B.LEAGUE(Bリーグ) 1節
アルバルク東京 80-75 琉球ゴールデンキングス
2016年9月22日/国立代々木競技場 第一体育館

 おったまげた。
 
 9月22日に東京代々木第一体育館で華々しく幕を開けたBリーグ、アルバルク東京対琉球ゴールデンキングスの一戦。その演出は同リーグのスローガンである「BREAK THE BORDER」にふさわしい、観る者の想像を軽く鮮やかに超えた素晴らしいものだった。
 
 史上初のLEDを敷き詰めたコートが話題を集めた。もうひとつ、観客全員にプレゼントされた「フリフラ」の効果もまた衝撃的だった。手首に巻ける発光LEDで、「座席についたら、フリフラを手首にしっかり巻いてスイッチを入れてください」と、係員が呼びかけていた。
 
 この時点では、なるほど、スタンドが青一色で染まる演出をするんだな、と思った。実際、フリフラをはめた観客が座席に着くと、スタンド全体が青く染まる。それだけでも十分美しい光景だった。
 
 試合開始30分前、開幕セレモニーが始まる。そして音楽が鳴り出すと、そのリズムに合わせて、客席のフリフラが様々な色に変わり、スタンドの右から左に光の波が流れたり、数千人単位のブロックごとに赤や緑に点滅したりする。LEDコートと呼応し、スタンド全体が光の海のショーと化したのだ。
 
 スポーツイベントで、この手首に巻くフリフラが扱われたのは史上初。その運用は無線でコントロールされていた。なので、もう少し広い会場になってしまうと統率するのは難しく、代々木第一体育館のサイズと条件を最大限に生かした演出効果と言えた。スポーツとショーを融合させるバスケットボールならではの醍醐味を、まさに常識を超えた形で表現していた。
 
 試合のほうも第4クォーターに琉球のマクヘンリーのダンクシュートで稲妻が走ったかのように会場全体に衝撃が走り、雰囲気が一変。第3クォーターまで10点以上のリードを許していた琉球が、ラスト30秒の時点でアルバルク東京に3点差まで詰め寄るハラハラドキドキの展開となった。最後は総合力で上回るアルバルク東京が意地を見せ、80−75で勝利を収めた。
 
 タイムアウトでプレーが中断した際にも、Tシャツやサインボールのプレゼント、ダンスチームのショーなど趣向を凝らしたイベントが次々と展開された。既成概念など打ち壊していくんだという強い意気込みと、チャレンジ精神に溢れた開幕戦だった。
 
「プロ野球、Jリーグに続く第3のプロリーグとして、追い付き、追い越していきたい」
 
 開幕戦を勝利で飾ったアルバルク東京の竹内譲次は、そのように決意を示した。Jリーグをひとつのモデルとして参考にしながら、挑戦していこうということだ。
 
 一方、JリーグがBリーグから学べることもあると感じた。
 
 単純にJリーグが今回のBリーグのような取り組みをしていくべきだ、とは毛頭思わない。Bリーグ発足の最大の功労者である川淵三郎氏は開幕戦後、自身がチェアマンを務めていた93年のJリーグ開幕時との比較を聞かれると、次のように答えている。
 
「(世界的な)競技の規模、屋外か屋内か、会場の器の大きさ、サッカーとバスケットボールはあらゆる点でまったく異なる。比較することはできない。質問が悪いという意味ではなくて、比べるのはナンセンスだと言える」
 
 それはBリーグ開幕後にも言えることで、おそらく同じ土俵に立って、あれこれ比べるべきではないのだろう。基本的には別ジャンル。そのうえで、プロ同士として、これから、お互いに刺激し合い、切磋琢磨していく関係になるのは間違いない。
 
 Jリーグの村井満チェアマンは、世間のJへの関心が薄れている現状に危機感を抱き、「新規ファン・サポーターの獲得」を訴えて2ステージ制復活など手を打ってきた。しかし、劇的な変化は見せられずにいる。来季からの放映権の大型契約締結という成功を収めた一方、肝心な観客数アップには苦心している。
 
 Jリーグの魅力のひとつとして、サポーターがクラブを育てていくという点が挙げられる。サポーターが主体となって、応援の仕方も方法も基本的には自由。クラブ主導で盛り上げることは、極力最低限に抑えようとしてきた。
 
 一方で、そんなことを言っていたらお客さんなんて来てくれないよと、斬新なイベントを打ち出すクラブも増えつつある。それでもJ1とJ2に所属してきたある地方クラブの広報担当者は、「集客を呼びかけるのはもちろん大切。しかしクラブ側がより前に出すぎてしまうと、結局、固定ファンの獲得にはつながらない。やはりサポーターの皆さんの自主性に委ねるところが大きいと言える」と、ジレンマを抱えていることを明かしていた。
 
 おそらく観客の“心を掴む”ために、Jリーグやクラブ側が仕掛けられる場面は限られる。そのなかで“割と”重要なのが、キックオフ直前の選手紹介と入場のセレモニーではないだろうか。Bリーグが徹底して力を注いでいるところだ。
 
