第2ステージ13節、ホームで鹿島に良いところなく0−2で敗れた新潟は、今季17敗目を喫した。4連敗は2度目で年間15位、16位・名古屋との差はついに1まで狭まった。
 
 この緊急事態に鹿島戦翌日、クラブの田村貢社長と吉田達磨監督が会談。その結果、クラブにとって2012年以来、2度目となるシーズン途中の監督交代となった。事実上の解任で、今季から指揮を執る吉田監督とともに、北嶋秀朗コーチ、安田好隆コーチの退任も合わせて発表された。
 
 このクラブの決断を選手たちも重く受け止めている。
 
「こうなったのは達磨さんだけのせいではない。自分たちが監督の求めるサッカーに応えきれず、申し訳ない気持ちでいっぱい。もっと達磨さんを勝たせて、良いシーズンにしたかった」(鈴木武蔵)
 
「今季はずっと結果が出ない状況で、チームに変化が必要だということでこの決断になったと思う。そこまで行ってしまったことが悔しい」(成岡翔)
 
 昨季、柏を率いた吉田前監督のもと、チームは今季ポゼッション重視の戦いに大きく舵を切った。それにともなって、大きく変化したのが守備だ。前からプレッシャーを掛け、高い位置でボールを奪って速さを活かす従来の良さを残しつつ、プレスをはがされた際に素早く帰陣し、組織をオーガナイズする守備の構築が進められた。
 
 だがシーズン終盤の正念場に差し掛かったところで、大野和成、舞行龍ジェームズというレギュラーCBが次いで負傷離脱。代わりに期限付き移籍から復帰したJ1での経験が浅い増田繁人、西村竜馬を起用し、守備時には5バックにシフトする急造3バックで乗り切ろうとしたものの、オーガナイズの歯車が再び噛み合うことはなかった。
 
 なにより、攻撃のスイッチになっていた従来のボールを奪いに行く出足が、最後は完全に鈍ってしまっていた。
 
 シーズン残り4試合という土壇場で、チームの指揮権を託されたのが片渕浩一郎コーチだ。体制刷新ではなく、内部昇格による軌道修正。クラブが意図する状況打破の道筋を読み取ることができるだろう。
 吉田監督、北嶋コーチ、安田コーチらとともに、今季からトップのコーチを務めてきた片渕新監督は、2002年、当時J2だった新潟で1シーズン、プレーしたFWだ。
 
 その後、新潟ユース(現U-18)のコーチを経て、監督として選手の育成に尽力。その教え子には今季のトップチームに名を連ねる大野、西村、早川史哉、平松宗(水戸に期限付き移籍中)のほか、日本代表にまで成長した酒井高徳(現HSV)もいる。
 
 新たにスタッフを招聘し、外からの風を吹き込もうとする動きもある。06年途中から13年まで新潟でプレーした、内田潤スクールコーチの昇格である。
 
 最終節の大逆転で残留した12年シーズンは、左ひざの大怪我で実質、プレーできなかったものの、精神的支柱であり続けた内田新コーチについて、就任会見で片渕監督も「厳しい戦いを経験し、新潟のDNAがある」と厚い信頼を寄せる。
 
 就任会見で片渕新監督が強調したのは、「新潟らしいアグレッシブさ」だ。ゴールを目指し、ボールを奪うために。チームのベクトルは、より前へと向けられている。
 
 同時に、吉田前監督のもとでコーチングスタッフを務めた片渕新監督は、「これまでの自分たちが間違っているとは思っていない。結果を出せていない、その悔しさがある」と、新潟らしさと今季の積み重ねの融合を目指す。
 
 指揮官に就任した練習初日。最後に片渕監督はキャプテンの小林裕紀、副キャプテンのレオ・シルバを呼び寄せ、率直に「俺に力を貸してほしい。ひとりでは、この状況は乗り越えられない」と話し掛けた(もうひとりの副キャプテンの大野は、右膝の怪我でリハビリ中)。
 
 これを受けて小林は「こういう状況を作ったことに、自分を含め、選手はみな責任を感じている」としつつ、次のように語った。
 
「決まったことに、僕らがいちいち言うことはない。僕らはグラウンドで結果を出すことが仕事。僕らにはやらなきゃいけないことがある。そこに向かって100パーセント仕事をする。そして義務を果たしたい」(小林)
 初陣である磐田戦を明日に控えた30日の非公開練習後には、記者陣に対して「戦いのベクトルを合わせる、良いトレーニングが1週間できた。試合が始まれば、裕紀とレオを中心に、ピッチの中で解決してくれるはず。それを自分は、極力冷静に見守れれば」と心境を語った。
 
 新監督にチームのタクトを託されたL・シルバも心理状態は前向きだ。
 
「試合は心理戦。勝利するには、ポジティブに状況をとらえなければならない。選手がネガティブだと、プレーも結果もそうなる。次の試合は、ことさらポジティブにプレーしなければならない。結果につながれば、雰囲気は一気に盛り上がる」
 
 準備期間はわずかだが、進むべき道を踏み外さないようすべてを尽くしながら、再スタートは切られた。

文:大中祐二