[J1・第2ステージ13節]
浦和レッズ 4-0 ガンバ大阪
2016年10月1日/埼玉スタジアム2002
 
 
 開始5分過ぎ、浦和が鮮やかな先制点を決めた。この値千金の一撃は、11人全員が連動して生まれたもの。ひとりでも欠けていたら生まれなかったと言っても過言ではなかった。まさにチーム一丸で奪ったゴール――会心のコンビネーションだった。
 
「なにより先制点がほしかった。みんながボールをつないでくれて、最後、僕が決める形になったけれど、チーム全員で奪った本当に良いゴールだったと思う。日ごろ、練習している成果を出すことができた」
 
 シュートを突き刺した高木俊幸は、試合後のヒーローインタビューでそのように先制点について語った。GK西川周作からセンターフォーワードの興梠慎三まで、11人全員がそれぞれの役割をこなし、全員の力を結集させて奪い切った価値ある得点。改めて詳しく振り返ってみたい。
 
 4分10秒、G大阪陣内での藤春宏輝のスローインで、プレーが再開される。長沢駿を経由したハイボールがアデミウソンに飛ぶと、遠藤航が強烈なジャンプヘッドで競り勝つ。こぼれたボールを阿部がキープし、長沢のプレスを回避し西川にバックパスを送る。
 
 ここから浦和が改めて、ビルドアップを開始。西川→槙野→西川→柏木→阿部→柏木→西川と、自陣まで下がってきたボランチふたりとGKの3人でパスをつないで相手の出方を探る。
 
 スローインから30秒が経過。ここで西川が前線にフィードを放って、試合を動かす。
 
 藤春がヘッドで弾いたクリアボールを、井手口が大森に落とす。そこへ右ストッパーの森脇が猛烈な勢いでプレスをかける。
 
  慌てて大森が蹴り出したロングボールに、今度は槙野が素早く反応。中央にポジションをとった宇賀神とワンツーをかわし、左サイドを駆け上がる。
 
 そして槙野からパスを受けた高木が、ドリブルで中央にボールを持ち込む。4分50秒、このあと得点を決める高木はまだハーフライン付近にいて、ビルドアップに参加していたのだ。
 
 すると高木から、ギャップを突いて上がっていた森脇を経由し、右サイドに開いた駒井へパスがわたる(高木は左サイドへ抜けてDFの視界から消え、ゴール前へ駆け込む)。
 
 5分5秒、G大阪ゴール前まで迫り、ここで一気に浦和の攻撃のスピードが加速する。
 
 駒井から中央の柏木へパスが放たれる。あとはすべてワンタッチのダイレクプレーが続く。
 
 柏木からのスルーパスが、敵陣のペナルティエリア内にいた井手口と藤春の間をすり抜け、すでに縦に走り出していた武藤雄樹に渡る。武藤はゴールラインぎりぎりのところで身体を投げ出し中央へクロスを折り返す。

 ゴール正面に飛び込んだのは、CF興梠だ。しかし興梠はシュートを打たず、丹羽と井手口を引き寄せて、後方へスルー――。
 
 そして5分10秒、興梠の背後に駆け込んでいた高木がノーマークになって右足のサイドで合わせる。完璧にG大阪陣内を攻略。ボールはオ・ジェソクのブロックをかいくぐりゴールネットに突き刺さった。
 
 スローインでの再開からちょうど1分、森脇が右サイドの駒井に展開して、攻撃のスイッチを入れてからは、わずか5秒で決まった。 

 全員のオフ・ザ・ボールの動きの質も高く、特に前線の武藤と興梠はG大阪守備陣の“嫌がる”ところに常に顔を出してマークを引っ張り出し、相手を困惑させていた。一方、守備面では「駒井選手が好調だったので、どんどん生かそうと思った」という遠藤がやや右寄りにポジションを取って、同サイドの駒井&森脇の積極的な攻撃を後方でどっしりと支えていた点にも触れておきたい。
 
 浦和の11人全員が連動して生まれたゴール。唯一、ボールに触っていないものの、重要な“影のアシスト”をしたのが興梠だったことも分かる。
 
 浦和のペトロヴィッチ監督は試合後の記者会見で、次のように語り、手応えを掴んでいた。

「今日は内容と結果が伴うゲームができた。これまで継続してきたことが、やっと実を結びつつあることの表われだと思っている」
 
  また、埼玉スタジアムには、日本代表のハリルホジッチ監督が視察に訪れていたという。果たして、その目に、今回のゴールはどのように映ったの」だろうか? 
 
 指揮官はデュエル(1対1の対決)の弱さなど日本人に欠ける点を指摘してきた。ただ“日本人へのダメ出し”ばかりで、どのようにその短所を修正して特長を生かしていくべきなのかというビジョンがあまり見えずにいる。

 その否定のみの発言に、嫌悪感を抱く人が増えつつあるのは事実だ。
 先日の日本代表メンバー発表の記者会見の席では、「そんなに日本人はダメなところばかりなのか。一点ぐらいいいところを挙げてくれないか?」という質問まで飛び出した。
 
 その一方で、「私も大変尊敬しています」とペトロヴィッチ監督が慕い、その戦術にも大きな影響を受けたのが元日本代表監督のイビチャ・オシム氏だった。オシム氏が訴えたのは、日本にしかできない武器を身に付けるべきだという「日本化」だった。
 
 オシム氏とペトロヴィッチ監督というふたりの指揮官のもとでプレーしてきた阿部勇樹が、J1通算500試合出場を達成。その記念すべき日に、浦和は“走って、ボールを動かす”と全員で連動し合い、ミシャ体制下で最高とも言える形のゴールを叩き込んだ。

 ハリルホジッチ監督の訴える“デュエル”の部分はもちろん重要だ。強靭なフィジカルを持つFWやCBが重宝され出し、シンプルな崩しが増え出しているという世界的な潮流を踏まえて、日本へ警告を発しているのだとも分かる。

 しかし、このJ1の優勝の行方を大きく左右する強豪同士の大一番で、11人全員の特長が噛み合って生まれた貴重な得点は、世界にアピールするのに十分魅力的だったのではないだろうか。ペトロヴィッチ体制5年目、ゴールまでの道筋には“泥臭さ”や“阿吽の呼吸”といった日本人の特性の詰まっていた。何より浦和のチームとしての高い完成度が感じられた。
 
 
取材・文:塚越 始(サッカーダイジェスト編集部)