ガンバ大阪が苦境に陥っている。14試合を消化し、1勝4分9敗。目下5連敗中で最下位に沈む。西の雄は巻き返せるのか。サッカーライターの下薗昌記氏に見解をうかがった。

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「圧倒的に支配するサッカー。攻守において」

 今季開幕前の2月上旬、宇佐美貴史はダニエル・ポヤトス監督とともに作り上げる新たなスタイルについて、こう言い切っていた。

 昨シーズンの堅守をベースに辛うじてJ1残留を果たした松田浩前監督(短期間での守備構築は見事の一言だった)のもとで作り上げたスタイルとは180度異なり、ボールを握るのに主眼を置くのがポヤトス監督の方向性だ。

「自分自身は支配するスタイルが好き。そのためにはボールを持つ、そうすることで試合をコントロールする感触を得られる」(ポヤトス監督)

 しかし、14試合を終えて、昇格組の横浜FCの後塵を拝し、最下位に低迷するばかりか、得点数はリーグワースト3位、失点数もワースト2位で「支配する」という言葉と無縁の数字だけが残されている。

 あくまでも降格枠が1つという今季のレギュレーションが大前提ではあるが、G大阪が残留争いから抜け出すのはまだ、可能だと考える。

 来季以降、優勝争いをするには選手の質、量ともに更なる上積みが必要であるのは言うまでもないが、例え降格枠が昨季と同様であっても、少なくとも残留争いに身を投じる選手の顔ぶれではないはずだ。
 
 ピッチ内での結果だけでなく、筆者が重視するのは日々の囲み取材における指揮官の発言内容だ。この先、指揮を執っても未来はない、と早々に感じさせたかつてのセホーン氏(その実態は呂比須ワグナー監督だったが)やレヴィー・クルピ氏に感じた絶望感は、今のところ、ポヤトス監督に感じることはない。

 通訳を挟むこともあって、毎回、30分近くに及ぶ試合前の囲み取材には論理性も感じるし、G大阪を成長させたいというパシオン(スペイン語で情熱)にもみなぎっている。

 実際、ピッチ内でも2点のビハインドを追いついた第5節・札幌戦(2−2)の2得点は、ポヤトス監督が目ざすスペースを意識した再現性のある崩しを見せるなど、近年のG大阪になかったゴールが生まれているのも事実である。

 ただ、スペイン人指揮官に問題がない訳ではない。

 かつてG大阪で最初の黄金期を作り上げた西野朗監督(当時)は、チームのスタイルを問われるたびに「キャスティング」というキーワードを口にした。

 アンカーを配置する4−3−3を基本布陣に据えるポヤトス監督ではあるが、14試合を終えて、未だにチームの理想の顔ぶれが見えてこないのだ。

 日本の伝統的な遊びである「福笑い」さながら、輪郭は定まっているものの目・鼻・口をああでもない、こうでもない、と模索しているのが今のG大阪のように見える。
 
 とりわけ定まらないのがウイングの顔ぶれだ。ルヴァンカップの京都戦で敗れ、公式戦6連敗となったG大阪だが、この間の得点はわずかに2。4試合で無得点に終わっており、リーグ戦14試合を終えて見えてきたのは、イッサム・ジェバリは確かに上手いが点取り屋としては「怖くない」選手であるということだ。

 ポヤトス監督はジェバリのスタイルを自身にとっての理想の9番タイプだと言い切るが、ウイングやインテリオール(インサイドハーフ)がより決定的な仕事をこなせない限り、得点力不足に悩み続けることになりそうだ。

 そして「キャスティング」という意味で、指揮官がシビアな判断を迫られるのが宇佐美の処遇である。

 1対1のドローに終わった第9節・横浜FC戦は先制ゴールを含めて、後半だけでポストやバー直撃弾3本を放った宇佐美だが、インテリオールとしてはやはり、プレーの強度や運動量に課題を残すのは事実。宇佐美の起用法について、ポヤトス監督に尋ねた際、指揮官は「ボールを持った時の彼の違いは素晴らしい。それを助けて彼自身が心地よくプレーできるように助けていきたい」と話した。

 ただ、宇佐美のためにチームがあるわけではなく、チームのために宇佐美が存在するのは大原則のはずだ。
 
 それぞれの指揮官には日々の取材で口癖のように飛び出すキーワードがある。ポヤトス監督もシーズン序盤は「プロセソ(過程)」を口にし、長期的なチーム作りに目を向けていたが、新潟戦を2日後に控えた取材では、あくまでも結果にこだわる姿勢を口にした。

 第15節の新潟と第16節の福岡は、それぞれ異なるスタイルを持つチームではあるが、5連敗目を喫した難敵の横浜と異なり、昇格組と3年前までJ2を主戦場としていた相手である。この2チームに対し、結果が伴わないようだと、ポヤトス体制の先行きが危うくなりかねない。

取材・文●下薗昌記(サッカーライター)

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