最終予選が始まって、まだ2試合しか消化していない。だが、イラク、オーストラリアと対戦する10月シリーズのメンバー発表会見で、「この2試合で、UAE戦と同じ結果になった場合、監督はきちっとケジメを取っていただけますか?」という質問が出るほど、ハリルジャパンにはすでに懐疑的な目が向けられている。
 
「笑えない質問ですね」とハリルホジッチ監督は気色ばんだ。その余裕のなさが、現状を物語っているとも言える。
 
 初戦のUAEには1-2の逆転負け。続くタイ戦では2-0と勝利したが、盤石の強さで勝点3を奪ったわけではない。1-0で迎えた70分、一瞬の隙を突かれてGK西川が1対1のピンチを迎える。西川のファインセーブで事なきを得たが、これを決められていれば、試合を振り出しに戻して勢いづいたホームのタイに逆転される可能性もあった。
 
 過去5大会のアジア最終予選で3敗以上したチームは、本選に辿り着いていない。そう考えれば、まだ1敗で安全圏内にはいる。しかし、あと1敗すれば、いよいよ崖っぷちだ。
 
 ロシア行きを阻むかもしれない運命の“1敗”が、10月6日のイラク戦に訪れたとしたら――「笑えない質問」どころの騒ぎではなくなる。大事なホームで2連敗を喫した指揮官に、5日後のオーストラリア戦を任せたいと思う人間がどれだけいるか。たとえ引き分けでも状況は同じだろう。解任論が本格化しても不思議ではない。
 
 今から19年前の97年秋、初のワールドカップ出場を目指し、日本代表はアジア最終予選を戦っていた。ホームでの初戦ウズベキスタン戦は6-3と好発進も、続くアウェーUAE戦は0-0のスコアレスドロー、9日後のホーム韓国戦では1-2の逆転負けを喰らう。
 
 3試合を終えて1勝1分1敗。指揮官の進退が取り沙汰されて迎えたアウェーのカザフスタン戦。秋田豊のゴールで幸先良く先制するも、ロスタイムに痛恨の失点。格下と目されていたカザフスタンを相手に不覚を取ってしまった。
 
 1週間後には、アウェーのウズベキスタン戦が控えている。協会の決断は迅速だった。カザフスタン戦当日、宿泊先のホテルで緊急会見が行なわれ、チームを率いていた加茂周監督の更迭と、岡田武史コーチの昇格が発表された。10月4日の夜だった。

【日本代表PHOTO】イラク戦、豪州戦に向けたメンバー26人
 当時とは最終予選の試合数も、勝敗も、対戦相手も、スケジュールも、アジアにおける日本の位置付けも違っている。それだけに、単純に比較することはできないが、代表チームを取り巻く“空気感”は似ている気がする。
 
 今はまだ嵐の前の静けさか。たとえイラクに勝ったところで、オーストラリア戦の結果次第では、「負けた時は、私を批判してください」と宣言しているハリルホジッチ監督は、いかなる行動に出るのか。自ら身を引くこともあり得るのか。
 
 有事に備えて、協会も準備を進めているはずだ。イラクに敗れ、監督交代に踏み切った場合、選択肢は限られているだろう。
 
 歴史は繰り返されるのか。冒頭の質問に対し、ハリルホジッチ監督は「勝つべき試合で負けてしまいましたが、日本代表だけの責任だったのかなという気もします」と、誤審でゴールが取り消されたUAE戦に言及し、次のように結んだ。
 
「みなさんが、私の他に違う監督を連れてきたいのであれば、また別の話ですけど、まだまだやるべきことはありますから」
 
 イラク戦が「Xデー」にならないよう、周囲の雑音を吹き飛ばす勝利を期待したい。
 
取材・文:広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)