森山佳郎監督率いるU-16日本代表のアジアの戦いは準決勝で幕を閉じた。
 
 準決勝のイラク戦、日本はFW山田寛人の2ゴールで一度は逆転に成功するも、セットプレーの崩れから同点に追いつかれ、終盤に立て続けにPKを献上し、2−4で敗れた。
 
 悔しい敗戦。キャプテンマークを巻いたMF福岡慎平は、ボランチでコンビを組む平川怜とともに00ジャパンの攻守の要として、この試合も存在感を発揮した。だが、結果が出たこれまでの4試合と違って、アジアの厳しさをまざまざと味わう結果となった。
 
 それでも、今大会で背番号10を背負うキャプテンが見せたプレー、練習やピッチ内での立ち振る舞いは、間違いなくU-17ワールドカップ出場権獲得の原動力となった。彼にキャプテンマークが渡されたのは、プレーの正確性と信頼を集める人間性に起因していた。
 
「あいつはすべてを懸けて闘ってくれる選手」と森山監督が語るように、福岡は00ジャパンの生命線として重視されてきた『闘う』ということをいつでも表現してくれる貴重な存在だ。それでいて技術レベルが高く、パスセンス、前への飛び出しのスピードとタイミング、球際の強さと、セントラルMFに必要な要素を持っている。だからこそ、森山監督は福岡にを全幅の信頼を寄せてキャプテンに任命したのだった。
 
 そして彼はインドの地でその期待に見事に応えてみせた。初戦のベトナム戦で2ゴールを叩き出すと、キルギス戦でもボランチでMF喜田陽とのコンビを滞りなくこなした。
 
 森山監督が「『これは勝てる』という確信が生まれた」と振り返った、準々決勝・UAE戦の前日練習では、降りしきる雨の中、率先して声を出し、ゴールを使った3対2では、執念のスライディングタックルを披露するなど、プレーでも周りの選手を鼓舞し続けた。この気迫をUAE戦でもフルに発揮。平川とともに攻撃のリズムを作り、かつ守備面では絶妙なチャレンジ&カバーを披露した。
 
 特に綻びが出つつあった左サイドのケアを献身的にこなし、常に平川の位置を確認しながら、積極的な守備と素早い帰陣を繰り返したことで、相手のカウンターを未然に防いだ。
「UAEは足も速いですし、セカンドボールが重要になってくるので、ボランチでしっかり潰せるようにしたい」
 
 ヒヤリとするシーンはあったが、彼の頭脳的かつ献身的なプレーがなければ、ピンチに陥るシーンはさらにあったはず。それほど、彼の存在感は際立っていた。
 
 それだけに準決勝は、チームを束ねるキャプテンにとっては、悔しさ以外の何物でもなかったはずだ。福岡は大会中、「ミーティングなどでチーム一丸とならないといけません。みんなが僕らを応援してくれていることは分かっているので、そこはみんなに伝えて、後はそれぞれが個人で自分の部屋で考えてもらって、やるしかないと思っています」と語っていた。責任感が強く、周りを見ることが出来る選手。故に敗戦の責任をより強く感じている選手でもある。
 
 チームをアジアチャンピオンに導くことはできなかったが、キャプテンの重責を担い、世界大会の出場権獲得という重圧と戦った経験は、間違いなく大きな財産となったに違いない。悔しさや責任感が自立を生み出し、少年を大人にする――。福岡慎平はインドの地で濃厚な時間を過ごした。
 同じように、いや今回以上に濃厚な時間が、来年のU-17ワールドカップでも待っているだろう。
 
取材・文:安藤隆人(サッカージャーナリスト)