕組みを構築してきたことで知られる大手総合商社、三井物産。インターネットを通じそのノウハウを提供しているのが、三井物産クレジットコンサルティングだ。松居敏哉社長は、「自社に審査部も専門家もいない中小企業こそ、与信債権管理サービスを活用すべき」と強調する。

 契約履行能力や支払い能力などについて取引先の信用度合いを見極めるのは、経営者にとって重要な決断のひとつである。商品を引き渡して売掛債権が発生してからは、代金債権を確実に回収するための管理も大切になってくるだろう。しかし専門の部署がある大企業ならいざ知らず、専門家を育成する余裕のない中小企業では、社長の経験と勘に依存しているのが現状である。そもそもこうした与信債権管理を行っていない会社が大半かもしれない。
 とはいえ資金力のない中小企業にとって、大口取引先に緊急事態が発生し売掛債権が回収できないとなれば一大事である。そうした事態を極力回避するリスクマネジメントとして最適なサービスが、三井物産クレジットコンサルティングの「SMART与信管理サービス」だ。三井物産で審査のスペシャリストとして長年活躍した経歴を持つ松居敏哉社長はいう。
 「三井物産は1920年ごろから与信管理の仕組みを自社で構築するなど、大手総合商社のなかでも特に『審査に強い』と言われてきました。その与信債権管理ノウハウを引き継ぎ、インターネット環境を通じより多くの企業に使っていただこうとはじめたのがこのサービスです。①取引先情報を瞬時に取得保管できる②決算データに基づく格付けを提供している③会員企業それぞれの特徴に合わせた適正与信金額を提案する――という三つの大きな機能があります」

格付けと倒産確率情報を提供
 会員制の同サービスは原則的にウェブサイトを通じてASP環境で使用する。与信管理という言葉で経営者がまず思い浮かべるのは、取引先の情報を入手することだろう。同サービスでは東京商工リサーチが提供する約300万社の企業情報をウェブ画面で随時閲覧することが可能で、その情報を「取引先ファイル」に格納・保存し社内の共有情報として活用することができる。
 しかし会社の設立年月日や代表者の氏名、資本金や決算情報などの基本情報だけで信用の度合いを判断するのはなかなか難しい。そうしたときに役立つのが、「MCC格付け」だ。
 「三井物産では1980年ごろから膨大な数の取引先の決算情報を蓄積しており、そのヒストリカルなデータを統計的に解析した独自の格付けの仕組みを構築してきました。この格付けを、経営者は信用度合いを判断する際の基本的な物差しとして使うことができます」(松居社長)
 格付けには上場企業から中小企業まで、過去10年間の定量データを使用。三井物産が30年にわたりブラッシュアップしてきた信用格付けロジック(統計的手法により算出)を活用し、取引先の信用レベルをS1〜9の9段階に格付け(S7、S8、S9についてはそれぞれ3段階にさらに細分化)している。格付けには収益性・効率性・流動性・安全性・成長性や会社規模を示す指標の中から複数の指標を選択し、格付けごとの倒産統計データに基づく倒産確率も計算している。
 格付けで取引を実行するかどうかの判断材料はそろった。しかし取引を実施することを決めたとして、その上限金額の目安をどのように設定したらよいのだろうか。同社はそうした悩みに対するソリューションも用意している。適正与信金額の提案だ。松居社長はサービスの概要についてこう話す。
 「格付けの低い取引先との取引をどんどん増やしてしまうのはリスクマネジメント上問題があります。しかし中小企業の経営者にどのくらいまでの金額ならよいか決めるのは難しい。そこでこのサービスでは、会員企業それぞれの事情にあわせた与信金額を具体的に提案しています」
 このサービスで特徴的なのは、取引先の格付けに応じて一律に金額を算出するのではなく、企業ごとに異なるロジックを作り込んでいること。会員企業の規模や収益力、事業形態、債権残の分布や財務内容、与信に対する基本的な方針などのさまざまな事情を考慮に入れたうえで与信金額を算出しており、企業が適正与信金額を決める際に参照するガイドラインとしては他に例を見ない精度を達成している。松居社長はいう。
 「適正与信金額の設定で、許容できるリスク量を超える過大な信用供与や、債権の過度な集中によるリスクを回避することが可能になります。また万が一の不測の事態が生じても、経営基盤を揺るがすような事態に陥ることは免れることができるでしょう」

