守備のマルチロールは今大会、随所に眩い輝きを放っている。初戦のベトナム戦で右サイドバックとしてスタメン出場し、持ち前のバランス感覚を披露すると、第2戦のキルギス戦では右サイドバック、ボランチ、CBと1試合で3つのポジションをハイレベルにこなした。
 
「非常にサッカーIQの高い選手」と森山佳郎監督からも絶大な信頼を受ける背番号7の菅原由勢(すがわら・ゆきなり)は、オーストラリア戦ではスタメンでこそなかったものの、開始4分に先制して以降、なかなかエンジンの掛からない展開のなか、後半開始からCB瀬古歩夢に代わってCBとして投入されると、一気に試合の流れを手繰り寄せる働きを見せた。
 
「コーチの方々と話して、ボランチのポジションが重くなってしまうと、守備はいいのかもしれませんが、攻撃面で行き詰まってしまうので、自分のところ(CB)から押し出そうと途中で見ていて思ったし、それをボランチの選手にも伝えました。ボランチの選手もキツかったと思うけど、やってくれて良かったです」
 
 試合後に笑顔でそう語ったように、前半はピッチの外から冷静に戦況を捉え、ピッチに入ると的確なコーチングとビルドアップで、間延びしていた中盤にリズムをもたらす。徐々に組織としてチームを機能させた。
 
 48分には正確な縦パスからチャンスを演出するなど、攻撃に良いテンポを加えた結果、チームは後半だけで大量5ゴールを奪った。さらに78分には、オーストラリアのFWムラトビッチ(11番)がスルーパスから抜け出すと、菅原は猛然とダッシュで追いかけて、ムラトビッチのシュートを身体でブロック。ピンチを防ぐ守備を見せた。
 
「自分でいろいろとビデオなどで分析すると、あの位置は人ではなくボールに行ってブロックすることが大事。ゴールを守ることが第一なので、それを考えていました」と、冷静にビッグプレーを振り返る彼に、守備のユーティリティプレーヤーという自身の評価について聞いてみると、こんな答えが返ってきた。
 
「ひとつのポジションで、バルセロナのメッシ選手のようにスーパーな選手ならばいいですが、僕は決してスーパーな選手ではなくて、常にチームの勝利のために走って戦うので、その上で監督に『ここで出ろ』と言われたら、どのポジションでも役割をこなすつもりです。それに自分の長所としては攻撃面では積極的に縦パスを入れて、守備面ではゴールを割らせない。球際を戦う。どのポジションにおいてもそれをやることに変わりはないので、『いつでもどのポジションでも僕はやれる』と思っています」
 
 自分自身を理解しているからこそ、与えられたポジションを素直に受け入れ、そこで自分を表現する。なかなかプロでもここまでの考えを持っている選手はいない。
 
「自分のユーティリティさは、プロにもあまりいないと思っています。どうせなら『ユーティリティを極めたい』と思っています」
 
 プロフェッショナルのユーティリティプレーヤーを目指して。菅原由勢はインドの地で持ち前の冷静さを武器に輝きを放ち続ける。
 
取材・文:安藤隆人(サッカージャーナリスト)