もし、柴崎岳の怪我がなかったら?
 もし、遠藤康が長期離脱をしていなかったら?
 
 永木亮太の“運命”は変わっていたかもしれない。しかし、訪れたチャンスに、28歳のボランチは見事に応えてみせた。それは紛れもない事実だ。
 
 第2ステージ8節の福岡戦を迎える前、鹿島は厳しい状況にあった。それまでリーグ戦では3連敗。福岡戦の4日前のスルガ銀行チャンピオンシップでは0-1の敗戦を喫し、“公式戦4連敗”と泥沼にハマっていた。
 
 しかも、7節の仙台戦では遠藤、スルガ銀行チャンピオンシップでは柴崎が負傷。中盤のキーマンふたりを欠く状況で、福岡戦に挑まなければならなかった。
 
 残留争いに苦しむ相手に、第1ステージ覇者が負けるわけにはいかない。この重要な一戦で、柴崎の代役としてボランチで先発したのが永木だった。
 
 今季、湘南から鹿島に新天地を求めた永木は、第1ステージでは主に途中出場からクローザー役として奮闘。第2ステージに入り、スタメンで起用される頻度は高まるも、レギュラーに定着したわけではなかった。
 
 ただ、この福岡戦が、永木にとってひとつのターニングポイントになったのは間違いない。チームは赤?秀平と鈴木優磨のゴールで2-1と久々の勝利を収める。フル出場した永木のパフォーマンスについては、「6.5」と採点された弊社Webサイトでの寸評を引用したい。
 
「小笠原との役割分担も問題なし。中盤を自由に動いてボールをさばき、試合の主導権を握る活躍を見せた」
 
 続く湘南戦でも先発に名を連ねた永木は、古巣相手に及第点の働きを見せ、1-0の勝利に貢献。少なくない怪我人を抱えながらも、連勝を飾り、負のスパイラルから抜け出したチームにおいて、永木の存在感は抜群だった。
 
 柴崎のスタメン復帰以降は、2-2で引き分けた10節・横浜戦では途中出場し、小笠原に代わって先発した11節・柏戦は0-2で完敗と、永木本人からすると難しい状況が続く。
 
 掴みかけた良い流れを再び、取り戻すきっかけとなったのが、12節・磐田戦だ。この試合、鹿島の石井正忠監督は、4-4-2のシステムにマイナーチェンジを施す。怪我で長期離脱中の遠藤の定位置である右MFに、柴崎をコンバート。当然、空いたボランチには永木が入り、攻守にフル稼働して、3-0の完勝へと導いてみせた。

【日本代表PHOTO】イラク戦、豪州戦に向けたメンバー26人
 フィジカルの強さを武器に、中盤で高いキープ力を見せていた永木は、この磐田戦でJ1通算100試合出場を達成した。
 
 自身のメモリアルゲームを勝利で飾った5日後、天皇杯3回戦の岡山戦でも、右MF=柴崎、ボランチ=永木という役割分担は変わらず。そして、0-1で迎えた60分、左サイドからボールを持ち運ぶと、ペナルティエリアの外から右足を強振。強烈なミドルシュートを突き刺してみせる。
 
 最終的には、相手のオウンゴールもあり、逆転勝ちを収めたこの試合を、日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督が視察していた。価値ある同点弾は「相手に当たってコースが変わり、ラッキーだった」(永木)が、これ以上ないアピールとなった。
 
 13節・新潟戦でも中盤の構成に変更はなく、チームも2-0と危なげなく勝点3を積み上げる。10月シリーズに向け、代表のメンバー選考が本格化するタイミングで、永木はピッチに立ち、持てる能力をいかんなく発揮していた。
 
 そして9月29日、ハリルホジッチ監督が選んだ26人のリストに、初めて永木が入った。豊富な運動量を武器にピッチを縦横無尽に走り回り、素早く攻守を切り替え、球際に激しく行く“デュエル”も問題ない。躍動感に溢れるそのプレースタイルは、指揮官好みと言えよう。
 
 守備的ボランチの序列では、長谷部誠、山口蛍に次ぐ三番手だが、上り詰めていく成功体験がある。閉塞感が漂う今の代表を活性化させるような躍進を期待したい。
 
取材・文:広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)