前半は非常にフラストレーションがたまる展開だった。
 
「アジアのチームは1-0や0-0の時は頑張るけど、3点目くらいが入るとやる気がガタンと落ちる。相手が緩んだ瞬間にやれる(畳み掛けられる)のは分かっているので、それまで頑張らせないといけない」と、森山佳郎監督がアジアの戦いについてこう触れたように、これまでの2試合は先制した後の畳み掛けが上手くいったからこそ、相手の戦意が喪失し、大量得点を奪うことが出来た。だが、オーストラリア戦では開始早々の4分に相手のクリアミスを拾ったFW上月壮一郎が先制点を奪ってからが続かなかった。
 
「これまで試合に出ていなかったメンバーを使う」と明言していた森山監督は、この試合で、FW上月、MF谷本駿介、松本凪生、GK青木心と、今大会初出場選手を起用。さらに過去2戦スタメンではなかったMF瀬畠義成、DF菊地健太、桂陸人もスタメン起用した。
 
 だが、幸先良い先制点の後に、13分、15分、18分、19分と立て続けに迎えた決定機を外すと、徐々にオーストラリアが息を吹き返して来た。すでにグループリーグ敗退が決まっているオーストラリアの立ち上がりは、最悪と言って良かった。上月の先制点もオーストラリアDFによる『プレゼントパス』から生まれた。だからこそ、前半で勝負をつける可能性は大きかったが、自らその可能性を狭めてしまった。
 
 22分にはMFナジャーリン(8番)にカットインからシュートを放たれるが、これはGK青木がしっかりと抑える。35分には左FKからファーサイドでFWロバーツ(9番)をフリーにしてしまう。相手のヘッドミスに助けられたが、ひやりとするシーンだった。
 
「中盤がディフェンスラインに吸収されてしまって、前との距離が空いてしまった。ボランチももっと2人で前後になってもいいからボールを引き出して、横パスを出しながら縦に行かないと。全部縦になってしまった。確かにそれはチャンスになるけど、出して失って、全力で戻らないといけないし、逆に相手が横に揺さぶっている。それは完全にこっちが先に足が止まってしまうパターンだった」(森山監督)
 
 戦況に分の悪さを感じた森山監督は、最終ラインとボランチのポジションを修正。そして、「試合前から決めていた」(森山監督)と、CB瀬古拓歩とDF菅原由勢を交代。菅原をCBに置いた。
 
 森山監督の指示と菅原の投入が事態を好転させた。菅原が正確なコーチングと正確な縦パスでボランチを前に押し上げると、ようやく『畳み掛ける』瞬間が訪れた。
 
 54分、谷本と菊地の連係で左サイドを崩すと、菊地のセンタリングをファーサイドでMF鈴木冬一が素晴らしいトラップで反転。ニアに飛び込んだ宮代へグラウンダーのパスを送ると、宮代がダイレクトで押し込んで、ようやく追加点を奪う。これで勢いに乗った日本は56分に再び左サイドを突破した菊地のクロスを鈴木が落として、最後は瀬畠が押し込んで3-0。一気に試合を決定付けた。
 
 64分には右サイドのタッチライン際でボールを受けた鈴木からのパスを受けた、チーム最年少の松本が、キレのあるドリブルで一気にふたりを交わし、カットインから左足を鋭く一閃。ボールはGKの逆を突いて、ゴール右上隅に突き刺さった。
 
 大量4点のリードを広げた日本は、67分に菊地に代えて、フィールドプレーヤーでは唯一出番の無かったDF作田龍太郎を投入。これでGK大内一生以外は、全員がピッチに立った。
 
 すると今度はGK青木がスーパープレーで魅せる。81分、スルーパスからロバーツに抜け出され、強烈なシュートを撃ち込まれる。これを素早い反応で手に当てると、コースが変わったボールはバーを直撃。上空に跳ね上がって落ちて来たボールを詰めたナジャーリンがヘッドで押し込もうとするが、青木はダッシュでゴールラインまで戻り、ジャンプ一番片手でボールを搔き出した。二度に渡るスーパーセーブで、今大会初失点の最大のピンチを切り抜けた。
 
 守備陣の奮闘に、攻撃陣がさらに応える。82分に谷本のパスを受けた上月がカットインからのシュートを決め5-0。86分には棚橋が鮮やかなドリブルシュートを決め、6−0としてタイムアップとなった。
 
 後半は前半と打って変わって、攻守において選手が躍動し、3試合連続となる大量得点&無失点で締めくくってみせた。
 
「サッカーだからうまく行かない時間があって当たり前。当然それを短くしないといけないのですが、ただ我慢して(失点)ゼロで終わる勝ちは非常に大きい」と森山監督が語ったように、先制点後に畳み掛けないと、一転してピンチに陥るという経験を、最終戦で経験出来たことは大きい。
 
 だが、それを繰り返してはいけない。なぜならば次は世界への懸けた一発勝負が待ち構えているからだ。それは森山監督も十分に承知だ。
「準々決勝で勝たないと何も達成しない。まだ今は何も得ていない。最後の決定戦(準々決勝)で負けたら何も得るものも無いまま、帰らないといけない」
 
 決戦は25日。大混戦のグループBを通過してきたUAEを相手に勝ってこそ、すべてに意味が生まれる。
 
取材・文:安藤隆人(サッカージャーナリスト)

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