[J2第32節]横浜FC2-0京都/9月18日/ニッパツ

「お前のせいで疲れたよ!」
 
「疲れた? でも、楽しかったでしょ?(笑)」
 
 プレーオフ進出圏内を争う大一番の裏で、懐かしの再会が実現していた。
 
 横浜FCのボランチ佐藤謙介と、京都のFWエスクデロ競飛王。ふたりは浦和下部組織出身の同期で、お互いを知り尽くす“心友”だ。エスクデロは2005年に16歳でトップチームに昇格。対する佐藤は中央大に進学した後、11年に横浜FC入りしたが、エスクデロが海外(韓国、中国)へ移籍したこともあり、ふたりがピッチで相見えることはなかった。
 
 エスクデロがJリーグに復帰し、同じJ2の舞台に立った今季も、5月28日の15節では佐藤が出場停止で対戦はお預け。さらに約4か月を経て、ついにサッカーの神様は邂逅の場を与えたのだった。
 
 FWとボランチ。2トップの一角に入ったエスクデロがボールを受けようと中盤まで下がるため、ふたりがマッチアップしかける場面は何度かあった。しかし、横浜FCは佐藤とボランチコンビを組む中里崇宏が対エスクデロの“防波堤役”となり、佐藤はウィークサイドのケアをしながらカバーに回る。それゆえ、球際で直接激しいバトルが展開される回数は限られた。
 
 それでも、身長171センチのエスクデロが持ち味のダイナミックなドリブルで、約50メートルの距離を独走したり、DF2枚を弾き飛ばしてゴールに迫れば、佐藤は押し込まれがちなチームを落ち着かせ、巧みにゲームをコントロール。お互いに中心選手として、意地を示し合った。
 
 試合後、佐藤はエスクデロとの対決について、「なんすかね、あの(ゴツい)身体は(笑)。疲れました」と振り返り、次のように続けた。
 
「まあでも、僕はセル(エスクデロ)の特長を知っている。(身振りを交えながら)これくらいスペースを開けてもドリブルして来ないのは分かっていますから。なかなかバチンと(真正面から)当たる場面はなかったですけど、こういう場所で一緒に試合ができて、すごく楽しかったです。良い刺激になりました」
 
 一方のエスクデロも、約11年の月日を噛みしめながら「こういう真剣勝負をやれるのはものすごく幸せなこと。嬉しかったですね」と語る。
 
「やっぱり上手いですよね、謙介は。パスひとつとっても、アルゼンチンで言ったら“サッカーをきれいにする”仕事ができる選手。ごちゃごちゃのところから、誰もいないところにパスを出せる。そういった技術や頭の良さは、ユースの頃からありましたから」
 横浜FCは6位の京都を叩いて勝点差を4に縮め、プレーオフ圏内も狙える位置につける。しかし、佐藤は勝利の喜びに浸るのもほどほどに、「ウチは勝つしかない。上を見るというよりはまず一試合一試合。特に何も考えずに、目の前の試合で勝つことに集中する」と気を引き締める。
 
 逆に京都は、2連敗で尻に火が付きつつある状態となった。PKを外し、チームも敗れたエスクデロは「謙介と6番(中里)の2ボランチのところでやられてしまった部分がある。完敗だし、何も言い訳できない」と現実を受け止め、「負けた悔しさを忘れずにやっていきたい」と前を向く。
 
 帰路に就くチームバスに乗り込む前、ふたりは健闘を称えながら言葉を交わした。その際、ともに勝ち続け、プレーオフに進出することを誓い合ったという。
 
「謙介が言っていたけど、謙介たち(横浜FC)も勝ち続けて、僕らも残り10試合、できるだけ全部勝って、結果的に両チームがプレーオフに行けるようにしたい。また対戦できればいいなと思います」(エスクデロ)
 
「毎年(一緒に)フットサルをやっているので、年末にまた会うと思います。その時に、どっちが良い順位で終われているかという感じですかね」(佐藤)
 
 もし、J1行きを懸けた昇格プレーオフで再び対戦が実現したならば――。佐藤とエスクデロは、お互いに刺激し合いながら、来るべき時に備えて己を磨く。
 
取材・文:小田智史(サッカーダイジェスト編集部)