大迫勇也の勢いが止まらない。
 
 第4節シャルケ戦で、実に13か月ぶりとなるブンデスリーガでのゴールを挙げると、次節のRBライプツィヒ戦でも巧みな個人技から2試合連続となる得点をマークしたのだ。
 
 そのどちらも、なかなかお目にかかれないほどのハイレベルなシュート技術から生まれたファインゴールだった。
 
『キッカー』誌が「大迫がついに開花」と見出しを付けて称賛したのをはじめ、ドイツの地元紙はこぞってその活躍ぶりを絶賛。突然の爆発にドイツメディアも驚きを隠せない様子だが、その要因は何なのだろうか。
 
『ビルト』紙では「チームを助けることができて嬉しい。調子が良いし、FWだと自分の良さを出すことができる」という大迫自身のコメントが紹介されていたように、やはりようやくFW起用されることになったのが一番大きな理由だろう。
 
 第2節ウォルフスブルク戦でスタメンに名を連ねると、キレのある動きでしっかりとアピール。続く第3節フライブルク戦ではダイナミックな動きと正確無比な技術からビッテンコートのゴールをアシストすると、前述の2試合連続ゴールと完全に上昇気流に乗っている。
 
 大迫にとって追い風だったのは、チームが2トップシステムを採用し、それが機能している点だ。
 
 監督のペーター・シュテーガーも「彼のポジションを見つけたと言えるだろう。これまでは、他のポジションでプレーすることが多かった。今後はセンターで出場機会を得ることになるだろう」と適正ポジションを見つけたという手応えを口にしている。
 
 本来プレーすべきだったポジションで、しかし、なかなかそこで起用されずにいたポジションで、やっと幸運を見つけることができた。
 
 では、最初から大迫とモデストの2トップを採用しなかったシュテーガー監督の采配ミスということになるのだろうか? いや、システム変更とそれによる大迫の開花は、今だからこそ、はまったという見方が適切ではないだろうか。
 
 ケルンは2014年に1部へ返り咲いたクラブ。当面の目標は、他の昇格クラブ同様に1部残留だ。負けない戦い方が何よりも要求される。
 
 戦力的にも、全員で守ることを主戦略に粘り強く戦い続け、勝点を積み重ねていくという、現実的な戦いをせざるを得ない。5バック+4人の中盤で壁を築き、ほとんどシュートシーンを作り出せない試合でも、イチかバチか勝点3を狙うより、確実に勝点1を得るのが重要だった。
 
 そんなチームでは、前線でボールを収め、少ないチャンスからでも得点を奪うことができるモデストが何よりも重用された。堅守とモデスト。それがケルンの戦い方であり、ある意味、全てだった。
 このようなチーム事情のなかで、大迫にはトップ下や右サイドといった、本職以外のポジションがあてがわれ、それでも彼は何とかしようと懸命なプレーを試みた。
 
 だが、どこでプレーしようとFWの選手にファンが期待するのはゴールだ。ゴールが取れなければ、「期待外れ!」とファンから罵倒されてしまう。本来のポジションで使ってもらえれば……。忸怩たる思いに苛まれたことは、一度や二度ではなかったはずだ。
 
 そんな大迫の思いとケルンのチームとしての成長が、ようやく噛み合う。14年の昇格以来、主力選手をほとんど変えずにチーム作りをしてきた継続性が、確固たるスタイルと連係を生み出したのだ。
 
 守ろうと思えばいつでも守れる強靭な守備ができ上がったからこそ、2トップシステムへの移行がスムーズにいき、攻撃力アップに結び付くこととなった。
 
 さらに大迫個人の動きを見ると、FWにポジションを移したことだけが好調の理由ではない。
 
 これまでは、どれだけスペースに顔を出してパスを要求しても、そこにパスが出てくるシーンが極めて少なかった。何度動き直してもボールが出てこず、パスが来るのは自分の態勢が良くないシーンばかり。リズムを掴めずに試合から消えてしまうことも少なくなかった。
 
 だが、この2年間でチームメイトの特徴も完全にインプットされたようだ。ここ最近は自分の欲しいタイミングだけではなく、チームメイトが出したいタイミングに合わせた動き出しとポジショニングが随所で見られている。腐ることなくトレーニングに取り組んできた何よりの証ではないか。
 
 シュテーガー監督は「選手たちが、ようやく本領を発揮してくれていることを嬉しく思っている。大迫の持つクオリティーが報いられる時が来た。彼には才能があり、上昇気流に乗る時が来ると分かっていた。ここまで、へこたれることなくやってきたからこそだ」と成長ぶりに目を細める。
 
 まだ、5試合が終わっただけ。この2年間の鬱憤を晴らすのはこれからだ。そして、この調子がキープされれば、2ケタ得点も問題なくクリアーできるのではないだろうか。
 
文:中野 吉之伴
 
【著者プロフィール】
なかの・きちのすけ/ドイツ・フライブルク在住の指導者。2009年にドイツ・サッカー連盟公認のA級コーチングライセンス(UEFAのAレベルに相当)を取得。SCフライブルクでの研修を経て、フライブルガーFCでU-16やU-18の監督、FCアウゲンのU-19でヘッドコーチなどを歴任。2016-17シーズンからFCアウゲンのU-15で指揮を執る。1977年7月27日生まれ、秋田県出身。