[J1第15節] 川崎2−0柏/5月28日/等々力陸上競技場

 リーグ戦で連敗し、中日(5月24日)のルヴァンカップ・浦和戦では痛恨の逆転負け。リーグ3連勝の後、公式戦3連敗で迎えたホームでの柏戦は、それでも、自慢のボール回しと、献身的なプレーを示し、川崎が自信を取り戻しそうな勝利を掴んだ。

 仕切り直しの一戦へ「質、イメージの共有。そこが重要だと改めて認識した」という鬼木達監督は、それを実現できるメンバーを送り出した。スタメンの平均年齢は30,09歳、7人のベンチメンバーを含めた18人の平均年齢も30,33歳という経験豊富な顔ぶれだ。

 中でもゴールという結果を残してチームを引っ張ったのが、これまで数々のタイトル獲得に貢献してきた生え抜きのCF小林悠と左SB登里享平である。

 小林は21分に深い位置での相手のコントロールミスを見逃さずにボールを奪うと、そのまま持ち運んで先制点をマーク。そして登里は前半アディショナルタイムに、脇坂泰斗との連係で右サイドから切り込むと、右足で見事なミドルを突き刺してみせた。

 試合後の指揮官にふたりの活躍ぶりを尋ねれば、称賛の言葉を惜しまない。

「このタイミングと言いますか、負ければ(リーグ)3連敗ですし、そういうところで、言葉に出してはないですが、このチームがそう簡単に負けちゃいけないだとか、やっぱりそういう気持ちがあったと思います。

(ふたりは)そういう姿勢を出してくれた。それはプレーもそうですし、声の部分でも。試合に出ていくタイミングでの彼らの声がけを含めて、非常にポジティブであり、強気な声がけがあったので、そういうものがいろんな人に波及して、みんな強気にできたのかなと感じます。その意味でも非常に重要でしたね。プラスでゴールまで取っているので、結果で示してくれました」
 
 柔和な表情でミックスゾーンに現われた小林も「気持ちはかなり入っていましたし。ピッチに入る前からみんなすごく良い声が出ていたので、本当にサッカーは気持ちだと感じたような試合でした。前半からアグレッシブに、前からプレッシャーをかけられましたし、試合を通して前から行って蹴らせてマイボールにすることができていたので、すごく良い守備から良い攻撃をできたと思います」と手応えを語る。

 一方で小林は「スタメンを見てもらっても、だいぶ年齢層が高いなと(笑)」と笑顔を見せる。それでも苦戦が続くなかで、価値のある一勝だったと話す。

「それ(スタメン)は恐らくオニさんのメッセージと言いますか、自分たちがここまで作り上げてきたという選手たちでしっかり結果を残す。それがチームの競争につながると考えてこのメンバーにしたと感じます。

 試合後も、来週、このスタメンとは限らないので、競争していこうと話していたので、これを良いきっかけに、良い競争につなげられれば理想です。若い選手たちが僕らのプレーを見て、もっとやらなくちゃという想いになってくれればチームの競争は高まっていくはずです。その意味でも、すごく価値のある勝利だったかなと感じます」

 登里も「なかなかフロンターレらしさ、アグレッシブさを出せていなかったので、開き直って、みんながチームのために走ること、気持ちを全面に出して戦うこと」を意識したと語り、「やっぱりフロンターレは強くなくちゃいけないと思う」と気持ちを新たにした。

 奇しくもこの日はイベントで、鄭大世(2006〜2010年在籍)、田中裕介(2011〜2014年在籍)、武岡優斗(2014〜2018年在籍)、小宮山尊信(2010〜2016年在籍)、田中パウロ淳一(2012〜2013年在籍)らOBたちが集結。さらに昨季までのキャプテンで、現在はカタールで戦う谷口彰悟も来場した。

「試合前ロッカールームに戻る前に彰悟を含めたOB選手とハイタッチして、勝つところを見せたいなという想いが芽生えました。先輩たちのパワーをもらいました」と小林も目を細める。

 まさに川崎の歴史を知る者たちの想いが結実した勝利とも言えたのだろう。

 一方で柏戦では、状態は不明も、今季、大卒3年目で新キャプテンに就任したMF橘田健人、谷口から5番を受け継いだ大卒2年目のDF佐々木旭、大卒ルーキーの山田新ら期待のタレントたちがベンチメンバーからも外れた。

 指揮官は「またここからもうひとつ上げていきたいですし、人も増やしていきたいなと思います」と意気込む。

 柏戦では左ウイングで先発した23歳のFW宮代大聖が良いパフォーマンスを見せ「左の大聖も僕はすごくやりやすくて、もっとつながれば、もっと良くなると思います。今日は楽しみながらやれましたし、改善点ももちろんありますが、チャンスを多く作れたので、これを継続して形にしていけば、良いサッカーができるんじゃないかな」と小林もポジティブな言葉を残している。

 次戦(6月3日)は敵地で首位・神戸との大一番を迎える。今度は先輩たちの背中から学んだ伸び盛りの選手たちが奮闘できるか。どんなメンバーが組み込まれるのか注目だ。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)


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