「お前はずっとシュート練習してろ、350本くらい」
 
「350本…。そうですね。シュート練習しないと(苦笑)」
 
「コイツ、シュート下手なんですよ」
 
「いや、、、(苦笑)」
 
 9月22日の天皇杯3回戦・徳島戦、プロ初ゴールを挙げた齊藤未月の下には多くの取材陣が集まった。そんな光景を陰で見守っていた曺貴裁監督は、今年5月にプロ契約を結んだばかりの17歳に対し、“愛のムチ”を入れた。まるで、「ここからが勝負だぞ!」と言うかのように――。
 
 齊藤は10歳の時に湘南ベルマーレの門戸を叩き、ジュニア、U-15平塚、ユースとステップアップしてきた。現在のトップチームにおいては、数少ない“メイド・イン・ベルマーレ”の選手である(他には、大先輩の菊池大介、同期の石原広教がそれにあたる)。齊藤の活躍は、彼自身にとどまらず、クラブの将来を考えるうえでも意義があることだと曺監督は語る。
 
「彼は小学生、中学生の頃から湘南にずっといて、湘南のトップチームを真横で見ながらああいう選手になりたいと思ってプロになってきた選手です。その脳裏に焼き付いたものを、自分が表現しなくちゃいけないという気持ちが他の選手より強いのは当たり前だと思います」
 
「チャンスを与えたわけじゃなく、できると思って出すんだからしっかり自信を持ってやれ、と言ったんですけど、非常に堂々とやってくれた。ユースの選手たちもこれを励みにまた頑張ってほしいし、ジュニアユースや小学生の選手にも『ああいうふうになりたい』と思ってやってもらいたいですね」
 
 もっとも、齊藤も初ゴールで満足するはずもない。自身のストロングポイントに挙げる「ボールを奪うことや前に行くところ」は、攻守でアグレッシブにプレーする「湘南スタイル」そのもの。貪欲にゴールを狙い、前からボールを奪いに行く“クラブのアイデンティティ”をもっと体現していきたいとイメージを膨らませる。目指すは「得点の取れるボランチ」だ。
 
「最近、練習試合でも得点を取る機会は増えてきて、それが自分の強みになってきました。公式戦でも結果を出せたのは自信になるし、ボランチ(の選手)が得点を取れたらチームとしても大きい。シュートの精度はもっと高めないといけないですけど、練習からいつも通りにやれば試合にも絡めると思うので、次はJリーグ(リーグ戦)で、チームの勝利のためにゴールを決めたいです」
 
 そんな頼もしい齊藤の背中を追って、ユースからまた新たな原石もやってくるだろう。
 
取材・文:小田智史(サッカーダイジェスト編集部)