[J1第2ステージ14節]湘南0-0柏/10月1日/BMWス
 
 J1リーグで残留争いの真っ只中にいる湘南が、第2ステージ・14節の柏戦で手痛いドローを喫した。幸いにも、甲府が横浜に敗れたことで、今節での降格は免れたが、次節は引き分けでも降格が決定する、後がない状況だ。

【湘南 0-0 柏 PHOTO】ともに決め手を欠き残留、優勝が遠のくドロー…
 
 勝点3を獲得できず残留が遠のく結果だが、激しく戦った試合後のチームには、意外にも笑顔が溢れ、和やかな雰囲気が漂っていた。
 
 それは、良い意味で開き直っているようだった。残留するために残された道は、残り3試合すべてに勝つしかない――。それを改めて胸に刻むように、笑顔でミックスゾーンに現れた選手たちは、「残り3試合で9ポイントを取る」と口を揃えた。
 
 曺貴裁監督も「残留の可能性は少ないですけど、残せて終われたということを、前向きに捉えたい」と下を向くことはない。
 
 すでに指揮官の視線は次の大宮戦に向いており、「ひとつのことに向かってやっていく魂やスピリットは、まだ死んでないなと思った。試合を見ながら、自分でこのチームをこの中断期間のなかで、微力ですけど、もっと逞しくしなきゃいけない」と、柏戦で選手が見せた気迫溢れるプレーに触発されるように、自身もモチベーションを高めた。
 
「ここからルヴァンカップとか代表の試合で、すでに敗退したチームはお休みになりますけど、この休みをこたつ入っておまんじゅう食べて、寝て過ごすわけにはいかない。我々は自分たちの信じる道をしっかり進んで、次のリーグ戦の大宮戦に向かっていきたいと思います」
 
 そう意気込んだ曺監督は、自身の役割を明確にする。
 
「この3週間でもっともっとサッカーを好きにさせて、これがフットボールなんだという欲を彼ら(選手たち)に持たせて、『もっとやれるんだ、本気で勝点9ポイント取りに行くんだ』という気持ちにさせることが僕の仕事だと思います」
 サッカーを好きにさせる――。残留を争うなかで、必死に結果だけを追い求めるチームにとって、その気持ちは失いがちだ。しかし、曺監督はそれが何よりも強固なメンタリティにつながることを忘れない。
 
「勝点3を取らないと評価されない世界だし、称賛されない世界というのは重々分かっている。でも勝点3に向かって、どういう道を進んでいくのかっていうのは、サッカー選手である以上、すごく大事。
 
 自分たちらしい試合ができないということが多く、この残留争いで勇気とかアグレッシブさを奪うような状況のなかで、選手は勇敢にプレーしたと思う。技術面や戦術面や、サッカー選手としてやらなきゃいけないことが同時にあることは分かってますけど、言葉で言えば『愚直に』、やり方をすべて信じていくしかない」
 
 チームは、天皇杯・3回戦の徳島戦から公式戦では3戦連続で無失点。調子を上げてきているチームだが、現状は非常に厳しい。それでも、チームの雰囲気や監督の真摯な姿勢は、奇跡の残留を見てみたいと思わせるものだった。
 
 最後に曺監督は、昨季まで湘南でプレーし、今季は鹿島でプレーする永木亮太の代表初選出についても言及。
 
「代表の試合は亮太を応援したいなと思います。『永木選手おめでとうございました』って言っちゃったら怒られるかもしれないですけど、頑張ってもらいたいですね」
 
 そうコメントし、記者たちの笑いを誘った。この一幕に、厳しい状況にあっても、常に選手のことを考えている曺監督の人柄が感じ取れた。
 
 そんな選手想いの監督に率いられたチームは、残りの3試合にすべてをぶつける覚悟だ。「ひとつのことに向かってやっていくっていう魂やスピリットは、まだ死んでない」と監督が語ったように、監督も選手もサポーターも、誰も諦めていない。
 
取材・文:多田哲平(サッカーダイジェストWEB編集部)