発熱によって戦列を離れていた男が、準々決勝から戦いの場に戻って来た。
 
 C大阪U-18のFW山田寛人は、高さを生かしたプレーと裏への抜け出しを得意とするストライカーだ。タイミングのいいギャップへの飛び込みと、抜群の加速力で一気に抜け出してゴールを陥れる。
 
「身長(180センチ)もあって、スピードもちょっとあるという特徴を、どんどん伸ばしていきたいです。どんどん背後を狙いたいし、もうちょっと足下で受けた時にすぐにシュートを打ったり、パスを出せるようにしたい。他のFWはそういうタイプが多いので、人の武器をどんどん盗んで行きたいです」
 
 自分の特性をよく理解しているということは、当然足りないものも理解できているということ。足下の技術が高いFWが揃っている今回のメンバーでは、中村敬斗、宮代大聖、久保建英の技術は傑出しており、棚橋尭士は動き出しと駆け引きの質が非常に高い。
 
 その中で、自分はどう存在感を出していくべきか。そして、将来のことを考えても、長所に頼るばかりではいけない。山田は現状と将来を見つめ、積極的にライバルたちのプレーも分析し、自分のパフォーマンスに落とし込むことを意識してきた。
 
 こうした姿勢が森山佳郎監督にも高く評価された。それは怪我明けながらも、今回のメンバーに入ったことはもちろん、準々決勝・UAE戦でも現われた。
 
 オーストラリア戦前日練習と試合当日を体調不良で離脱し、UAE戦前に復帰する形となった。一度離脱してからの試合起用は、コンディションや試合勘も含め、慎重にならなければいけない。ましてや対象試合がU-17ワールドカップ出場が懸かった一発勝負の準々決勝であれば、より慎重を期する必要があったはずだ。
 
 だが、背番号18を背負うストライカーはスタメンではないものの、1−0で迎えた66分、中村に代わって投入された。この時、チームは劣勢を強いられていた。先制してから追加点を奪えず、徐々にUAEのカウンターの脅威に晒されていた。難しい状況での投入だったが、山田は高いパフォーマンスを披露した。
 
「森山監督から入る時に『一発狙ってこい!』と言われたので、自分が得意とする背後への抜け出しでシュートチャンスを狙った」と語ったように、山田は投入直後、前線からの猛プレスでDFからボールを奪い、そのままGKと1対1に。これはシュートがミートせずに枠をそれたが、UAEの反撃の勢いを削ぐには十分なプレーだった。
 
 このプレーで攻撃のリズムを取り戻した日本は、山田がさらに決定機を演出。追加点には至らなかったが、間違いなく1-0の勝利のキーファクターになった。
 
「準々決勝はグループステージと雰囲気がまったく違って、みんな緊張していた。絶対に勝たないといけない試合で、途中から入って、しかも1-0という厳しいスコア。自分はどうすべきか考えました。最初の決定機を決められなかったのは悔しいですが、試合の入りは凄く良かったと思います」
 
 だが、これですべて満足しているわけではない。
「他のFWに比べて僕はまだ1点と、得点も少ないですし、出場時間も少ないので負けていられません。なので、準決勝、決勝ではゴールを貪欲に狙って行きたい。自分が決めてアジア王者になりたいです」
 
 まだまだ自分には、成し遂げなければいけない使命がある。ストライカーたる者、ゴールという結果で貢献しなければいけない。山田寛人にホッとしている時間はない。より貪欲に、より魂を込めて。アジアチャンピオンという高みを目指して、ゴールを追い求める。
 
取材・文:安藤隆人(サッカージャーナリスト)