「10-0で勝とうと、20-0で勝とうと、準々決勝(=U-17ワールドカップ出場決定戦)に勝つまで達成感はまったくない」
 
 森山佳郎監督の言葉は、選手全員に共通する思いだろう。来年のU-17ワールドカップ出場を懸けたU-16アジア選手権の準々決勝・UAE戦がいよいよ、日本時間の9月25日23時30分にキックオフされる。
 
 グループステージの3試合は準備運動のようなもので、勝つか負けるかで天地の開きが生まれる準々決勝こそが“本番”と言ってしまっても過言ではない。そしてこうした一発勝負では、しばしば「GK」というポジションが勝敗を左右することになる。
 
 U-16日本代表のGKは、モンゴルで行なわれた昨年の1次予選から谷晃生(G大阪ユース)が務めてきた。ただ、今年に入ってからは青木心(JFAアカデミー福島)が大きな成長を見せて、急台頭。守護神の座を巡り、互いの実力を認め合う二人が激しく競い合ってきた。
 
 最終的には谷がポジションを勝ち取って今大会2試合に先発となったが、グループステージの最終戦では青木が先発フル出場して好プレーを披露。「危機感を持ってやらないと、次の試合で出られるかも分からない。(青木)心がいいプレーをしてくれたし、自分もいいプレーを見せなければいけないと思いました」と、谷に大きな刺激をもたらした。
 
 準々決勝の相手となるUAEは、典型的な中東スタイルのチーム。ボールポゼッションを放棄してカウンターに徹し、常に「一発」を狙ってくる。そして、それを実践できるだけの高速アタッカーも有している実に厄介な相手だ。最終ラインを高く保ちたい日本にしてみると、裏のスペースをGKがどこまでカバーできるかがキーポイント。そして、そこにこそ谷のストロングポイントもある。
 
「(ディフェンスラインの)背後のスペースをカバーすることは自分の得意なところなので、90分集中して対応していきたい」
 
 186センチの長身ながら足技にも長じ、前へのスピード感も持つ現代型のGKである谷にとって、最終ライン裏への広範なカバーリングを要求される相手は、むしろ見せ場をくれる相手でもある。UAEの武器である高速カウンターに対し、日本の守護神がコーチングを含めてどこまで対応できるかは試合を分けるキーポイントとなるだろう。
 
 GKの見せ場と言えば、一発勝負特有のPK戦という可能性もある。しかし谷は「PKのことは考えていません。そこに行く前に決着をつける。自分がゼロに抑えてさえいれば、必ず攻撃陣が1点は取ってくれますから」と力を込めた。世界切符を懸けた大一番について「世界を獲るための通過点」と言い切った谷は、「身も心も最高の準備をして、必ず勝つことだけを考える」と、静かに決戦を見据えていた。
 
取材・文:川端暁彦(フリーライター)