 主役である選手が登場。試合開始の瞬間に向けて、選手も観客もテンションが一度最高に達するこの時間は、スタジアムにいる人の心をひとつにするチャンスでもある。初めて競技場に来た人が、ここで心を震わせられるかどうかは、もしかするとリピーターになるかどうかのポイントなのかもしれない。
 
 駒場スタジアム(現・浦和駒場スタジアム)での選手入場時の紙吹雪に痺れ、それからずっと浦和を応援し続けているサポーターは少なくない(その演出もサポーターの自主性から生まれたものだったが)。浦和市内のとある飲食店の店主は「ぶっちゃけ選手は誰でも好きで、なにより浦和レッズが大好きなんです」と、“サポーター”の気持ちを代弁するように言っていた。
 
 これまで北海道から九州まで、いくつものJリーグクラブの選手入場&入場シーンを見てきた。最新の電光掲示板などを設備しているところは、いろいろな試みをしているように思う。念願の市立吹田サッカースタジアムを手に入れたG大阪サポーターは楽しみながら、試合前の盛り上げ方を模索しているように見える。“伝統”を重んじているところもあれば、数年ごとに変更しているところもある。
 
 なかでも好評を博しているのが、湘南ベルマーレの入場セレモニーだ。観客との一体感を作り出すことにこだわりを見せ、湘南乃風のアップテンポな曲「SHOW TIME」が流れるなか、ゲームの「太鼓の達人」を真似た画像を映し出して拍手をするタイミングを促し、試合開始へのカウントダウンも格好良く面白く演出している(入場シーンの音楽もオリジナルにすればさらに格好良いのに! と個人的には思う)。タレントの平畠啓史さんも『サッカーダイジェスト』誌の連載コラムで絶賛していた。
 
 一方で、その入場シーンを「惰性でやっているな」と感じるところも少なくない。とりあえずJリーグのアンセムを流しておけば“間違いではないだろう”という無難な選択をしているクラブだ。アンセムも格好良いのだが、クラブの個性が感じられなかったりもする。
 
 Bリーグ発足前のbjリーグはそういったセレモニーから盛り上げることに努め、最多4度の王者に輝いた琉球ゴールデンキングスの演出は高い評価を受ける。そして、多くのファン(ブースター)を獲得してきた。
 
 もちろん、なによりも優先されるのは、選手個々がレベルを上げることなのは、言うまでもない。それに屋外なだけに、コンサート会場にも代替される体育館のような演出効果は、難しいと言える。ただ、Bリーグが狙う、試合前からスタンドとコート(ピッチ)を一体化させて、心を掴んでしまおうという“仕掛け”は、Jリーグクラブも見習えるべきところがあると感じた。しかも、Bリーグが取り込もうとしているターゲット層は、Jリーグが思うように獲得できずにいる、10代から30代である。
 
 開幕戦後、琉球のキャプテンを務める岸本隆一は言った。
 
「日本のバスケットボールが、別次元のステージに上がった」
 
 それは、どのあたりで感じたことなのか? そう問われた岸本は少し考えてから一言に集約した。
 
「雰囲気ですね。僕らもこれまでたくさんの応援を受けてやってきたが、『見られている』ということでの不安を初めて抱いたほどだった」
 
 Bリーグは「スター選手の不在が集客のための課題だ」という意見がよく聞かれる。開幕戦を見る限り、そんなことは言われる前から分かっていること。だからこそ、Bリーグはエンターテイメント性で勝負するんだ――と、まず舞台を整え、選手もチームも成長していこうという気概が伝わってきた。
 
「スター不在」はJリーグにも言える。日本代表やワールドカップに出場した選手は確かに大きな注目を集めるので、Bリーグとはまた似て非なる状況と言える。それでもJリーグから有望な若手がヨーロッパへ挑戦していく構図は今後も続く。また、地域密着の理念を掲げているからこそ、全国的なスターが誕生しにくいのはJとBの共通点(世界的な?)に挙げられるだろう。
 
 
 だからこそ、Bリーグ的な発想で、応援するチームが勝っても負けても、来てくれた人に必ずなにかしら“楽しんでもらう”というエンターテイメント性の要素を、Jリーグがもっと積極的に取り入れても良いのかもしれない。「なによりも結果がすべて」「勝利さえ収めればいい」という王道を突き進めるクラブなどごく一握りにしか過ぎないのだから。
 
「たまげた」は、漢字にすると「魂消た」になると知った。魂がぶっ飛んでしまうほど驚くという意味。2016年9月22日、Bリーグの誕生日。その歴史的な1日を目の当たりにして、つい十数年前まで色々な面で革新的だったJリーグの多くのクラブが、すでに保守的になっているという事実にも、ハッと気付かされた。
 
 それは決して悪いことではなく、Jリーグが成熟してきた証なのかもしれない。一方、これからBリーグのクラブは、独自の発想を次々と発信していくに違いない。JとB。それぞれのリーグが触発し合っていくことで、新たな境地を切り開いていける可能性は、十分に感じる。それが、いわゆるスポーツ文化の創生に結びついていくのではないだろうか。
 
 
取材・文:塚越 始(サッカーダイジェスト編集部)