「俺も居るぞ!!!」
 
 強烈な『自己主張』が感じられる一発だった。U-16アジア選手権・グループステージ第2戦のキルギス戦。スタメン出場を果たしたFW棚橋尭士は、持ち前の貪欲なゴールへの意識を前面に出して、みたびキルギスゴールのネットを揺らしてみせた。
 
「他のFWの選手たちが結果を出しているので、出番が来たら、絶対に決める気持ちが強かった」
 
 初戦のベトナム戦、棚橋は最後までベンチだった。悔しくなかったはずはない。先発したFW登録の山田寛人、宮代大聖、久保建英がそれぞれゴールを決め、中村敬斗も2アシストをマークして存在感を示すなか、彼はチームメイトの活躍ぶりを見つめながら、自らの決意に変えていた。
 
 棚橋が固く誓った決意。それは絶対に結果を出すこと。チャンスは必ず来る。目の前の結果に一喜一憂すること無く、チャンスの時を逃さぬように自らを磨き続ける。それはまさしく彼自身が日ごろ置かれている立場にも重なる。
 
「僕は他の選手より所属チームでの出場機会が少ない分、こっちに懸ける想いは強いですし、日本代表としてやっているので、そこは誇りを持って、ゴールを決める義務があると思います」
 
 横浜FMユースに所属する棚橋だが、Aチームが戦うプレミアリーグEASTには絡めていない。多くの代表のチームメイトが1年生ながらレギュラーを掴んでいるなかで、彼はその位置まで到達出来ずにいた。
 
 だからこそ、自分が代表に残るためには、自らを律しながら磨き続けなければいけない。そして何よりその状況でも代表に選んでくれた森山佳郎監督の想いに応えないといけない。インドに来てからもゴールに向かう貪欲さに磨きをかけ続けた。
 
 この姿勢が森山監督にも伝わり、キルギス戦の前日に彼はレギュラー組でプレーをした。そして、キルギス戦に向けてこう決意を固めていた。
「順調にいっていない時こそ、ゴールの欲求が増すので、例え試合に出られなくても、それを悪く捉えないで、常にゴールを目指し続けることでいいプレーが出来る。周りの期待を背負っているのは感じているので、それに応えるためにゴールを決めます」
 
 宣言通り、棚橋はゴールを決めた。奪った3つのゴールのなかでも、とりわけ価値のあるゴールとなったのは先制点である。
 
 前半、棚橋のゴールが生まれるまで、チームはキルギスを相手に苦しんでいた。それでもDF陣の踏ん張りでなんとか無失点で凌ぐと、34分、「いつ失点してもおかしくないという状況だったので、貪欲にボールを奪いに行こうと思った」と語ったように、左サイドで相手DFにプレスを仕掛けてクリアボールを奪い取ると、角度の無い位置から、GKのニアを破る強烈な一撃でゴールをこじ開けた。
 
 このゴールで重苦しい雰囲気を一蹴した日本は、その後もゴールを積み重ね、棚橋自身も57分にシュートを突き刺すと、80分には自らの突破から得たPKをきっちりと決めて、ハットトリックを達成。8-0の勝利に大きく貢献した。
 
「ゴールを決めることで自分の調子が上がって来る。決めると気持ちがいいし、(その感覚が)好きですし、そういうところは他のFWに負けていないところなので、ゴールを貪欲に狙っていきたい」
 
 強烈な自己主張を見せた貪欲なゴールハンターは、その意欲と決意をさらに磨き上げて、まだまだチームに還元していくつもりだ。
 
取材・文:安藤隆人(サッカージャーナリスト)