「パーフェクト10」
 
 9月25日付けのイングランド各紙は、マンチェスター・シティをそう讃えた。前日のプレミアリーグ6節・スウォンジー戦を3-1でモノにし、チャンピオンズ・リーグとリーグカップを含めて、開幕から無傷の公式戦10連勝を記録したのだ。
 
 指揮を執るジョゼップ・グアルディオラは、イングランドのトップリーグ新監督としては開幕連勝の新レコードを更新。次節のトッテナム戦(10月1日)でプレミア開幕7連勝となれば、2009−10シーズンにチェルシーを率いたカルロ・アンチェロッテを抜いて、新監督によるプレミア開幕連勝新記録をも樹立する。
 
 このグアルディオラのマンチェスター・Cには、早くも国内で「無敗優勝」を期待する声が囁かれ始めている。開幕前には100倍だった国内ブックメメーカーによる無敗優勝オッズは、今節を終えて33倍にまで下がっている。
 
 イングランド・サッカー近代史で唯一の無敗優勝者は、26勝12分けの成績を残して「インビンシブルズ(無敵の意)」と呼ばれた03−04シーズンのアーセナル。スウォンジー戦でのマンチェスター・Cには、たしかに先達を想起させる部分があった。
 
 マン・オブ・ザ・マッチを選ぶなら相手FWのフェルナンド・ジョレンテになる一戦は、マンチェスター・Cに土がついていても不思議ではなかった。スウォンジーにはスコアが1−1だったハーフタイム前後に、三度の決定機があったのだ。
 
 ポイントは63分にケビン・デ・ブルイネが奪った、見逃されていても不思議ではないPK。03-04シーズンのアーセナルも、同じく9月のポーツマス戦で訪れた敗北の危機を判定に恵まれたPKで免れている。
 
 その13年前に同点PKを決めたのはティエリ・アンリ。マンチェスター・C勝ち越しのPKを決めたセルヒオ・アグエロはここまで公式戦6試合で11得点と、プレミアで30ゴールを挙げた当時のアンリに匹敵する決定力を誇る。
 
 実力に加えて運にも恵まれるグアルディオラのチームを、アーセナルOBのイアン・ライトは、「今シーズンの彼らなら(無敗優勝も)いけるかもしれない」と言う。
 しかし、無視できないのが守備面の粗だ。ともに攻撃志向のチームだが、無敗優勝時のアーセナルはリーグ戦のうち15試合がクリーンシート(無失点)という堅守を誇っていた。
 
 対する今シーズンのマンチェスター・Cのプレミアにおける無失点は、5節のボーンマス戦(4-0)のみ。元イングランド代表DFのテリー・ブッチャーが「裏を狙われやすい」と指摘する最終ラインは、主将でもあるヴァンサン・コンパニが怪我で出遅れたこともあり(すでに戦列復帰)、空中戦の弱さも目立っている。
 
 件のスウォンジー戦も、相手が弱点を突くためと割り切ってロングボールを増やしていれば、もっとピンチを迎えていただろう。
 
 試合後のグアルディオラは「ラストパスのクオリティーが足りなかった」と攻撃面に触れたが、内心では守備の問題を意識していないはずがない。空陸両用のCBとして、夏にも獲得に動いたレオナルド・ボヌッチに冬の市場で再アタックするという報道もある。もっとも、ユベントスが手放す可能性はほとんどないが……。
 
 プレミアでは次節からトッテナム、エバートン、サウサンプトンと続くが、攻撃志向の上位候補よりも厄介な相手は、その次に控える格下。臆さずダイレクトに攻めるウェスト・ブロムウィッチ・アルビオンとの10月29日のアウェーゲームが、リーグ戦無敗の「インビンシブル0」への次なる大きな関門となりそうだ。
 
文:山中忍
 
【著者プロフィール】
山中忍/1966年生まれ、青山学院大学卒。94年渡欧。イングランドのサッカー文化に魅せられ、ライター&通訳・翻訳家として、プレミアリーグとイングランド代表から下部リーグとユースまで、本場のサッカーシーンを追う。西ロンドン在住で、ファンでもあるチェルシーの事情に明るい。