ロシア・ワールドカップアジア最終予選のイラク戦、オーストラリア戦に向けたメンバーが発表されたけど、予想通りで、いつもと変わらない顔ぶれだった。すでに指揮官の頭のなかではメンバーは固まっていて、怪我人が出ない限り入れ替えを行なわないんだろうね。ハリルホジッチ監督は会見で、選出理由を語っていたけど、メンバーを変えにくいというのが正直な感想なんだと思う。
 
 ただ、香川に関しては「ドルトムントで熾烈なレギュラー争いをしている」と説明していたけど、今季は新戦力が加わったとはいえ、昨季と同じチームで出場機会を失っているのは問題だよ。それは香川自身のレベルが昨年より落ちていると言えるのかもしれない。
 
 その点は本田も同じ。監督が変わった点は考慮しなくちゃいけないけど、彼だって昨季はある程度の出場機会を掴んでいたのに、今季はベンチが定位置になっている。ふたりともコンディションが整わないなかで代表に合流するんだから、起用法は考えるべきだよ。
 
 黒星スタートとなったUAE戦や続くタイ戦の時も僕は指摘したけど、代表にはコンディションの良い選手を選ぶべきなんだ。
 
 会見ではガンバの長沢、ケルンの大迫らの名前が挙がったけど、Jリーグには大宮で10ゴールを挙げている家長や川崎を牽引する(中村)憲剛、浦和の前線で奮闘している李忠成らがいる。彼らを呼ばないのは、もとからハリルホジッチ監督の頭にメンバーを変えるという選択肢がないということを示しているよ。
 
 僕は大半の海外組とJリーガーに、大きな力の差はないと考えている。実際に今年6月にC大阪に復帰した山口はJ2で試合には出続けているけど、スーパーな活躍をしているわけではない。ただ、海外組を優先する流れは今後も変わらないんだろうね。
 
 新戦力としては鹿島の永木を呼んだけど、彼を起用するかも疑問だよ。GKの川島にはピッチ外でチームメイトを励ます役割を求めているようだけど、発言力や精神的支柱を求めるならカズ(三浦知良)のほうが効果的なんじゃないかな。
 
 それにしても最終予選の初戦で敗れ、周囲からの風当たりが強くなったことで、ハリルホジッチ監督は相当にナーバスになっているようだ。今回の発表会見ではいつもと変わらずに約1時間半の“ハリル劇場”を披露したわけだけど、記者の質問を強く否定する場面があるなど、精神的に追い詰められている印象を受けたよ。
 
 確かにホームでのイラク戦に敗れれば、続くアウェーでのオーストラリア戦では勝利が必須になる。オーストラリアは最終予選でここまで2連勝。新戦力がしっかり存在感を示しており、パワーアップしている印象で今の日本代表が勝てるかは疑問だね。
 
 先日のタイ戦に続いて、ハリルホジッチ監督は周囲の厳しい視線にさらされながらゲームを進めなくちゃいけないし、イラク戦にしてもオーストラリア戦にしても先に点を奪われれば、相当に苦しいはず。
 
 先日、日本サッカー協会は、リオ五輪でU-23代表を指揮した手倉森監督のA代表のコーチへの復帰を発表した。これはスペアタイヤを積んでいなかった車にスペアタイヤを付けたということだよ。「アジアをよく知っている」など、コーチ就任の理由は様々あるようだけど、不測の事態に備えて後釜を用意したということなんじゃないかな。
 
 ただ、手倉森“監督”はリオ五輪はグループリーグで敗退に終わったわけで、後釜候補の人選として疑問が残るよ。
 
 
 ただ、日本代表の現状をハリルホジッチ監督ひとりのせいにするのも如何なものかとも思う。本当は彼も日本のメディアの好みを分かっているのかもしれないね。
 
 実際に本田、香川が試合に出場してくれたほうが、メディアは喜ぶわけだし、お客さんだって勝敗にかかわらず、スター選手が目の前に来ればアイドルを見たかのように拍手を送る。
 
 今度のイラク戦だって、埼玉スタジアムは満員になるんじゃないかな。でもそれはコンサートのような側面が強いよ。メンバー構成だって興行的な面が加味されているんじゃないかと邪推をしたくなってしまう。
 
