エースナンバー「10」を背負っているからでもあるだろう。9月のワールドカップ・アジア最終予選で結果を残せなかった香川への風当たりが、以前にも増して強くなっている印象だ。果たして、このテクニシャンをスタメンから外すべきなのか? サッカーダイジェストの代表担当4人がジャッジする。
 
回答1:スタメンから外すべき!
文:小田智史(サッカーダイジェスト編集部)

 低調に終わった9月シリーズの出来が続くようであれば、迷わずベンチに置くべきだろう。
 
 理由は単純明快。香川を?アンタッチャブル?な存在にしてしまうと、健全な競争原理が働かないからだ。最近、知人から「なんで香川は代表だと輝けないの?」と問われる回数が増えた。もちろん、過去に輝いた試合がないわけではないが、エースナンバーを背負う男は、すべての人を納得させるパフォーマンスを見せているだろうか? 少なくとも、今の彼はそうではない。
 
 ハリルホジッチ監督は今年3月のメンバー発表の際、「真司にスタメンの座は約束されていない」というニュアンスの発言をしている。そのスタンスは貫くべきだし、国を背負って戦う代表の舞台では、ネームバリューや実績ではなく、調子の良い選手、結果を残している選手が優先 的に使われるのが必然だ。
 
 対抗馬として名前が挙がる清武は、 「(香川と)ポジションを争っているつもりはない」と話す一方で、「トップ下でどうプレーするか」にはこだわりを見せている。6月のボスニア・ヘルツェゴビナ戦では、故障欠場の香川に代わってトップ下に入り、攻撃を牽引した。9月のUAE戦のように、トップ下とウイングでふた りを同時起用するのも手だが、もっとライバル関係を煽ってもいいはずだ(ウイングは清武ではなく、カットインや裏への抜け出しができる宇佐美や原口がベターだと思う)。
 
 香川は?ボールプレーヤー?であり、ボールに触れることでリズムを掴む。パスが受けにくいトップ下で起用された場合は、それが難しい。もし香川ありきのチーム作りでスタメンにこだわるならば、システムやポジション変更を視野に入れたほうがいい。
 

回答2:スタメンから外すべき!
文:本田健介(サッカーダイジェスト編集部)
 
 スタメンから「外すべき」としたのは、なにも?失格?の烙 印を押すという意味ではない。ただでさえ、対世界となった時に日本は個の力で見劣りするのだから、彼の 非凡な能力を生かさない手はない。
 
 しかし、本人のコンディションが整わないなかで、闇雲にスタメンで起用し続けるのはいかがなものか。提案したいのは?ジョーカー?としての活用法だ。様々な責任を背 負わすのではなく、短時間でゴールを奪うことだけに集中させる。今の日本には切り札と呼べる存在がいないだけに、香川を勝負所まで?取っておく?意味は大きい。
 
 最近の香川は味方や敵が入り乱れる相手ゴール前で窒息しているかのように映るが、 後半途中からであれば十分にスペースを得られるはずだ。相手は日本の10番を警戒してくるだろうし、疲弊している状況で香川がピッチに入ってくるのを目にすれば、それなりのプレッシャーを感じるだろう。
 
 さらに、香川のジョーカー起用で手にできる利点がもうひとつ。それはチーム内の競争を活性化させられる点だ。10月6日のイラク戦のトップ下は、セビージャで評価される清武、タイ戦でゴールを決めた原口、Jリーグで優勝争いを演じる川崎を牽引する中村ら、コンディションの良い選手を使ってみてはどうか。彼らに起用の目処が立てば、選手層に厚みを持たせられる。もし、刺激を受けた香川が途中出場で結果を残せば、失いつつあった自信を取り戻せる可能性だってある。
 
 慎重なハリルホジッチ監督には、相当なギャンブルに思えるかもしれない。しかし、グループ内の最大のライバルであるオーストラリアや難敵サウジアラビアと対戦する前に、試す価値はある。
回答3:スタメンで起用すべき!
文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)
 
 香川と実力的に遜色のない清武をトップ下に起用する手はある。だが、香川ほどのタレントをベ ンチで燻らせるのは得策ではない。
 
 ワールドカップ・アジア最終予選のUAE戦とタイ戦ではゴールもアシストも決められなかったことで、印象を悪くしたのは確かだ。「10番なら決定的な仕事をしろ!」と批判されても致し方ない部分はある。
 
 それでも、いくつか決定機に絡んだ事実は見逃せない。タイ戦でヘッドを外した場面も、GKとの1対1をモノにできなかったシーンも、フィニッシュの前までの動きは悪くなかった。?あそこにいたから?シュートが打てたわけで、その点は多少なりとも評価していいはずだ。かつて内田も、代表の香川についてこう言っていた。「真司の動きを見ている選手が少ない。良いタイミングで飛び出しているのに……。少し可哀想な部分はありますね」と。
 
 むしろ模索すべきは香川を生かす戦い方だ。例えばウイングには本田や宇佐美以上に球離れがいい選手を起用し、「真司くんとは感覚が似ている」清武を香川の近くに置く。ウイングの人選はともかく、インスピレーションが合う香川と清武をインサイドハーフで並べる布陣(4‐1‐4‐1)は試す価値がありそうだ。「ボランチが1枚(例えば山口)で大丈夫?」との懸念はあるだろう。
 
 しかし、2ボランチでも守備が安定していないのが現状だ。ならば、ボランチを減らして攻撃に比重をかけてもいいはずである。いずれにしても、UAE戦とタイ戦で致命的なミスを犯した長谷部にこのまま依存してもいいのか。あのキャプテンシーは大きな魅力だが、今後も代表戦で 同じようなミスが続くなら……。スタメンから外すべきは長谷部だろう。
 

回答4:スタメンで起用すべき!
文:広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)
 
 卓越したスキルと豊富な実績は、日本人選手の中ではトップクラス。「背番号10」が似合う数少ない選手で、ただ巧いだけでなく、有り余るサッカーセンスに裏打ちされ た?魅せるプレー?で観客を楽しませてもくれる。度重なる決定機逸で非難を浴びているようだが、チャンスにさえ絡めない選手よりはましだ。先発から外すほど、不振を極めているとも思えない。
 
 適正は、やはりトップ下だろう。高い攻撃性能は、フィニッシュにもチャンスメイクにも関与できる位置でこそ生きる。プレーするエリアは相手ゴールに近く、密度は濃いが、パスを引き出すため、フリーになれるわずかなスペースを見つけようと、頻繁にポジションを修正する。
 
 このオフ・ザ・ボールの動きに、香川の凄みが凝縮されているのではないだろうか。パスを受けた後のターン、ワンツー、スルーと、多彩なアイデアで真ん中をこじ開ける術も持つ。
 
 相手からすれば自由にやらせたくない位置で、優れたレシーバー役として機能する。脆弱なキープ力を逆手に取った球離れの良さは、「縦への速さ」を重視するハリルジャパンにおいて、攻撃を加速させる要因となる。UAE戦は攻撃が中央に偏りすぎていたことが指摘されていたが、個人的には悪くない傾向だと思う。敵を引きつけられれば、その分、両サイドが空く。その使い分けに問題があっただけだ。
 
 局面が狭くても、打開できる力がある。わずか半歩しか動いていない時もあるが、その微妙なポジショニングを察知して、正確にボールを供給できる味方がいればベストだ。その意味では、川崎のパスサッカーで鍛えられている大島は、有力なパートナー候補だろう。