第2戦のタイ戦で勝利を収めたとはいえ、最終予選の初戦ではUAEにホームで敗れ、その手腕に疑問を抱かせた。識者4人の評価は? ここまでの指揮官を採点してもらい、続投か解任かを問うた。
 
●後藤健生(サッカージャーナリスト)
Q1:指揮官の採点は? A1:30点
Q2:続投派か、解任派か? A:当面は「続投派」
 
「高い位置でボールを奪って速く攻める」。ハリルホジッチ監督の哲学は間違いではない。だが、コンディションの悪い時にそんなサッカーを90分続けるのは不可能だ。有事の際にどうするのかというプランBが用意されていないことが、UAE戦で暴露されてしまった。
 
 ただ、プランA自体も怪しいものだ。「高い位置で奪う」ために、どのタイミングで、どの位置でプレシャーを掛けるのか。そういう具体的なプランが、監督就任から1年半を経過しても見えてこない。
 
 指揮官は日本人の「デュエル」 の弱さを盛んに指摘する。しかし、 問題点を指摘するのはメディアの役割で、監督の仕事は問題点を修正・改善すること。相手にアプローチする角度やタイミングの意識の共有で多少は改善されるはずだ。また、「デュエル」が弱いからこそグループでの守備を徹底させるべきだが、そうした修正もない。
 
 つまり、ハリルホジッチ監督は2億円以上と言われる高額な年俸に見合った仕事をしているとはとても言い難いのだ。
 
 それでも、現時点での監督交代はリスクが大きい。日本代表の戦力を考えれば、今のままでも予選突破は十分に可能なのだから、リスクを冒す必要はない。ただ、後任探しは(隠密裏に)開始しておくべきだ。そしていざという時にそのカードを切ればいい。
●浅田真樹 (スポーツライター)
Q1:指揮官の採点は? A1:60点
Q2:続投派か、解任派か? A2:「続投派」
 
 現在の日本代表で最も気掛かりなのは、なかなか世代交代が進まないこと。相変わらず岡崎や本田、吉田ら北京五輪世代がチームの中心にどっかりと居座る。宇佐美や清武といったロンドン五輪世代がいくらか勢力を拡大したものの、存在感という点では前者に見劣る。 リオ五輪世代の底上げも極めて限定的で、仮に最終予選を突破できたとしても、2年後、さらには6年後を考えると、見通しは暗い。
 
 ただし、若手の人材不足はハリルホジッチ監督の責任ではない。日本代表は現在、かなり危うい状況にあるとは思うが、そのすべてを指揮官に擦り付けるのは筋違い。よって、監督を代える必要はない。
 
 ただし、ここまでのハリルホジッチ監督のチーム作りを見ていて気になることがある。それは、日本の長所を生かすことよりも、短所を直すことばかりに目が向いている点。コンプレックスが強すぎるのだ。
 
「デュエル」や「縦へのスピード」など、日本人選手に足りない部分は、確かにたくさんある。あくまで初期段階の意識づけとして、短所を強調するのはいい。だが、話がそれに終始してしまい、結果、ピッチ上で行なわれるサッカーは単調になりがちだ。しかも、 修正できそうな気配もない。
 
 また、いざ最終予選が始まってみると、選手起用には疑問も多く、アジア特有の条件(長距離移動や気候)への配慮も乏しいように感じる。現状では、及第点という意味合いで60点としたが、採点は時間の経過とともに下降傾向にある。
●熊崎 敬(スポーツライター)
Q1:指揮官の採点は? A1:50点
Q2:続投派か、解任派か? A2:「解任派」
 
 ハリルホジッチ監督が迷走気味だ。重圧の掛かる最終予選の初戦で抜擢した大島がミスを犯したように、采配でチームを助けるどころか、逆に追い込んでしまった。また、就任時に掲げた「縦に速いサッカー」も確立できていない。Jリーグでの監督経験がないこともあり、日本とアジアの把握に苦労している印象を受ける。
 
 最も気になるのは、強い指導力を発揮できていないこと。それは「縦に速い」の障壁でもある香川と本田を一切代えない、保守的な采配に表われている。これでは「自分たちのサッカー」に溺れ、惨敗したブラジル・ワールドカップの二の舞になるかもしれない。
 
 もちろんこれは、監督だけの問題ではない。育成が機能していないことも、中心選手をアンタッチャブルにしてしまった原因だ。
 
 最終予選は混戦になりそうだが、 もうホームでの敗戦は許されない。 仮に次のイラク戦で勝点を落とせば、解任もやむなし。手を打つなら早いに越したことはない。
 
 では、次期監督は誰が適任なのか。ここで浮上するのが、FC東京に続いて鳥栖を躍進させたフィッカデンティ監督。日本を知り、課題であるポジショニングの指導に長けていることはアドバンテージになるのではないだろうか。
 
 最終予選で監督の資質が議論されるのは、ドイツ・ワールドカップのジーコ以来。だが、最終予選を首位通過しながら本番で惨敗した2014年を思えば、躓くことは決して悪いことばかりでないと思う。
●二宮寿朗 (スポーツライター)
Q1:指揮官の採点は? A1:60点
Q2:続投派か、解任派か? A2:「続投派」
 
 微妙な判定があろうとも、最終予選の初戦、ホームのUAE戦で負けた責任は重い。ただ、浅野を先発で抜擢し、原口、山口の起用も当たったタイ戦はプラス材料。土壇場に追い込まれながら勝負に出て、結果を残した采配は光ったし、浅野の先発起用もヒット。そこにはリアリストらしいハリルホ ジッチ監督の姿勢が見え隠れする。
 
 指揮官はメンバー発表会見でこう述べている。
 
「リオ五輪後、浅野は日本に帰ってきた。一体誰が日本に帰ってこいと言ったのかは知らないが、『休め』と言われたそうだ。私も直接ヴェンゲルに電話して『なぜ日本で15日も20日も休まないといけないのか』と話した。彼が日本に残らざるを得なかったので、私たちが環境を整えてトレーニングをみっちりやらせた」
 
 その数日間は、代表コーチが個人練習に付き添い、ハリルホジッチ監督も自ら出向いて指示を送った。指揮官の管理下で最終予選に向けて準備させたことで、浅野の良好なコンディションを把握できていいたはず。コンディションが掴みにくい他の欧州組より信頼が置けると判断したからこそ、裏のスペースがなくてもUAE戦で途中起用したのだと言える。
 
 タイ戦の好パフォーマンスを考えれば、日本で調整させた指揮官の機転はファインプレー。決定力の問題は相変わらずだが、中と外を使い分けながらスピーディにゴールに迫った攻撃と、カウンターの芽を潰す出足の速い守備は、今後に期待を持たせるものだった。

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