研修事業セミナーも高い人気
 さらに同社をオンリーワンの存在にしているのが、コンサルティングサービスの充実である。松居社長によると、企業が直面する多種多様な与信債権管理の課題に対し、ワンストップサービスを提供している会社は珍しいという。
 「コンサルティングという冠を頂戴している以上、顧客ニーズを丁寧に拾い上げた対面サービスを重視しています。債権ポートフォリオ分析や与信債権管理に関する社内規程整備のアドバイス、会員企業を対象とした教育研修事業なども手がけており、ワンストップで与信債権まわりのことがすべてそろうというのが他社との大きな違いといっていいと思います」
 債権ポートフォリオ分析とは、格付けごとの倒産確率を用いて取引先を総合的に分析し、格付けごとの債権分布やリスク量、債権残の層別・格付け別の社数分布などをグラフ化し、、低格付け先への債権が過大であるなどといったことを指摘する分析サービス。教育研修事業は会員企業向けの「MCCセミナー」を中心に年間100回以上実施しており、弁護士などを交えた実用的かつ専門的な内容で高い利用満足度を獲得しているという。
 三井物産グループ関連の約50を含め登録アカウント数が四百数十を超え、売上高も6億円を突破した同社だが、さらなる事業拡大をねらった新サービスを2015年12月に開始した。海外取引の与信管理クラウドサービス「CONOCER(コノサー)」である。
 「安倍政権は中小企業の海外展開支援を強化しており、中小企業の海外取引についての関心はかなり高まっています。しかし一方で『海外の取引先の与信管理を相談できるところがない』という企業の話もよく聞きます。そこで当社では、海外進出を検討する企業が迷わずに取引先情報を入手・分析し、取引するかしないかという結論を出すための大きな判断材料となるようなサービスを開発しました。今でこそ投資事業に大きく軸足を移しましたが、海外取引といえばかつては総合商社の独壇場でした。与信管理と海外取引についての長年の経験で構築した三井物産のノウハウを多くの企業にご活用いただければと思い、一部の機能は無料で使用できるようにしています」(松居社長)

中小企業の「海外取引」を支援
 サービスではまず、同社が提携する複数の調査会社から顧客ニーズに応じた最適な調査レポートを選択して提供。レポートはクラウドでのオンライン納品のため、社内での共有や時系列での比較がスムーズに行える。また財務情報を入手できた場合はMCC格付けの提供も可能だ。
 情報の入手だけではなく、与信管理ノウハウを自然に習得できるナビゲーション機能が付いているのも大きな特徴である。「取引先」「取引する商材」「取引する国」「取引条件」などをプルダウンメニューから選択する「四つの質問」に回答することで、取引パターンごとに異なるリスクを確認できるチェックシートが生成。これに前述の調査レポートの内容やカントリーリスク、格付けの情報を書き込んでいくことにより、最終的には取引を推進するかどうかについて判断したレポートが完成する。レポートはPDFでクラウド保存されるため、社内メンバー間での情報共有もスムーズだ。
 利用企業は着実に増えており、松居社長はコノサーを事業の柱の一つとして成長させる手応えを感じている。
 「このシステムをご活用いただければ、審査のプロが行うプロセスをインターネット上で簡単に実現することができます。審査の専門家を一人雇うより圧倒的に低コストなので、審査の人材を自前で育成することの難しい中小企業にぴったりのサービスだといえるでしょう」

COMPANY DATA
三井物産クレジットコンサルティング株式会社
設 立 2000年12月
所在地 東京都中央区日本橋人形町1-14-8郵船水天宮前ビル5F
売上高 6億5000万円
社員数 33名(2016年5月現在)
TEL  03-5962-3017(平日9:30〜17:00)
URL  https://www.mitsui-credit.com/