[J1第2ステージ13節]大宮 1-1 鳥栖/9月25日/NACK
 
 195センチの巨体が、ボールの行方を確認しつつ少し後ろに飛んだ。必死に伸ばした右腕でゴールマウスへと向かっていたループシュートを弾き出す。時間は試合終了間際の90分。まさにビッグセーブだった。
 
 指先で触ったのではない。きっちりと掌でボールを捉えて、軌道を逸らしている。ギリギリではないスーパープレーはどうやって生まれたのか。家長昭博がDFと入れ替わって抜け出した瞬間に、林彰洋はこう考えていた。
 
「あのシーンは良いポジションに意識して入れた。(谷口博之が身体を寄せに行ったこともあって)サイドという選択肢がなかったから、上を狙ってきたと思う。少しはチームに貢献できたかな」
 
 興奮するでもなく、当たり前かのように淡々と振り返る。一瞬での状況把握、判断、そしてイメージした通りに身体を動かして被決定機を防いだ。まさに“日本屈指”という言葉が似あうプレーだった。
 
 その数分後にも林は躊躇のないプレーでチームを救う。すでに試合時間はアディショナルタイムに突入した、90+2分だった。敵軍ゴール前から、自軍ゴール前まで一気にボールが移動する。
                                                             
 ダッシュする大宮のネイツ・ペチュニクと自身の間に落ちた。次の瞬間、林はキックではなくヘディングでピンチを脱した。
 
「芝目が結構グネグネしていて、ミスキックも多かった。足でチャレンジするにはリスクが高いなと考えたのと、ひとつ前に(藤田)優人がフリーでいるのが見えたので、簡単に渡そうと頭を使った。
 
 欲を言えばあの場面は大きく蹴って大宮の最終ラインの裏につけるのが、相手にとっては一番嫌な状況だったとは思う。でも、今日はそれよりも先にリスク回避を優先した」
 
 状況を考えれば、大宮の大山啓輔がN・ペチュニクを目がけてキックしてからすぐに動き出さなければ、このような対応はできないはず。少しの余裕を生んだのは、やはり状況判断と迷いなきプレー選択だった。
 
 ただ、このような好パフォーマンスを披露し、敵地で獲得した粘り強く耐え忍びながらの勝点1に満足しているかと言えば、決してそうではない。林にとっては、致し方なく見える失点シーンすら大きな反省材料へ変貌するのだ。
 58分、自陣右からのCKに飛び出してボールを外へと弾く。だが、その先に待っていたのは味方ではなかった。鋭いシュートがゴールマウスを襲う。それはセーブした。だが……。
 
 再び、ボールは大宮の選手の足もとに転がり、家長によってついに鳥栖のゴールネットは揺らされてしまった。
 
「(CKの)フィスティング後のセービングで、もうちょっとセーフティなところに弾けていれば相手の攻撃を切ることができた場面だった。もちろん簡単なシュートではなかったが、それが今の課題。
 
 プレーを一旦終わらせる、相手の攻撃から逃れる機会があるのにプレーを切れないことが失点につながっている。そこをしっかりすれば、今まで完封できなかった試合を、運ではなく実力でゼロで終われるようになると思う」
 
 ペナルティエリア外と表現しにくい、ライン上からの強烈なシュート。しかも林は定位置よりも前にいる。その状況では最初の段階で得点を奪われてもしょうがないように思える。それに反応した。
 
 しかし、好守に見えようとも、最終的に失点しては意味のないことなのだ。だからこそ、林からは次々に「こうすれば良かった」「こうしなければならない」という己への注文が溢れ出てくる。
 
 記者の「終盤に決定的なシーンをふたつ防いで、引き分けに貢献したが?」という問いに、「それよりも失点の場面を」と、わざわざ自分からダメ出しを切り出す。
 
 常に先へ、もう一歩前へ――。林にとっては、クリーンシートを達成したとしても、完璧と言ってもいいようなパフォーマンスなど存在しないのかもしれない。日本代表に選ばれる必然を見せつけられた気がした。
 
取材・文:古田土恵介(サッカーダイジェスト編集部)