 本来、日本サッカーのことを考えれば、メディアは選手の出来をもっとシビアに判定するべきなんだ。本田と香川のプレーが悪ければ、もっと批判すれば良い。「ハリルホジッチ監督を更迭すべき」という記事を載せ、「本田や香川を外せ」と糾弾するのがメディアの仕事だよ。
 
 ハリルホジッチ監督は海外組を重用しているけど、僕はハッキリと「時差ぼけの海外組より国内組のほうが機能する」と言いたい。そういうことをメディアがもっと発信すれば良いんだ。
 
 思い出してほしい。これまで日本がワールドカップに出場できたのは、開催国であったり、アジアの出場枠が増えた恩恵を得られていたから。ドーハの悲劇を経験したアメリカ・ワールドカップの最終予選は結局、全体の3位になって出場を逃したんだ。
 
 今はふたつのグループに分かれてそれぞれの2位でも出場できる。ましてグループ内で3位になってもプレーオフに回り、ワールドカップの切符を獲得できるチャンスがある。多くの人は日本はワールドカップに出られて当然と考えているようだけど、それは枠が増えたからだと今一度胸に刻むべきだね。
 
 日本が最近アジアで負けることが増えてきたのは、他国のレベルが上がったからだと思われがちだけど、日本のレベルが下がったという考えをする人はなぜか少ない。ただ、4年前のブラジル・ワールドカップの最終予選とメンバーがまったく変わっておらず、選手はその分、歳を取っている。なのに主軸たちに代わる人材が出て来ていない。危機的状況に近づいていることを強く感じるべきなんだ。
 
 若手の突き上げという意味では、先日、U-16日本代表がインドで行なわれているアジア選手権で、U-17ワールドカップの出場を決めた。喜ばしい話だけど、ちょっと待ってほしい。そもそも本来U-17ワールドカップというのは出なきゃいけない大会なんだ。
 
 今回だって開催国のインドを含めれば、5か国がチケットを手に入れられる。こんな好条件で出場できなかった過去が問題なんだ。重要なのはその先。世界大会でなにができるかということ。それを忘れてしまうのが、日本の問題点だと思う。ワールドカップに出場できて良かった、五輪に出られて満足……。そうじゃないでしょ。世界のライバルとの戦いのなかで自分たちの力を示し、勝ち上がっていくことが大切なんだ。
 
 この間のリオ五輪だってグループリーグ敗退に終わったけど、それを批判する空気は薄かったよ。よく戦ったという声さえあったけど、今の日本代表でリオ五輪世代の選手は主軸になれているの? 今回のメンバーには浅野、大島、植田らが入ったけど、欠かせないメンバーではないよね。すでに世界では若手とは言えない彼らが本田、香川らの牙城を崩せないのは、日本サッカーの将来を不安にするだけだよ。
 
 以前にも話したけど、僕が代表の監督だったら同じ川崎で大島と(中村)憲剛を天秤にかけたら憲剛を選ぶよ。大島は良い選手だけど、劣る部分はある。それが現実なんだ。
 
 来月のイラク戦、オーストラリア戦で気になるのはしっかりチャンスを仕留められるか。ハリルホジッチ監督はボールを奪うことを強く意識させているけど、そのあと、ゴールまでの道筋がよく見えないんだ。
 
 UAE戦、タイ戦だって長い時間ボールを保持しながら、2試合でたったの3ゴールしか奪えなかった。UAEやタイの実力を考えればもっと点を取れたよね。決定力の問題なら、リーグ戦で好調の小林を起用してみても面白いと思う。ただ、本田、宇佐美らがいるなかで出場できる可能性は低いだろうね。
 
 まあいずれにせよ、選手だけでなく、メディア、サポーターを含めて現状に危機感を抱きながら、イラク戦に全力で臨むしかない。
 
 まずは、日本が強いという錯覚を捨てて戦うこと。それがワールドカップ出場へ近づく道だと思う。ぜひ、日本サッカー界が抱えるマンネリを打破してほしいね。
 
 来年はUAE、イラク(中立地としてイランでの開催が予定される)、サウジアラビアとアウェーで戦う。その点を考えてもホームでのイラク戦は絶対に落とせない。選手たちには意地を見せてほしいよ。