制空権を握り、相手のキーマンを抑え、さらにはチームを世界に導くゴールを挙げる。UAE戦でのCB瀬古歩夢はまさに大車輪の活躍だった。
 
 大会直前の合宿でCB関川郁万(流経大柏)が負傷離脱し、インドに来てからも第3戦のオーストラリア戦でCB小林友希が負傷離脱。CBの危機的状況の中で、守備の柱として瀬古の存在はとてつもなく大きなものだった。そして、重要な一戦で彼はその柱の幹をさらに太くする経験を積んだ。
 
 警戒すべきはUAEのスピードあるアタッカー陣だった。敵は前線目掛けてロングボールを蹴り込んで来る。競り負けたり、裏を突かれれば一発でピンチを招く緊張感のなか、瀬古はCB菅原由勢とディフェンスラインをコントロールしながら、ロングボールに対してはいち早く落下地点に入り込んでは、高い打点のヘッドで確実に跳ね返した。
 
 そして31分には、「昨日のミーティングで分析していて、あそこでGKがこぼすというのは分かっていた。そこは狙っていました。タイミングよくこぼれて来たので、あとは押し込むだけでした」と、MF久保建英が放った右CKを、相手GKがファンブルすると、こぼれ球にいち早く反応して、ゴールに押し込んだ。
 
「守備陣がゼロに抑えれば絶対に負けないので、僕はそれを頑張るだけ」とCBとしての決意を語っていた通り、試合が進むに連れて、その集中力はさらに研ぎ澄まされていった。
 
 終盤、UAEが長身CBを前線に上げてパワープレーに出ても、試合経過とともにさらに強度を増したディフェンスの柱は動じることなく、自ら挙げた1点を気迫で守り抜いた。
 
「すべてはここで勝つためにやって来た。最後は気持ちでゼロに抑えた。すべてはこのためにやって来たので、すごく嬉しいし、いろんな感情が生まれました」
 
 タイムアップの瞬間、背番号5は喜びを爆発させた。それはゴールの喜びよりも、CBとして自分の責務を果たした喜びの方が大きかった。
 
「準決勝、決勝を勝ってアジアチャンピオンになって、気持ちよくU-17ワールドカップに行きたいです。ここでアジア王者にならないといけないと思いますし、日本の強さを見せつけたい。そしてワールドカップで暴れたい」
 
 まずはU-17ワールドカップ出場権獲得という至上命題はクリアした。だが、これですべてを成し遂げたわけではない。まだ戦いは続いているし、瀬古の意識は『アジアを突破しなければいけない』から、『アジアチャンピオンにならなければいけない』に変わった。
 
 守備の柱はこれからどこまで自らの幹を太くしていくのだろうか。CB不足と言われる日本サッカー界の大きな光となるために、瀬古はさらなる成長への階段を昇っていく。
 
取材・文:安藤隆人(サッカージャーナリスト)