このままいくと本田圭佑にとって今シーズンは、暗いトンネルに入って出口が見えない袋小路のような1年になりそうだ。ミランは試合を重ねるごとに成長を見せているが、そこに本田の入り込む余地はない。
 
 数日前、指揮官のヴィンチェンツォ・モンテッラは、「常に固定した選手だけで戦うつもりはない、そうなったらレギュラー以外の選手を失ってしまうようなものだ」とコメントした。
 
 それでも、これほど大所帯である以上(欧州カップ戦がないにもかかわらずトップチーム登録は28名)、誰かが冷や飯を食わなければいけない。その筆頭としてまず頭に浮かぶ名前がルイス・アドリアーノ、そして本田…。
 
 それは数字からも裏付されている。セリエA6試合を終えた現時点で、本田がピッチに立った時間はたったの18分間。3節・ウディネーゼ戦の11分間、5節・ラツィオ戦の7分間だ。あとの522分間はベンチを温めた。
 
 本田との定位置争いを制して右ウイングに君臨するスソは、開幕直後に比べてここ数試合はトーンダウンしているが、それでもモンテッラは彼を信頼して使い続けている。またスソを引っ込める時も、代わりにピッチに入るのはいつも本田以外の選手だ。
 
 本田がミランで長くベンチを温めたのは、何も今回が初めてではない。シニシャ・ミハイロビッチが指揮を執った昨シーズンも、9〜11月にかけて2か月間もスタメンを外されていた。
 
 とはいえ、そういう状況になる前に本田は、いつもプレータイムを与えられていた(そのチャンスをうまく使うことができなかったが)。しかし今シーズンは、それさえもないのだ。
 
 モンテッラは今夏にミランに招聘されて以来、一貫して本田を「控え選手」として扱ってきた。選手選考や戦術に関して決定権を持つ監督の目に、背番号10はほとんど映っていないのだ。
 
 ただ、モンテッラに非はないだろう。彼は冷静にテクニカルかつ戦術的な判断を下しているに過ぎない。批判されるべきは、クラブ首脳陣だ。プレシーズン中に不穏な空気を感じ取っていた本田と彼の代理人は、クラブに今シーズンの方針に関してお伺いを立てた。「新チームの構想に入っているのか?」と。
 
 すると、マーケティング的にも本田を手放したくないアドリアーノ・ガッリアーニ副会長たちは、「必ずチャンスを与える」と保証。実際は前述した通りだ。その罪は決して小さくない。
 そんな中、数日前にスペインからあるニュースが飛び込んできた。「今夏に本田がバルセロナに自らを売り込んでいた」という衝撃の内容だった。
 
 その真偽を探るべく、私はアリエド・ブライダにコンタクトを取って話を聞いた。今年で70歳を迎えたブライダは、元プロ選手で、1986年からミランのスタッフに。ゼネラルディレクターやスポーツディレクターなどを歴任し、長きに渡ってガッリアーニ副会長の右腕を務めた。
 
 現在はバルサのスポーツディレクター(国際部門担当)を務める彼は、スペイン発の噂を肯定した。
 
「この夏、本田の代理人が我々にコンタクトしてきたのは事実だ。彼らはバルサが本田に興味を持っているか、バルサに本田の居場所はあるかを尋ねてきた」
 
 私が驚くと、間髪入れずにブライダはこう続けた。
 
「我々はこの申し出について話し合った。答はすぐに導き出された。先方には、このオペレーションは不可能です、と返事をしたよ」
 
 その理由を私が問いただすと、彼はキッパリとこう言い放った。
 
「本田はマーケティング面において影響力のある選手だから、まるで興味がないというわけではなかった。しかし、バルサではテクニカル的な戦略をすべて最終的に監督が決定する。その意向は絶対だ」
 
 つまり、バルサのルイス・エンリケ監督が本田獲得に「NO」を出し、両者の接触は本格的な交渉に発展しないまま短期間のうちに終わったのだ。
 
 ちなみに、このブライドと本田は、紙一重ですれ違った。前者は2013年の年末にミランのSDを辞めて、後者は2014年の年頭にミランに入団したからだ。
 
 とはいえ、ブライダは世界のサッカーを熟知しており、本田の長所と短所をよく知っていた。彼はミランの10番をこう分析する。
 
「本田はもう若くはないし(現在30歳)、年齢を重ねてスピードも落ちてきた。しかし、頭のいい選手であり、テクニックとキックは評価できる。私は彼が良い選手だと思うよ。それと、極めて高いプロ意識を、個人的にはとても高く買っている。カルチャトーレ(サッカー選手の意)にとって、規律を守ることは基本中の基本だし、自分のことよりも先にチームのことを考えられるかは大切なことだ。そんな本田が、いつもピッチの外にいるのを見るのはとても残念だ。彼自身も今のミランでなら主役を張れると思っていただろう」
 では、なぜ本田はミランでベンチに追いやられることが多いのか? この点に関して私は何度もこのコラムで触れてきたが、ブライダはその理由を次のように見ているようだ。
 
「本田には“爆発的なパワー”がない。それが彼をベンチに追いやっている何よりの原因だ。スソやニアングのような、一気に敵陣を突破するプレーが彼のレパートリーにないんだ。現代のビッグクラブで主力を張るには、ボールテクニックだけでは不十分。高い身体能力も持ち合わせていなければならない。テクニックだけで、スピードもパワーもなければ、ミランのようなクラブで苦労するのは当然だ。もちろん、その正確な素晴らしい左足のキックが、時に彼を救っているのも事実だがね」
 
 ミランでベンチを温めるうえ、来年6月には契約満了迎えるため、本田は早ければ次の冬、遅くとも夏にはチームを去るだろう。現在はプレミアリーグ、MLS、オーストラリアなどのクラブが興味を示していると言われている。
 
 しかしブライダは、新天地についてこんな自論を展開してくれた。
 
「イングランドのいくつかのチームからオファーを受けたと新聞で読んだこともあるが、プレミアリーグのサッカーは本田にまるで合わないだろう。それならテクニカルなサッカーを愛するスペインのほうがいいし、ブラジルも悪くないかもしれない。ブラジルには日系人も多いから、きっと上手くいくはずだ」

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 文:マルコ・パソット(ガゼッタ・デッロ・スポルト紙)
翻訳:利根川晶子

【著者プロフィール】
Marco PASOTTO(マルコ・パソット)/1972年2月20日、トリノ生まれ。95年から『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙で執筆活動を始める。2002年から8年間ウディネーゼを追い、10年より番記者としてミランに密着。ミランとともにある人生を送っている。