富山は田舎だと言われるが、なかなか物価が高い。もちろん、美味で名高い店ばかりなのだが、食事に出てもそう安くはない。某日の昼下がり、僕はあるとんかつ屋に入った。
 
 店を切り盛りする老夫婦は、魚津から出てきて48年。当時は出稼ぎのつもりで3年間と思い、富山市にとんかつ屋を構えたらしい。それが、いつの間にか、これだけの年月が経ってしまったそうだ。
 
 僕がお邪魔した時間帯はお昼時。僕が入ってひとり帰り、僕の帰り際、ひとりの客が入って来た。いちげんさんで、飛び込みで入ったが友人から話の分かる良いお母さんがいるよと聞いていたので思い切って行ってみた。
 
 富山市は駅から数分、総曲輪という所に僕好みのアーケード商店街がある。ダイワデパートを中心とするこの街が、僕は気に入っている。
 
 数年前は多くの人で賑わっていたらしい。とんかつ屋もすごい人だったとオヤジさんが言っていた。
 
 今は郊外に大きなショッピングモールが出来て、そっちへ人が流れるようになり、僕が好きな総曲輪という場所も平日は人が少ない。
 
 ここでひとつ、富山の自慢をしてみたい!
 
 富山県は今年行なわれたリオオリンピックで、金メダリストがふたり誕生した。女子柔道の田知本遥さんと女子レスリングの登坂絵莉さんだ。
 
 これは僕らスポーツ関係の仕事をしている人間でなくても、多くの人々が知っているであろう、大変な快挙だ。県民に代表選手がいるだけで騒ぎなのに、金メダリストがふたりも!
 
 とんかつ屋に行った前日は、彼女たちがパレードをしたという。その日休みだった僕にも県庁からふたりがパレードをやると、一報が入った。しかし……。
 
 街にはそんな雰囲気をあまり感じなかったのだ。僕はもっと凄い人出があって街中パニックになる絵を想像していたのだが……。
 
 それなのに僕の周りには意外にパレードがあったことを知っている人が少なかった。もちろん、パレード周辺は賑わっていただろうが、告知が行き届いていなかった面もあったのかもしれない。
 
 富山自慢のあとは富山に注文したい。
 
 富山県はPR下手だ! 富山には素晴らしいモノや素晴らしい人や素晴らしい〇〇が沢山ある(まだ僕の知らないものも沢山)。
 
 それなのに発信、告知の仕方があまり上手くない。もっと上手に分かりやすく見せられるはずが、伝わっていない。有名人で言えば、高倉健さんのように「不器用」なのだ。
 
 僕が富山に来た時の、富山人の印象は真面目、生真面目。それは今も変わらない。しかし、遊びやユーモアに欠ける。その富山人、富山市の富山県の良い所の半分も発信出来ていない。
 
 僕はこっちに住んでいるが、行なわれたパレードの熱気はさほど感じなかった。もちろんテレビではメダルを獲った日から、数日は特集もやっていたのだが。
 
 そんな話に、とんかつ屋でなったのだが、関連して富山の人は余り外食に出ないというのだ。「外で食べるより家で食べた方が安くて美味しい物が食べられると言って出てこないのよ」と言う。
 
 僕が「みんな真面目なので家で食べるんですね」と言うと、「イヤイヤ違うのよ『ケチ』なのよ」と笑っていた。富山人が富山人を分析したのだから、きっと間違っていないのであろう。
 
 富山には今、3つのプロスポーツが存在する。J3のカターレ富山、バスケットはBリーグの富山グラウジーズ、野球は富山GRNサンダーバーズがある。バスケットは昨シーズン、プレーオフ決勝で破れはしたものの2位であった。
 
 しかし、3チームのプロ組織がありながら、街にはそんな雰囲気は薄い。もちろん富山の人は知っているのであろうが……。
 
 そして昨年、東京から北陸新幹線が開通。富山は、東京から2時間余りでアクセスできる場所になった。そんな富山のグルメと言えば、富山湾鮨を筆頭にお酒、多国籍レストランからジャンクフードまで様々にあり、どの店もクオリティは十分だ。
 
 僕も大好きな店がいくつかできた。しかし、やはり周りには十分に伝わっていない。東京から素通りされ金沢に行く人が多いようだ。
 
 金沢は詳しくないが、加賀100万石の時代には、日本で一番大きな街であったらしく、全てに石川県、金沢には差をつけられていると聞いた。富山のひとたちが全国一と胸を張る富山の氷見の寒鰤も、今でこそ全国的な有名ブランドだが先に有名になったのは石川県の能登鰤だとか。PRの面でも差をつけられている……。
 
 しかし僕は、金沢には何となく差をつけられているように見えても、そんな富山が好きでもある。文化レベルはもちろんPRの仕方にも長けている金沢が隣だからこそ、もっと富山が良さを周りに知らせることへの工夫や情熱、本氣度を出していけないのかと思う。
 
 格闘技で言えば青コーナー、挑戦者の姿勢を示せるはずだ。
 
 残念なことに、最近では富山市会議員が9人も辞職した。これはローカル局だけではなく、全国でも大きな話題になり富山のイメージを損なっているのであろう。もちろん悪いことだ。
 
 この時、富山市民の人々は街頭インタビューでこう言っていた。
「選んだ自分たちも悪い」と。
 
 少し前に、東京都でも同じような嫌疑で都知事が辞職したが、その時に「自分たちも悪い」と言った人をテレビで見たことはなかった。富山県民のこういう部分を「お人好し、もっと厳しく批判しなければ」と言う人もいるのだが、富山人のこうした心は、必ず富山をもっと良くすると思える部分でもある。
 
 そんな富山に僕が出来ることはなんであろう? 何も変えられないかもしれない。しかしプロスポーツに関わるひとりとして、なんとかしなければと思う。
 
 人に感動や勇気を与えるエンターテイメントとして富山のシンボルとなり、富山人から尊重される存在にならなくてはいけないと強く感じる。
 
 カターレ富山というクラブが、チームが成長してしっかりとしたプロフェッショナルにならなければならない。プロサッカーが発展し、富山にサッカー文化が認められ、人がもっと自信を持っていくべきだとも思う。
 
 そして僕は、富山のサッカーの発展に少しでも力を発揮していきたい。
 
2016年9月21日
三浦泰年