年金生活をする高齢者世帯の7割が「老後破産」のリスクに晒されているとのデータもあるほど深刻化している、老後の経済問題。ここまで深刻化してくると、もはや誰にとっても他人事とはいいがたい状況です。

しかし、たとえば30代の読者にとっては、30年後、40年後の社会がどうなっているかなど未知数。もちろん備えがあるに越したことはありませんが、むやみに不安ばかりを募らせて「今」をおろそかにしてしまっては元も子もありません。

こうした不安をできるだけ小さくし「今」を充実させるために、お金とどう向き合っていけばいいのか。

今回は、『見える化すればお金は増える! 書き込むだけでみるみる貯まるマネバナノートの作り方』(集英社刊)の著者・長岐隆弘さん、また長岐さんとともに「お金と幸せの関係」について考えるための場「マネバナ」を主宰する高田洋平さんにお話をうかがいました。

■あとで後悔しないためのお金との付き合い方

――インタビュー前編では、マネバナをすることで、参加者が大きく価値観を揺さぶられるというお話がありました。ですが、参加者の年齢が上がれば上がるほど、その価値観を揺さぶることは困難なのではとも感じました。これまでの参加者のなかで最高齢はおいくつぐらいでしたか?

高田:50代の夫婦が参加してくださったことがありました。「いままではまったくお金に向き合ってこなかったけれども、定年退職が迫ってくるなか、残りの人生で実現したいことを考えたい」ということで。

そこでマネバナでは、旦那様ご自身、さらには夫婦で実現したいことについて話し合っていただきました。話し合ううち、実現したい目標がはっきりしてきて、旦那様が「今のままの働き方では実現できないだろう」と気づいて。

そこで初めて、「じゃあ目標を実現するには、どんな働き方がいいんだろう」という話になり、最終的には少しずつ投資を始めてみることになりました。

――「人生の棚卸し」という感じですね。

長岐:過去の延長線上だけで考えてしまうと、その先にある「ゴール」は見えてしまうもの。そして多くの人は、それが見えてしまった時点で、「本当はやってみたいこと」を諦めてしまうんですよね。

でも、現状はいったん置いておいて、やってみたいことを明確にし、そこから逆算して今やるべきことに落としこむ……という作業を丁寧にやれば、若かろうが老いていようができないことはない。これが私たちの考えです。

ここでのポイントは、積み上げ式ではなく逆算で考えられるようになること。そして、このような思考の転換を促すのがマネバナなんです。

――マネバナをする前後で、思考のベクトルが真逆になるわけですね。

長岐:実際、参加者の方に「何をしたいのか?」と突き詰めて訊いていくことで、人生の目標を明らかにしてみると、「それ、巨万の富がなくても実現できますよね」という話に落ち着くことが少なくありません。

たとえば、世界一周旅行が目標なのであれば、せいぜい100万円ほどあれば実現できるよねといった具合にです。

いきなり「人生で実現したいことは?」と大上段に構えても難しいでしょうから、まずは「最高の一日の過ごし方」をイメージしてみる。次に、そのような生活にはいくら金が必要なのかを計算してみる。あとは、想定される残りの人生分だけ掛け算をすればいい。

たったこれだけのことで、「自分はいくらあれば幸せになれるのか」が明らかになるんです。間違っても「老後破産」などのような言葉に躍らされて、むやみに不安になるなんてことはなくなります。

――たしかに、漠然と「お金持ちになりたい」と目標設定してしまうと、その目標に苦しめられそうです。逆に、「これだけのお金があれば幸せになれる」と定義できれば、必要以上にお金に振り回されずにすむんでしょうね。

高田:漠然と「お金持ちになりたい」と思っている人ほど、「何か勉強しなきゃ」と慌てて株の勉強を始めたりします。でもくどいようですが、そういうことをする前に、自分の価値観を明らかにすることが大事なんです。

長岐:まず「自分はどうありたいのか」をはっきりさせた上で、自分に合ったお金との付き合い方を選ぶというのが正しい順番だと思っています。

――ちなみに、本作品は特にどのような読者に手にとってほしいと思われていますか。今、お話をうかがいながら、就職活動中の人などのように、何かしら人生のターニングポイントに立っている人にとって、役に立つ内容なのではと感じたのですが。

高田:まさに、そういう方に読んでいただきたいですね。あとは、婚活中の方にもうってつけだと思います。

昨今の婚活事情について関係者に話を聞いてみると、男性は「40歳以下の女性を」と言い、女性は「年収300万円以上の男性を」と言っていることが分かる。つまり、互いに見た目や年収などのスペックだけでパートナーを選ぼうとしているんです。

でも、「価値観の違い」が原因で離婚するカップルのなんと多いことか。要するに、結婚生活において大事なのは、スペックよりも価値観だということだと思うんですよ。

――そこでいう価値観のなかには、当然、お金に対する価値観も含まれるわけですね。

高田:その通りです。たとえば、お金を貯めたい人と使いたい人が結婚したら、その先にはかなり辛い結婚生活が待っているでしょう。

だからこそ、マネバナを使って自分の価値観をはっきりさせた上で婚活に臨み、「この人だったら価値観が合うかも」という人と一緒になってもらいたい。こうした考えが婚活市場に浸透するだけで、かなりの数の離婚を回避できるのではと考えています。

――いまのようなお話をうかがっていると、すでに結婚した若いカップルがどのようにマネバナを活用しているのかも知りたくなります。

高田:旦那様は銀行マンで結構な高給取り、奥様もファイナンシャルプランナーの資格を持っていて不定期ながらかなりの稼ぎを得ているという夫婦の例を話しましょう。

旦那様はかなり忙しく、朝の6時には家を出て、帰宅時間は22、23時という毎日。1日12時間労働はざらという感じ。ちなみに、「夫婦の夢は?」と尋ねてみたところ、「ハネムーン以来のアフリカ縦断旅行をしたい」とのことでした。

この夫婦は、すでに貯金が3000万円ほどあったのですが、それでも「もっとお金を貯めなきゃ」という思いが強すぎて、働きまくっていた。そこであるときにマネバナをして、「もう一度アフリカへ行くためには何が必要だと思いますか?」という問いかけをしたんです。

――その結果、どういう話に行き着いたんでしょうか?

高田:「お金を稼ぐことよりも、夫婦の時間を作ることが大事だ」という話になりました。そこからさらに、「夫婦の時間を作れるような働き方って?」「自分たちの生活に最低限必要な額は?」と、次々に夫婦で話し合うべきテーマも出てきましたね。

このケースから言えるのは、マネバナによって夫婦のコミュニケーション量が明らかに増えているということ。当然、夫婦ともに日々の行動に納得感や充実感も感じやすくなります。このプロセス自体に幸福感を感じることができるというわけです。

――最後になりますが、読者の皆様へメッセージをお願いします。

高田:「自分はお金がないから何もできない」といったような、お金に縛られるあまり不自由になってしまっている人にこそ、マネバナを使って少しでもポジティブになってもらえたら嬉しいですね。

長岐:お金との関わり方を考えるにあたって、つくづく大事だなと思うのが「順番」です。まずはお金で解決できる部分をはっきりさせて解決してしまえばいい。

そのためにも、まずは本書を使って、「お金についての自問自答」をしていただき、きっかけをつかんでいただけたらと思っています。

(了)